「分断されるアメリカ」で若者が灯している希望の光 (クレイグが、2016年のアメリカに贈るメッセージ)

定期的に行っているクレイグとマークのコラムの紹介ですが

今回は、今年の11月のアメリカ大統領選挙に向けて、

クレイグがアメリカ版ハフポストに単独で寄稿した記事を

ご紹介します。マークとの共著ではない、しかもアメリカ人に向けに書かれた

貴重なコラム(?)です!(清田)

 

http://www.huffingtonpost.com/craig-kielburger/united-america-how-young-people-are-putting-the-country-back-together_b_11767326.html

 

 

18歳のアレクサンドラは、シカゴのノースウエストサイド

で行われていたパーティーに参加した弟を迎えに行こうと

していました。しかし、アレクサンドラは、パーティーが

行われていたアパートの前で、銃弾に倒れました。

 

「『バーン』という大きな音がして、悲鳴が聞こえました。自

分が姉のところに行った時には、もう遅すぎました。」アレク

サンドラの弟でパーティーに参加していたクリスチャンは、ソ

ーシャルワーカーになりたいという夢を持っていた姉の最期をこうふり返ります。

 

アレクサンドラの死から数週間後、クリスチャンと家族は、

アレクサンドラの死を無駄にしないためにも、悲しみを乗り

越えて行動を起こさなければならないと悟ったといいます。

 

従来はシャイな性格のクリスチャンが、大勢の人の前で声を

挙げた時、彼の母親は大変驚きました。クリスチャンは、地

元の団体組織からのサポートも受けながら、家族に起こった

できごとについて、ワシントンで様々な議員と面会する中で

話をしたり、銃撃事件の被害者や遺族が集う集会でスピーチ

をしたりしたのです。それ以来、クリスチャンは、シカゴの

若者のロールモデルのような存在となり、銃による暴力を撲

滅するために活動しています。

 

「私たちは手を携えなければなりません。人種や宗教に関係

なく、私たちは一つになり団結していかなければならないので

す。」クリスチャンは訴えます。

 

今、アメリカでは多くの人が、大統領選挙を巡る情勢や、人

種間での亀裂、社会的、経済的にも生じている亀裂(都市部にお

いては特に深刻です)にうんざりしています。「分断されるアメ

リカ」というフレーズは、お馴染みの見出しとなっています。し

かし、クリスチャンのような若者は、おとなの政治的な対立軸を

ぶち壊そうとしています。いや、「おとな」と一括りにするより

は、対立が深まりすぎて、「決められない政治」を繰り広げてい

るワシントンの政治家の対立軸に対抗しようとしていると言う方

が正確かもしれません。若者たちは一つになり、世界をより良い

場所にするために行動を起こしています。クリスチャンは、彼の

ように変化を起こしている若者たちを励ますため、そして彼の行

っていることを伝えるために、「We Day」という、フリー・ザ

・チルドレンが行っているチャリティーイベントで、大勢の若者

の前で話をしてくれました。

 

アメリカのみなさんに向けて、私たちの行っている活動を

ご紹介させて下さい。

 

フリー・ザ・チルドレンは、私の家のリビングで20年以上前

に始まった、子どもによるこぢんまりとしたチャリテイー活

動でした。私と同級生の当時中一の生徒と一緒に、児童労働

をやめさせるための署名運動を行っていました。当時、この

ような活動をすることは、中学生にとっては、ハッキリ言っ

て、「かなりダサいこと」でした。それゆえに、イジメに遭

いそうにもなりました。

 

若者や子どもたちは、学校やテレビ、SNSなどを通じて、今

の社会では「なんでも効率的に、他の人よりも一番素早く済

ませること」や、「他の人よりも強いこと」、「他の人より

も美しくあること」が社会において美徳とされているという

ことを認識していきます。しかし、「他の人を気にかけるこ

と」や、「他の人を助けるために行動を起こすこと」の大切

さについて、彼らが認識できるような状況や機会は整ってい

るでしょうか?

 

私自身子のども時代の経験から学んだ、「子どもには変化を起

こす大きな力がある」ということを、次の世代に伝えていくた

めの活動を、兄と共に九年前から始めました。私たちは、「世

界を変えたいと思っているのは君一人だけじゃないし、一緒に

変化を起こすことができる」というメッセージを伝えることが

できるイベントを行いたいと考えました。それこそが「We Day」

です。

 

第一回目の「We Day」の会場には、二本の小さい木が、セッ

トのように飾られているだけでした。それは、お店からの借り

物でした。SNSや学校通じて宣伝を行い、当日の会場は7千人

以上集まった若者によって埋め尽くされました。若者たちは、

前向きなメッセージに飢えていたのです。「どんなに小さなア

クションからでも、変化を起こすことができる」というメッセ

ージに飢えていたのです。

 

今ほど、このメッセージが必要とされている時代は無いので

はないか?私はそう考えています。今の選挙運動は、国に変

化のビジョンではなく、分断をもたらしています。メディア

は、悲観的な報道を、まるで彼らのネタのレパートリーの一

つであるかのように、毎日放送し続けています。そのような

状況の中で子どもたちが学ぶことは、「他者より、まず自分

を第一に考えること」「(会ったこともない)他者に対して、

恐れを抱くこと」そして、「無力間を覚えたら、問題を起こ

している悪者を見つけて、その悪者を叩くこと」ではないで

しょうか?

 

私たちおとなが、子どもにきちんと物事を教えるのはとても

重要なことです。その一つが、「私たちは、人と違うところ

よりも、同じところの方がはるかに多く、対立で憎しみ合う

のではなく、共に一緒に生きることができる」ということだ

と思います。

 

私は「We Day」が、「単なる集会」から、「壮大なムーブメン

ト」へと成長していく過程を目撃してきました。今では14もの街

のスタジアムを超満員にして、アクションを起こしてきた若いリ

ーダーたちを称える場として、毎年20万人が参加しています。私

は、子どもたちがハローウィンのトリックオアトリートで、近所

の人に、缶詰をフードバンクに寄付するようにお願いして周る姿

も見てきました。このような小さなアクションのひとつひとつが、

変革への大きなうねりになっていくのです。

 

このような若者は様々な背景を抱えながら、様々な地域で活

動しています。ボランティアのような活動は、私立の学校に

通う裕福な生徒たちが、学校の調査書(内申書)や、就活で提

出する履歴書の見栄えを良くするためにやるモノだと思われ

がちですが、私たちが共に活動しているアメリカ国内の学校

の大半は、通っている子どもたちの家庭の多くは低所得層となっている学校です。
We Dayに参加するためには、チケットを買うお金を払うこ

とではなく、ボランティアのような奉仕活動で、時間を稼ぐ

ことが条件となります。つまり、変化を起こすために、アク

ションを起こすことが条件なのです。私たちは、そのような

活動を支援する事業も通年で行っています。

 

奉仕活動を支援する私たちの事業は、シカゴやロサンゼルス

で成功を収めています。近々、ボルティモアやセントルイス

でも事業を開始する予定です。このような地域では、暴力や

人種差別、そして貧困が蔓延しています。こういう地域では、

若者が「解決するべき問題の一部」であるとみなされているこ

とが多いです。今こそ、このような固定観念を変えて、問題解

決の担い手となるように、若者を支援するべき時です!

この夏には、共和党と民主党の、両党による全国大会が行わ

れました。この全国大会は、テレビ局にとっては、高視聴率

を見込めることができ、共和党と民主党にとっては、大統領

選前に支持層に直接訴えることができる機会です。テレビ局

側と政党側、双方の思惑が一致している、洗練に演出された

ショーであるといえるでしょう。このように政治的な駆け引

きが行われている中でも、クリスチャンのように、みんなで

つながって、社会を良くしていくためのアクションを起こそ

うと訴えている若者の姿に、私は希望を見い出しています。

 

長い選挙戦も、もうすぐ終わりを迎えます。そのあとには、

選挙の候補者の代わりに、クリスチャンをはじめとする若い

リーダーへの「支持表明」をして、支えていこうではありま

せんか!!

 

先日アメリカのミネソタ州で開催された「We Day」よりhttps://www.we.org/2016/09/20/day-minnesota-2016-recap/