子どもの権利のために立ち上がったノーベル平和賞受賞者

今月11月20日は世界こどもの日(Universal Children’s Day)です。1954年の国連総会で制定された国際デーの一つです。1959年に「児童権利宣言」が、1989年には「子どもの権利条約」が国連で採択された日なのです。つまり、今月20日の世界子どもの日で、子どもの権利条約は採択25周年を迎えました。

そのような節目の年にノーベル平和賞として選ばれたのは、世界の子どもたちの権利のために活動を続けているお二人。女性が教育を受ける権利を世界中に訴え活動しているパキスタン出身のマララ・ユスフザイさん(17歳)と、児童労働から子どもを助ける活動をしてきたインド出身のカイラシュ・サティアルティ氏(60歳)の受賞が決まりました。

ノーベル平和賞を選考する機関であるノーベル委員会は、ふたりの選考理由として、「権利を奪われ抑圧されている子どもや若者のために尽力し、全ての子どもの教育を受ける権利が守られるよう貢献した」ことをあげ、二人の活動を称えています。

お二人の受賞の知らせを聞き、私たちフリー・ザ・チルドレンも本当に嬉しく思っています。改めて心よりお祝い申し上げます。というのも、このお二人はフリー・ザ・チルドレンと深い関わりがある方たちだからです。

クレイグとカイラシュさん
フリー・ザ・チルドレンの創設者であるクレイグが12歳の時、南アジア5か国を周る旅に出ましたが、その時にクレイグはインドでカイラシュさんに出会い、児童労働について多くを学んだのです。カイラシュさんは、カーペット工場では多くの子どもが賃金を受け取ることなく奴隷のように働かされている実態があることをクレイグに話しました。工場で働かされている子どもの親たちの殆どが、自分の子どもは職業訓練学校に通っていると信じて騙されていました。カイラシュさんは、過酷な工場労働から子どもを救出し、家族のもとに返すため、非常に危険な目に合う可能性があったにも関わらず、救出作戦を実施し、21人もの子どもを助け出しました。救出後、子どもを家庭に戻すときにクレイグも同行し、家族が我が子との再会に涙を流して喜ぶ様子を目の当たりにしました。クレイグはまた、カイラシュさんとともに、児童労働反対を訴えるウォークにも参加して声をあげました。
しかし、その後カイラシュさんはインド政府によって債務労働に反対する活動を主導したとして逮捕され投獄されてしまいます。このことを知ったクレイグは、彼を助けるためにカナダに戻ってからフリー・ザ・チルドレンの設立初期のメンバーと共にカイラシュさんを解放を求め、署名活動を行い3000筆もの署名を集めました。これをクレイグたちは靴箱に入れてテープで留めて、インドの首相宛にエアメールで送り、カイラシュさんの解放を訴えました。1年後、自由になったカイラシュさんはカナダを訪問し、クレイグたち子どもによる署名活動は、カイラシュさんの人生の中で一番の感動的で力強い訴えの一つだったと喜びを語りました。こうして、クレイグはカイラシュさんとの間に築いた友情を通じて、児童労働から子どもを解放するためにできることについて学ぶことができたのです。
何年も経ち、クレイグは若き活動家であるマララさんに出会いました。マララさんは全ての子ども、特に女の子が教育を受けられるようにするためパキスタンで活動していました。

パキスタンでは、読み書きができる大人の割合は男性が70%ですが、女性は46%しかありません。女性には教育は必要ない、と考えるイスラム過激派が、女の子が教育を受けることを反対し、学校を襲撃したりしているのです。そこで、マララさんはそういった実態をインターネットを通じて世界に訴えるなどしていました。しかし、バスでの下校途中にイスラム過激派タリバンによって銃撃され頭を撃たれて大怪我を負いました。その後奇跡的に回復して、2013年には国連で女児の教育の権利を訴えるために力強くスピーチをしました。「私たちにとっての武器は本とペンです。」と話しました。マララさんの声はどんどん賛同を得て、大きくなっています。マララさんは貧困や児童労働から子どもを解放するための解決策は、教育だと語ります。彼女が声をあげることを快く思わないイスラム過激派のグループは未だにいて、また襲われる可能性もありますが、彼女は声をあげることをやめない、全ての子どもたちが教育を受けられる世界になるまで、と決意を新たに活動を続けています。

2014年の春に、マララさんはフリー・ザ・チルドレンの支援地域であるケニアを訪問し数日間滞在し、ケニアの女の子に教育への情熱と力について話しました。また、中等学校建設のためにシャベルを手にクレイグと一緒にボランティアワークにも励みました。

また、設立したマララ基金を通じてケニアに新しい女子のための学校建設資金提供をしたいと考えるようになりました。そうすれば、教育を受けた女児が知識と力を得て、貧困から抜け出すことができるからです。

また、フリー・ザ・チルドレンのイギリスでのWe Dayというイベントにも参加して、12000人もの参加した若者に向ってスピーチをして一緒に世界を変えましょう、と呼び掛けました。

児童労働から子どもを解放する活動を続けているカイラシュさんと、女児の教育のために活動するマララさんとの絆を通じて、私たちフリー・ザ・チルドレンは、情熱を持っている問題に対して声をあげることの重要性を更に感じています。

改めて、お二人がノーベル平和賞を受賞されたことを心より祝福します!子どもとおとながともに手を取りより良い世界のために歩んでいくことに喜びを感じています。