忘れられた紛争の下で、苦境にさらされる大勢の人々

クレイグとマークのコラムの紹介です。

http://www.weday.com/we-schools/columns/global-voices/millions-suffer-in-forgotten-conflicts/

昨夏、カナダのオンタリオ州、パリの

ノースワードパブリックスクール

を卒業する8年生の生徒たちは、

先生にあることを約束してもらいました。

 

それは、戦闘で荒廃したイエメンの人々の苦境を伝え続けて

いくことです。生徒たちはコナーズ先生に呼びかけました

「イエメンの人々を見捨てないでください。コナーズ先生」と。。

 

 

昨年、中東国家の援助隊員や活動家とノースワードの学校のある生

徒との間で行われていた文通が私たちの目を引きました。

イエメンで起きている戦闘について、ケイティ・コナーズ先生の7年生、8年

生の生徒たちは、手紙のみならず、Eメールやスカイプを通じて知る

ことになりました。そして、カナダ人政治家に手紙を書き、それについて、

SNSのハッシュタグ、#YemenMatters(イエメンも大事だ)

などを利用して社会に広めていたのです。

 

先月には、コナーズ先生が新しい生徒たちに、母国の戦闘状態から逃

げてきた二人のイエメン人の活動家であるネナ・アクラン氏と、

ブッシュラ・アルフサル氏を紹介しました。二人によれば、イエメンから

逃げてきて最もショックだったことは、「イエメンでその日に起きた

ことについては、イエメン以外の国の街角では誰も話題にせず、また

イエメン国外のメディアも、話題にしていなかったことだった」と、

生徒たちに伝えました。

 

シリアの内戦は、2015年の以降の統計では、約7万人が亡くなると

いう、今日では世界で最もひどい惨劇になっています。

 

しかしながら、シリア内戦だけが、数千もの人々の犠牲を強いられて

いる戦争になっているというではありません。勃発から2年目に入って

いるイエメンの内戦では、民間人の死傷者数が8,000人を超えま

した。

 

カナダは、約10億ドルもの資金援助をシリアに行いましたが、一方、

イエメンにおける昨年のプロジェクトの金額は300万カナダドル未

満でした。

 

惨劇が進行しているものの、忘れ去られている内戦は他にもあります。以下の内戦は、シリアと同じように注目に値するものです。

 

アフガニスタン

 

2014年のカナダの軍撤退以降、カナダのメディアは、混乱したアフ

ガニスタンの状態について、ほとんど報道していません。しかし、

その後も続く反乱によって流血がまだ続いています。昨年だけでアフ

ガニスタンでは36,000人以上が亡くなりました。現在においても、

世界でシリアについで2番目に最悪な紛争になってしまっています。

 

ナイジェリア

 

ナイジェリア国内で、2年前、兵士たちが219人の女子学生を誘拐

したニュースが話題になって以降、イスラム系組織のボコハラム

の文字も、ニュースの見出しから消えてしまいました。しかし、誘拐と

襲撃の活動は、収まっていません。昨年は11,000人以上もの人々が

殺害されました。さらに、もっと悪いとに、ボコハラムはその誘拐し

た少女たちに、自爆テロの実行犯としての役割を負わせています。

 

ソマリア

 

皮肉にも、かつてイエメンは、ソマリアの避難民にとって安全な避難

地でした。いまや、ソマリア人は何千ものイエメン人を連れて、自国

に逃げ戻ってきています。でも今度は、ソマリア新政府と、イスラム

系武装組織アルシャバブの間で行われているゲリラ戦に巻き込まれ

てしまっています。昨年は5,000人以上もの命が犠牲になりました。

 

ダルフールと南スーダン

 

2003年、西スーダンのダルフール地区の衝突が勃発して以来、何十

万もの人が殺害され、9,300人以上もの女性がレイプされました。1

月には、武装組織とスーダン軍の間で、新たな戦闘が勃発し、50,000

人以上もの市民が避難する事態になりました。

 

一方で、南スーダンでは、内戦の勃発から3年が経ちました。

 

ニューヨークタイムズ紙のニコラス・クライスト氏は「読み書きがで

きる少女よりも武装組織にレイプされた少女を見つける方が簡単だ」

と記事に書きつけました。

 

さらには、スーダンの紛争でこの10年の間に、200万人以上の人が

避難を余儀なくされましたが、国連は、スーダンの避難民を救うのに

必要な援助資金の3%しか集められませんでした。

 

トルコ

 

昨年は、カナダメディアは、特別報道として、クルド系武装組織と共に、

IS(いわゆる『イスラム国』と言われているテロ集団)と戦った

カナダ人兵士たちを取り扱いました。一方、クルド人とトルコ政府

の間で起きている戦闘については、報道されることがはるかに少ない

ものでした。平和交渉が昨年前半に決裂してからは、武装蜂起が起き、

3,600人もの人々が犠牲となりました。

 

紛争の下、助けを必要とする人々はほかの国々にも非常に多くいる

のです。カナダに難民を受け入れている国としての、そしてどんな人

にも寛容であるという国家としてのプライドがあり、そんなプライ

ドを持ちつつ、支援を必要としている国に寄付をしたいとカナダ人

それぞれが考えているのであれば、「あの国のことについて知っては

いるけど、この国のことについては、よく知らないから助けられなか

った」などということは、本当は起きてはいけないはずなのです。

 

参考リンク

 

内戦が続くイエメン
http://www.afpbb.com/articles/-/3092138

過去最悪の犠牲者数となった2015年のアフガニスタン

 

http://www.sankei.com/world/news/160214/wor1602140044-n1.html

 

自爆テロの犠牲となるナイジェリアの少女たち

 

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/04/post-4897.php

ソマリアで続く武装組織と政府軍の戦闘の背景

 

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2010/07/post-1460.php

 

混乱の続く南スーダン

 

http://www.afpbb.com/articles/-/3093769?cx_part=topstory

ニューヨークタイムズ紙の記事(英語)

 

http://www.nytimes.com/2016/02/28/opinion/sunday/the-killing-field.html?emc=edit_nk_20160227&nk=true&nl=nickkristof&nlid=70260028&te=1&_r=3

トルコ政府とクルド人との間で続く紛争

 

http://www.afpbb.com/articles/-/3093769?cx_part=topstory

カナダのシリア難民受け入れを報じる記事

 

http://www.bbc.com/japanese/35068776

(翻訳:翻訳チーム 島袋剛之 文責:清田健介)

 

 

清田からのコメント

今回は、「忘れられた紛争」をキーワードに、世界の紛争を取り上げ

ました。でも、この記事を読んでいるみなさんの中には、この記事で

取り上げられている紛争についてよく知っている人、初めて聞いた

人、いろいろな人がいると思います。

 

でも、私たちが知っている情報と、知らない(忘れられた)情報の境目

ってどこにあるのでしょう?私たちは、シリアに実際に行ったこと

はなくても、シリアの難民に関する情報を知っていて、寄付をしたり、

難民を日本でも受け入れるべきかどうかについて議論をするかもし

れませんが、その情報は、直接その場で見聞きした訳ではなくて、メ

ディアや本から得た、間接的な情報である場合が、多いのではないかと思います。

 

今の時代は、「情報化社会」といわれるように、ネットやテレビなど

で、様々な情報が入手できます。でも、そんなメディアも人が作る

ものなので、そこで伝えられる情報と、伝えられない情報が当然出て

きます。コラムでも指摘されているように、外国のこととなると、自分

たちの国とは関連性が薄いニュースは、あまり伝えられなくなって

しまいます。でも、情報化社会では、テレビやスマホをつければ、い

つでも情報が入ってくるので、私たちは世界で起きていること全て

を知っているような錯覚に陥ってしまう部分もあるのではないでしょうか?

 

哲学者のソクラテスは、「無知の知」という言葉で有名な人です。

ざっくりいうと、「自分が何でも知っていると思って人に説教するよ

り、自分は全てのことを知っている訳ではないと自覚する人の方が

賢いよ」という意味です。

 

人は全ての情報を知ることはできないし、テレビやネットも全て

を教えてくれる訳ではありませんが、そのことを頭の片隅に置きつつ、
「忘れられた内戦」のような情報に謙虚に向き合っていくこと、そし

てそんな「忘れられた」情報を自分から求めていくことが、世界に変

化を起こす第一歩ではないかと私自身は思いますが、みなさんはどう思いますか?

 

イエメンについて学び、発信する活動をしているノースワードパブリックスクールの生徒たち