高齢者施設に、豊かな創造性を!

クレイグとマークのコラムの紹介です。
https://www.we.org/we-at-school/we-schools/columns/global-voices/bringing-creativity-senior-care/

 

最近、私たちは、パット叔母さんの80歳の誕生日(日

本で言う傘寿)を、叔母さんが入所している施設でお

祝いしました。マークの五歳の娘のリリーローズは、

以前この施設で、狭い部屋で寂しそうに過ごすお年寄

りの姿を目にしました。今回、リリーローズは、たく

さんのテディベアを箱に詰めて持って行きました。入

所者のみなさんは、テディベアの贈り物をとても喜ん

でくれました。(実を言うと、購入したのは施設のお医

者さんだったのですが)

 

残念なことに、たくさんの高齢者が、気が滅入るよう

な生活環境に置かれ、世の中に忘れられた状態で暮ら

しています。五歳の子どもが持っているようなささい

な思いやりの心や想像力こそ、いま高齢者が必要とし

ているものかもしれません。例えば、入所施設をディ

ズニーがデザインしたらどんな施設になるでしょう?

今、世界中で、このような想像力を凝らした施設が

できつつあります。積極的に様々な活動に参加できて、

入所者にそれぞれ寄り添っていくようにすることで、生

活の質を向上させて、元気で長生きできるようにするこ

とを目指している施設が!

 

生活環境がどうなっているかは、カナダに50万人以上

いるといわれている、認知症(アルツハイマー型認知症

などを含む、記憶力や思考力、認知機能などの低下が起

こる病気の総称)のある高齢者にとっては非常に重要な問

題です。病気が進行していくに従い、認知症患者は、

環境の変化に対して、より敏感になっていきます。経

験したことのない環境に不安を覚えると、ストレスを

感じるようになり、精神的に不安定になったり、暴力

的な行為を引き起こしてしまうこともあります。この

ような状況に対しては、薬で症状を抑えたり、入所者

の行為や行動を力で拘束せざるを得ない時もあります。

 

アルツハイマー型認知症のある入所者の半数が、

施設入所後一年以内に亡くなっています。研究で

は、日常生活を断ち切られたことや、生活の中で

の活動や、人との関わり合いの欠如が、うつ病の

発症や、生きる意欲の低下を招くことが明らかになっています。

 

このような状況を打開するため、世界各地で様々な取

り組みが行われています。アムステルダム郊外にある

「ホグウェイ」では、「村」と呼ばれる施設内に、15

2人の認知症患者が暮らしています。2009年に開設され

た「村」の中には、映画館や床屋、レストラン、お店も

あります。職員による見守りのもとで、入所者は仕事や

食事、人との交流を行っています。ホグウェイの職員に

よれば、入所者の服用している薬の量は、一般的な施設

より少なく、入所者もより長寿だということです。

 

「Aegis Living」は、ホグウェイなどの施設に影響を

受けた、シアトルにある民間運営の入所施設です。創

設者のドウェイン・クラークは、高齢者施設に30年努

め、カナダ、アメリカ、ヨーロッパの高齢者介護の研究をしています。

 

クラークは、ディズニーランドの開発や設計を行って

いる「ディズニー・イマジニアリング」出身のデザイ

ナーを、「Aegis Living」の建築デザイナーに起用し

ました。クイーンアン様式の建築デザインを取り入れ

た施設を建設するためです。この様式は、昔ながらの

シアトルの住宅街の様式です。施設内の遊歩道やお店、

ジュースバーや劇場も、入所者が育った昔ながらのシア

トルを再現しています。

 

「ホグウェイ」は、オランダ政府からの支援を受けて

いる一方、「Aegis Living」は民間運営の施設となっ

ています。カナダの高齢者施設は、民間運営の施設と

公的な施設が混在していますので、両国とは制度が異

なりますが、今紹介した施設が持つ豊かな独創性から

学びつつ、全ての人が安価で利用でき、居心地よく過

ごせる施設を作っていくべきではないかと思います。

 

多文化社会のカナダにおいて、全ての高齢者にとって

馴染みのある環境を再現するのは、大きな課題です。

バンクーバーやトロントのような都市部には、入所者の

文化的背景に配慮した施設もあります。(中国系や、東南

アジア系の高齢者を対象にした施設など)入所者の母語を

話し、入所者がこれまで親しんできた食事を提供すること

で、このような民族的なバックグランドを持つ入所者が、

安全に、孤独感を感じずに過ごせる空間を作り出している

のです。このようなタイプの施設の需要は大きいですが、

圧倒的に不足しているのが現状で、入所は最大六年待ちと

なっています。

 

テディベアが、高齢者施設の問題を解決することはな

いかもしれませんし、ミッキーマウスの力を借りて施

設をつくるのは、カナダの介護制度の財源では難しい

ことかもしれません。しかし、私たちの愛する叔母や

叔父、両親や祖父母の介護や生活支援をしていくため

に、カナダはもっと想像力を発揮するべきだと思います。
参考リンク

 

ホグウェイとは
http://www.huffingtonpost.jp/2015/02/23/dementia-patients-to-lead-normal-independent-lives_n_6733718.html

 

オランダには、大学生と共同生活を送る老人ホームもある。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/04/25/netherlands-rent-free-student-nursing-home_n_7141312.html
日本にもある、外国人高齢者を多く受け入れている施設
http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/summary/2014-11/05.html