カナダのお札に登場する女性の数は、一人だけで良いのか?
クレイグとマークのコラムの紹介です。
http://www.weday.com/we-schools/columns/global-voices/women-on-currency-why-settle-for-just-one/
年10月に就任したカナダのトルドー首相。そんな、トルドー首相が、
今年の国際女性デーに、「カナダのお札に女性の
肖像画を一人復活させる」と発表しました。
この発表を驚きを持って迎えたのが、「カナダのヒロイン」を
テーマにした著作も出版している歴史家のメルナ
・フォスター氏です。
「四年間必死で運動してきましたので、このような形で
報われるというのは、とても感慨深いモノがあります。」
カナダでは、2011年まで、フェイマスファイブ
(1800年代初頭、カナダで女性を法的に『人格のある個人』:今考えるとそ
のような言い方をしなければならないこと自体大変差別的ですが、
そういう認識すら持たれていない時代だったのです:
であることを認めさせようという運動を行った五人の女性たち)が、
50ドル札の肖像画となっていたのですが、2011年以降、
著名な白人男性の肖像画に変わり、それ以降カナダでは、
エリザベス女王(カナダは英国連邦の一部なので、
エリザベス女王はカナダの女王でもある)を除き、
女性がお札から姿を消している状態が続いています。
フォスター氏は、change.orgで2013年から
「お札に女性を復活させよう」という署名活動
をはじめており、これまでに73,000人の署名を
集めています。
「リベラルで進歩主義的なお国柄」をいつも自称している
カナダのお金が、多様性を欠いているという現状は、
自分たちが豪語しているイメージとは似ても似つかない
状態といえるでしょう。カナダより保守的なお国柄
といわれているアメリカですら、この件では
カナダより先を行っています。アメリカでは、
既に昨年、リニューアルされる10ドル札に
「著名なアメリカ人女性を選び、その人物
の選定は公募で決定する」と発表していました。
遅きに失したとはいえ、カナダも「男性社会のお札」を変え
ようと動き出した訳ですが、私たちが投げかけたい疑問は
「どうして、その女性の人数が一人だけなのか?」
ということです。国際女性デーに、「女性をお札に復活させる」
と発表してはいますが、「実はそれは形だけで、真剣に取り組む
気はないのでは?」とつい疑ってしまいます。お札というのは、
その国の人々を投影するよう存在であるべきだと思いますが、
一人の女性を載せただけで、カナダのお札が、
「カナダの全ての女性を投影するような存在」
になり得るとは思えません。
オーストラリアでは、全てのお札の裏と表に、男性と女性の
著名人の肖像画をそれぞれ載せることで、男女比率の同率性
を確保しています。(ただし、5ドル札だけは、エリザベス
女王の肖像画が単独で載せられています。)
もしお札に肖像画を載せるカナダ人女性を選ぶとしたら、米英
戦争を戦った英雄である、ローラ・セコールのような人物
は候補から外せないと思いますが、それ程知名度が高く
なくても、載せるべき女性はたくさんいます。
いわいる『非伝統的』とも周りから思われるかもしれない
キャリアを模索している若い女性にとっては、第二次世界
大戦で使われる戦闘機の制作などにも携わった、世界初の
女性航空宇宙工学者のエルシー・マクギルがもしお札に載ったら、
大きな励みとなるのではないでしょうか?(マクギルは、民間旅客機
の国際的な保安規制が初めて制定された時にも
その策定に関わっています。)
また、女性初のカナダの国会議員となった、アグネス・
マックフェイルの名前も外す訳にはいかないでしょう。
フェイルは、慈善団体の創設にも関わっており、
刑務所で服役する女性受刑者の生活環境の改善に
尽力しました。
カナダの人種隔離政策と闘ったヴィオラ・デズマンドもいま
す。デズマンドは、ローザ・パークスが始めたことで有名な
アメリカのバスのボイコット運動が始まる10年近く前に、
主要席が、「白人専用」となっていたカナダの映画館で、
端の方の席に座ることを拒否したアフリカ系カナダ人女性です。
Mary Two-Axe Earleyも、知名度こそ高くはありませんが、
重要な足跡を残した、賞賛されるべき活動家です。Earleyは、
1960年代、いわいる『インディアン法』の下で差別を受けて
いた先住民の人たちの権利を取り戻すために立ち上がりました。
フォスター氏の提案で、ケベックの労働組合出身の活動家だ
ったMadeleine Parentも候補に挙げたいと思います。Parentは、
20世紀初頭に労働者権利のために闘い、カナダ政府にロビー活動
などを行ったフェミニスト団体の設立にも関わりました。
移民の人たちがカナダにしてきた貢献も無視する訳にはいき
ません。
中国系カナダ人のJean Lumbは、実業家として、博愛主義者
として、そして活動家として素晴らしい人でした。18歳の時に
トロントで自ら食品店を立ち上げ、その事業と並行して、教育や医療、
芸術に至るまで、あらゆる分野で支援活動を行いました。1950年代のカナダでは
「移民は家族と共に移住してはならない」という差別的な政策を行っていましたが、
その状況を変えるために、Lumbは政府に働きかけを行っていいました。Lumbは、
中国系カナダ人女性としては初めて、カナダ勲章を授与されています。
そして、子どもや若者をエンパワーメントする
フリー・ザ・チルドレンの創設者としては当然のことではありますが、
若者の肖像画がお札に載ることを強く期待します!私たちは、
Shannen Koostachinを今回は候補に挙げたいと思います。
Koostachinは、オンタリオ出身の先住民で、先住民の教育に
関する社会運動をずっと行ってきた活動家でした。残念ながら、
15歳だった2010年に、Koostachinは交通時間で亡くなりましたが、
その後は従姉妹が財団を作り、先住民の子どもたちの学校教育の
状況を改善するために活動を行っています。
カナダの政治家や官僚のみなさん!そろそろ、多様性の問題
に本気で取り組んでみても良い頃ではないでしようか?
清田からのコメント
今回は、お札を通して見える「男女差」がひとつのテーマ
でした。コラムでも触れられていましたが、アメリカでも
、お札に女性の写真が新しく使われることになり、今年の4月に
、20ドル札に、奴隷解放運動家のハリエット・タブマンの写真
が新たに使われることが発表されています。
日本では、作家の樋口一葉の肖像画が、5000円札で使われて
います。クレイグとマークの問題意識では、「一人だけでは不充分」
と訴えていますが、この意見を、みなさんはどう思いますか?また、
日本のお札に女性の肖像画を増やすとしたら、どんな人物を載せる
べきだと思いますか?
今回は「お金のお札」という切り口でしたが、男女差の問題
やその他の問題も含め、全ての人が生きやすい社会をつくる
にはどうしたらいいいのかということを、いろんな角度から考えていきたいものです。