心の病気へのタブーをぶち壊せ!in アフリカ
クレイグとマークのコラムの紹介です。
カナダ人精神医学者のカッチャー教授は、マラウイの農村部で心の健康の事業を展開しようとしていた時に、チェワ語にはうつ病に当たる単語が無いことを知ります。そんなマラウイの実態を目の当たりにした教授は途方に暮れました。うつ病が概念として存在していない地域で、どう医療活動を行えば良いのかと..
教授は、精神医療への偏見がアフリカでは強いだろうと思ってはいましたが、タブーが深すぎて、それを壊すために自分が何かしない限り何も出来ないと痛感しました。(医療的な活動をやろうと思っていただけにも関わらず..) そこで、現地のカウンセラーや精神科医と共に、どうすればマラウイの人たちに心の病気について恐怖感を煽ることなく伝えることができるのかについて考え始めました。この国の発展のためにも、心の健康の啓発活動は不可欠だと思い、他のカナダ人医師と共に活動を本格的に始めます。
世界保健機関は、2030年までにうつ病が世界的に最も患者の多い病気になると予測しています。自殺をする人の86%は、中-低所得国に住んでいます。現在、世界で精神科医にかかれるのは200万人に一人です。国際支援をやっている人や団体の関心は、飢餓や栄養失調、教育問題、マラリア等に偏りがちで、心の健康の問題に取り組んでいる所は少ないのが現状です。それに加え、開発途上国での心の病気への偏見は欧米以上に根強いモノがあります。
トロント大学のマッケンジー博士は、ナイロビ大学の同僚と共に、ケニアでの農村部の子どもたちが、心の病気の偏見が解放され、必要な検査や医療措置が受けられるようになる為に、工夫を凝らした活動をしています。博士は、心の健康はとても身近な問題であると気づかせることが重要だと言います。
「子どもたちの先生や親には、心の健康についてでは無く、子どもの発達や学校での勉強、子どもの将来について話します。精神的に安定した子どもは将来成功し、社会に良いインパクトを与えられる人材になり得るということを。そして心豊かな社会は、貧困の連鎖を断ち切り、経済的にも前進できるということを。(マッケンジー博士)
そのように話を切り出せば、心の健康をタブー視する人は誰もいません。子どもたちは、学校で心の知能指数(※日本でもEQとして知られる。) のワークショップに出て、精神回復力、自己制御性、精神的葛藤に上手く対処する力を修得します。親たちは、子どもたちの心理的欲求(※心理学のマズローの欲求段階説を指していると思われる。興味のある人は検索を!) や、心豊かに暮らせる環境をどのように家庭で作れるかを学んでいます。教師たには、体罰をしたり試験の点数を上げることに重点を置きすぎた教育を見直すよう指導しています。
博士は、医療的資産の限られた地域では、治療法より予防法の確率が大事だと主張します。そのような考えから、現地では心理学的な観点から見た子どもの成長に重点を置いた事業をしています。そうした取り組みが上手くいけば、子どもは心の病気にも対応しやすくなるというのが博士の考えです。
心の病気がその地域でタブーで無くなれば、現地の医療機関で殆どの病気は対応ができます。博士の活動で現地の医者は心の病気を早期の段階で発見し対処することができるようになりました。
マラウイに話を戻しましょう。カッチャー教授は、海の向こうの力を借りて心の病気の啓発活動を始めます。アフリカの貧困撲滅を目指してアフリカ中で情報を発信しているカナダのラジオ局と協力し、 マラウイでラジオドラマを通じて心の健康の問題に関する情報発信を始めたのです。番組のリスナーは、インターネットのチャットを通じて、カナダにいる専門家から助言をもらえるようになりました。現地の様々な人と協力もして、医療機関での助けが必要な人を見つけられることができるようになるための活動も行っています。
脳の研究も進み、心の健康の重要性が認知された現在においては、心の健康を重視しながら国や地域の発展を進めていくことが不可欠です。(うつ病という単語があろうがなかろうが) マッケンジー博士が言うように、次世代の繁栄の為にも、心の健康問題に今から取り組むことが必要です。
(訳者:翻訳チーム 清田健介)