共同農場をリードする先駆的な女性リーダー
男尊女卑の考え方が根強く残るケニアのキプソンゴール村。
今回ご紹介するのは、この村の共同農場で女性として初めてリーダーとなったキャサリン・チアチアです。(清田)
キャサリン・チアチアは、農業地域でよくみられる性に対する固定観念を覆しました。
彼女は共同農業グループのリーダーに選ばれたのです。
彼女は、グループの成功によって彼女にとって最も重要な場所-家族に影響を与えるだろうと考え、力を注ぎました。
2016年、チアチアが初めてその農業グループに参加したとき、彼女は自分の役割がどんなものになるのか考えも及びませんでした。
彼女は、彼女が暮らすケニアのキプソンゴール村でWE Charity(フリー・ザ・チルドレン)が共同農場を始めるということを耳にしました。
そこでは、収穫高を上げるために、村びとが持続して運営できる農業法をトレーニングするというのです。
彼女は好奇心を掻き立てられました。
チアチアと彼女の夫は1エーカーの土地でトウモロコシを栽培していましたが、家族を安定して食べさせていくのに十分ではありませんでした。
7人の子どもの母親である彼女は、トレーニングを優先させることに決め、家族の世話やコーンの栽培といった他の責務、そして所属する女性グループの役割もバランス良くこなしました。トレーニングを受けることによって家族を食べさせることができるのなら、参加して学ばなければならないと思ったのです。
チアチアはキプソンゴール農業者グループの創立メンバーになりました。
男女混合の12人のグループは学校の近くに1区画を与えられました。
ボーリングによって新たに取り付けられた灌漑もあり、不毛の畑から収穫できるように作業を始めました。
チアチアは意欲的なメンバーで、農場で働く日は一日も休みませんでした。
そのグループでは毎年、農場がうまく運営されるように委員長、書記、会計係、訓練の教官といった実行委員会のメンバーを選びます。
2018年、農場を生き返らせるための作業が2年経ったころ、チアチアは委員長に推薦されました。
男女混合のグループでは、通常男性が務めているポジションです。
彼女によると、メンバーが彼女を推薦したのは、彼女が所属している女性貯蓄グループでのリーダーシップの手腕をメンバーが見ていたから、とのことでした。
そのグループはWE Charityの「機会の拡大」プログラムの一部で、そこで彼女は会計係であり、以前は委員長を務めていました。
その経験が自信となり、彼女は委員長の役割を引き受けました。
初めのうち、メンバーには彼女のリーダー力に不信感をもつ人もいました。
「男性たちは初め懐疑的でした。ですが、私は女性の先駆けとして先頭に立たなければならないとわかっていました。男性たちはよく聞いてきたものです。
『これから我々は何をするんだ?』
だから私は行って、こうやって植えるんですよ、と彼らに示したのです。
私は自信をもって行動していたので、彼らは私に敬意を払ってくれるように、また、私がしようとしていることを理解してくれるようになりました。」
彼女は、その仕事の適任者であることを証明したのです。
農場での経験は、家庭での性の役割を変えることになりました。
彼女は野菜を買うお金を補うために家庭菜園を始めたいと思っていました。
しかしそのためには、まずは夫を説得して、トウモロコシ畑の一部を使わせてもらわなければなりませんでした。
「農場はありましたが、夫はその一部を家庭菜園に使うという考えをよく思っていませんでした。」
チアチアは夫をトレーニングに連れて行きました。
そこではWE Charityのコーディネーターが、野菜を買う代わりに家で野菜を育てるといくら節約できるのか、そして野菜を売ることがいかに収入になるのかを説明しました。
それを聞いて、チアチアの夫は納得しました。
それから、彼らはまずケールを植え、その後さらに、ホウレンソウ、バナナ、サトウキビを植えました。
WEはチアチアに、農場を共有したことで彼女の家族にどんな影響があったのかを聞きました。
農場に参加してからもっとも効果のあったことは何ですか?
異なる作物を植えることはとても有益でした。
ほかの作物が収穫できなくても、代わりのものがあることになるのです。
もし私が植えたトウモロコシを十分に収穫できなくても、野菜があります。
それは食べることもできるし売ることもできます。売れば子どもたちのために本や鉛筆を買うことができます。
私は十分に家族を養うことができ、学校の授業料や茶葉、自分が育てることのできない食べ物を買うだけの収入を稼ぐことができます。
子どもたちに望むことは?
大学へ行って、医者や教師、パイロットといった仕事についてほしいです。
それ以上により多くのものを得てほしいです。
共同農場のメンバーはそれぞれに個々の農場を所有しています。
共同体としてこのプロジェクトで共に働くことによって、どんな力が生まれるでしょうか?
一人で成功することはできません。ほかの人の助けが必要です。
私にはその重要性がわかります。-私はすべてのことがわかりませんが、ほかの人がわかることがあります。
私たちの知識を結集すれば、大きなことができるのです。
共同農場の将来にどんな希望をもっていますか?
初めに農場をもったとき、私たちはとても大きいと思いました。
何を栽培してそこをいっぱいにしたらよいのか、何も思い浮かびませんでした。
ですが今は、栽培するもののアイデアがいくつもあるので、農場が小さく思えます。
いつかもっと農場を手にする機会があったら、ぜひ手に入れたいです。
以前、私はあまりやることがなかったのでグループに参加したと言いました。
しかし今は、私たちは一日のうちでもっと時間を充てることができると思います。
なぜなら、私はもっとやることができるし、やることもあります。幸せな気持ちです。
(原文記事執筆:セディ・コスゲイ 翻訳:翻訳チーム 鈴木佳寿美 文責:清田健介)