#5 常識をぶち壊せ! 五大陸で教育革命 税所篤快さん

バングラデシュの高校生がパソコンを前に勉強している――こんな光景が想像できるだろうか。50年後の夢ではない。今、東京から5000km離れた地での現実だ。
それを可能にしたのは税所篤快さん、早稲田大学4年の大学生だ。大学を休学し、この’革命’を広めようと世界を駆け巡る彼に、お話を聞きました。
*活動は2012年3月当時の情報です

バングラデシュへ飛び出して
きっかけは失恋だった。「一人前の男になる」そう決意し、ひたすら本を読み漁った。その中でピンと来たのが『グラミン銀行を知っていますか』という一冊。グラミン銀行とは、貧困者を対象に少額のお金を無担保で貸すバングラデシュの銀行。融資を受けた女性たちは小規模事業を立ち上げて、少しずつ貧困から抜け出している。ノーベル平和賞も受賞した。
すぐに著者の秋田大学坪井ひろみ教授に電話をし、その晩の秋田行の夜行バスに飛び乗った。翌日丸一日かけて話を聞いた後、バングラデシュへ飛び立つまで2ヶ月もかからなかった。グラミン銀行とバングラデシュの農村を見学し、数ヶ月後には日本人初のインターンとなった。

農村で映像授業!?
「この国では4万人の教師が足りていない」「テクノロジーこそ貧困層を救う」…現地で話を聞き、現状を自分の目で見る中、思い出したのは自分の高校時代。偏差値28から1年間の勉強で早稲田大学現役合格を可能にしてくれた、映像授業だった。
バングラデシュの首都ダッカの人気予備校講師の授業を撮影してDVDにし、農村の高校生に映像授業を提供する――そんなアイディアを思いついた。
グラミン銀行総裁、ムハマド・ユヌス氏の昼食時を狙ってプランをプレゼンした。’Do it! Do it! Go ahead!’ 彼は背中を押してくれた。しかし現実は甘くはなく、様々な紆余曲折があった。それでもプロジェクトを思い立ってからわずか9ヶ月後、プランが実現する日が来た。2010年6月8日、バングラデシュのハムチャー村、30人の高校生が見つめるパソコン画面にバングラデシュ随一と言われる英語教師ザハン先生が現れた。それから半年間の映像授業と現地大学生のサポートで、第一年目には約3分の2の生徒が大学への合格を決めた。