この十年、世界が子どもの教育のためにしてきたこと、そしてこれからすべきこと
クレイグとマークのコラムの紹介です。
http://www.huffingtonpost.ca/craig-and-marc-kielburger/global-education-worsening_b_8117846.html
14歳のケニアの少女ヘレン・レミアンは、藁にもすがる思いで、祖母の家に向かって家を飛び出して行きました。レミアンは、父親との話し合いが上手くいかず、追い込まれていたのです。
レミアンの祖母が、もしレミアンの父親(レミアンの母親は既に他界しています)に教育の大切さを説くことができなければ、レミアンは学校をやめさせられ、結婚させられるということを、レミアンは知っていたのです。
レミアンの行動に疑問を感じている人もいるかもしれませんが、アフリカのおばあちゃんの底力をなめちゃいけません! レミアンの祖母は、レミアンの家の前まで押しかけました。祖母の説得に圧倒されたレミアンの父親は、娘が勉強を続けることを許したのです。家畜を飼いながら生計を立てているマサイ族であるレミアンの家庭は、経済的には低所得の家庭です。また、家から歩いて通える学校の数もわずかしかありません。この地域では、教育を受けるということが、まだとても難しいことなのです。(女子は特に)
カナダでは九月から新学期が始まり、カナダ中の道路が黄色いスクールバスで埋め尽くされている風景がまた戻ってきました。そのような光景を見ると、カナダ人は子どもへの教育保障という面では非常に恵まれているなと改めて感じます。このような機会が与えられていない子どもたちが世界中にいるのですから。世界は教育問題に取り組み、特にこの十年は問題解決に向けた素晴らしい前進がありました。が、最近、この前進が後退しつあるのではないかという懸念が、様々な所から出てきています。
絶対的貧困の撲滅を目指したミレニアム開発目標が2000年に始まった時、国連は一億九千六百万人の子どもたち、十代の青少年が学校に通えていないという事実を記録していました。子どもが学校に通うために一つの障壁となっているのは貧困です。例えば、ケニアの場合、高校の学費は年間約120ドルです。これは、一日の稼ぎが1ドル以下に留まっているレミアンのような家庭には大変な負担になります。更に、多くの子どもにとっては学校が家からとても遠いため、学校の宿舎などに入る必要がありますが、その宿舎に入るための費用が更に大きな負担となるのです。
そのような背景もあり、レミアンが入学できる学校は、キサルニ女子中学高等学校しかありませんでした。キサルニ女子中学高等学校では、助けを必要とする生徒を財政的に支援する制度があったからです。
ミレニアム開発目標が導入されたこの十年、学校の建設や設備強化に対し、政府や民間から多くの投資が行われてきました。そして、国家規模の教育制度の確立も進みました。2011年までには、学校に通えない子どもの数は7千万にまで減りました。これは、素晴らしい前進です。でも、ミレニアム開発目標の「全ての子どもに初等教育を!」という目標達成までの道は、まだまだ遠いのです。
どうしても私たちが憤りを感じてしまうのは、2011年以降、学校に通えない子どもの数が再び増えているという事実です。国連によれば、昨年には学校に通えない子どもの数が、2011年と比べると240万人増えています。
このような事態が起こっている理由の一つには、裕福な国々からの国際支援の減少が挙げられます。初等教育に対する財政的な支援は、ピーク時の2010年に比べて、11パーセント減少しています。国際開発全体での教育への支出はわずか8パーセントしかなく、これは2002年以来の最低水準の数字となっています。
大変残念なのですが、カナダ政府の開発途上国への教育支援は、2010年には6億5500万ドルだったのに対し、2014年にはそれが3億4400万ドルになり、半分近くにまで予算が減らされているのです。国連は、今後15年間で教育支援への予算は不足すると予想しており、全ての子どもに初等教育を受けさせるには、なんと75億ドルも足りなくなってしまうという推定を出しています。
性別による差別を受けることなく、全ての子どもたちが教育を受けられるように世界がこれまで努力してきましたが、まだまだ先は長いです。国連は、今年の終わりまでには、世界の69パーセントの国々で、男子と女子の小学校入学における性差が解消すると予測しています。
しかし、高校レベルまでを見ると、男女間の入学の性差が解消されている国は48パーセントにまで減ってしまいます。国によっては、今挙げたような数字を達成することすら夢物語のようになってしまっている場所もあります。例えば、国連の専門家は、「エチオピア、ハイチ、イエメンでは88パーセントの女子が小学校を修了できない状況にある」と語っています。
ところで、レミアンの物語はハッピーエンドを迎えます。彼女の努力と、祖母や教師からの支えもあり、18歳になったレミアンは、誇り高きキサルニ女子中学高等学校の第一期生として、今年の一月に卒業を迎えました。現在は教師になることを目指して、勉強や実習に励む日々を送っています。
「教師になることは私にとってはとても大事なことです。私の故郷では、教師の数がまだ足りないからです。私が教師になることで、他の子どもたちを助けられるのです」(ヘレン・レミアン)
今月下旬には、ミレニアム開発目標を受け継ぐ次の計画を定めるために、世界のリーダーたちがニューヨークに集まります。この話し合いの中で核となるべき問題は「世界の子どもの教育問題に関してこの十数年で得た前進と成果をどのように維持していくべきか?」そして「世界の全ての子どもたちが教育を受けられるようになる日を迎えるために何をするべきか?」ということだと思います。
キサルニ女子中学高等学校に関する過去の記事
(訳者 翻訳チーム 清田健介)