ネット時代の今だからこそ見直したい、手紙の底力

クレイグとマークのコラムの紹介です。

https://www.we.org/we-schools/columns/global-voices/power-letters-digital-age/

 

おとなになってから、Zainib Abdullahは、心の中にある寂し

さを押し殺して生きてきました。

 

故郷のイラクに家族を残し、カナダで暮らしていたAbdullah

は、彼女の叔父に起こったストーリーを、自ら筆をとり、綴ろ

うという決意をしました。Abdullahの叔父は、かつてイラクを

統治していたサッダーム・フセイン政権によって不当に逮捕

され、処刑されました。叔父に対しては、裁判も開かれず、

大切な人にお別れを言う機会も与えられませんでした。

Abdullahは、自分で手紙を書くことで、世界中で不当に投

獄されている人たちの現状を、彼らに代わって訴えようと

したのです。

 

「叔父に手紙を書くことはできませんでしたが、それでも手

紙を書くことが、今苦しんでいる他の人たちのために、私が

できることでした」(  Zainib Abdullah)

 

Zainib Abdullahは、アムネスティ・インターナショナルが毎年

行っている、「ライティングマラソン」キャンペーンのトロントの

イベント会場で、手紙を披露しました。「手紙を読んだことで、

気持ちが救われた部分は確実にありました」

 

「ペンは剣よりも強し」といいますが、手紙は世界を変える

力を持っています。

 

手紙はメールよりも読み手に親しみを感じさせ、ツイートより

も強い印象を与えることができます。世界の暗闇の底に不当

に置き去りにされている「良心の囚人(無実の囚人)」の現状を、

手紙は世界の人により力強く訴えることがきます。また、権力者

たちに対しては、「無実の囚人たちを無視するなどという選択肢

は、あなたたちには用意されていないぞ!」というメッセージを送

ることができます。

 

ジャーナリストのハジジャ・イスマイロヴァは、アゼルバイジ

ャン政府の腐敗について告発した後、脱税の容疑をかけら

れて二年間投獄されました。話は変わりますが、エジプト人

のマレ・アドリー弁護士は、エジプトの人権問題に抗議の声

を挙げようとして、刑務所に投獄されました。今紹介した二

人は、世界中の人が参加した、手紙で釈放を求めるキャン

ペーンによって、自由の身となりました。
ここまで、アムネスティ・インターナショナルなどの例を紹介

してきましたが、何を隠そう、私たちが子ども活動家として、

つまりフリー・ザ・チルドレンとして行った最初のアクションが、

手紙を書くことや署名活動だったのです。

 

1995年、カイラシュ・サティヤルティが、児童労働が行われ

ていたカーペット工場に抗議して、工場に直接乗り込んで

行って逮捕された時、私たちはインドの首相宛てに、サテ

ィヤルティの釈放を懇願する手紙を書きました。また、署

名活動を行い,000人もの人たちから賛同を得ることがで

きました。私たちは手紙と署名を、インド政府宛てに送りました。
その一年後、カナダを訪問したサティヤルティは、手紙や署

名は、釈放を実現させるための大きな力になったと言ってく

れました。

 

最近では、ネットを使った運動の限界も多く指摘されていま

す。主として、「SNSは情報を世界中に拡散する力は持って

いるけれど、その情報はあっという間に他の情報にかき消

されてしまう」というものです。

 

このようにネットの限界も見えたいまだからこそ、みなさんを

含むひとりひとりが、自分たちの選挙区の国会議員に話をし

に行ったり、(そういうことができる場として、国会議員は選挙

区に事務所を持っているのです)抗議活動やデモ行進に参加

することが重要なのではないかということを、私たちは強く感じ

ています。デモに参加したり、議員と面談したりすることが難し

いようであれば、手紙を書きましょう!または電話をしましょう!

今年の一月に行われた「ワシントン女性大行進」でも、今私たちが

述べたようなことは主要なテーマの一つでした。政治家たちとい

うのは、人々が声を挙げた時、少なくともその声を注視せざるを

得なくなりますからね。

 

2008年、カナダ人コンピュータープログラマーのHamid

Ghassemi-Shallが、証拠もない状態でスパイ容疑をか

けられイランで逮捕された際、Abdullahもすぐさまこの案

件に関わりました。トロントで関連イベントが開催された

際、Abdullahは、Ghassemi-Shallが、妻のAntonella Meg

aに宛てた、刑務所からの留守番電話のメッセージを聞

いたといいます。

 

「Hamidは、どれだけAntonellaを愛しているかを訴えていま

した。美しさを感じた瞬間でした。Antonellaは、困難な状況

の中でも、夫からのメッセージに喜びの表情を見せていま

した。」

 

五年間投獄された末、自由の身となった後、

Ghassemi-Shallは、アムネスティ・インターナ

ショナルのイベントで、手紙が彼を勇気付け、

獄中で闘い続ける力を与えてくれたと語りま

した。そのようなGhassemi-Shallの姿に、Abd

ullahは救うことができなかった自分の叔父を

重ね合わせていました。

 

「今でも、叔父について時々考えます。叔父がもし獄中で手

紙を受けっとったら、どのような思いで手紙を読んだのだろ

うかと。。」

 

そのような思いを秘めながら、Abdullahは今も手紙を書き

続けています。

 

参考リンク

アムネスティ日本が公開した、2012年のライティングマラソ

ンのPR動画

 

https://www.youtube.com/watch?v=AkS7YgLaQHo

 

ハジジャ・イスマイロヴァに関する記事(英語)

 

https://www.theguardian.com/world/2016/may/25/investigative-journalist-khadija-ismayilova-freed-azerbaijan-radio-free-europe

マレ・アドリー弁護士の釈放を求めたアムネスティ日本のキ

ャンペーンサイト

 

http://www.amnesty.or.jp/get-involved/ua/ua/2016ua098.html

 

アドリー弁護士の釈放を伝えるアムネスティUSAの記事

 

https://www.amnestyusa.org/get-involved/take-action-now/good-news-human-rights-defender-malek-adly-released-egypt-ua-9816

カイラシュ・サティヤルティについて
http://mainichi.jp/articles/20160610/ddm/008/070/039000c

 

社会起業家とジャーナリストによる対談記事。今回のコラム

と直接的な関係はないが、クレイグとマークが指摘した「ネット

を使った運動」の限界について、日本の視点から言及している。

 

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/book/15/101989/061500007/?rt=nocnt

 

「ワシントン女性大行進」についての記事

 

https://www.buzzfeed.com/sakimizoroki/wm-c?utm_term=.duabzDdE0#.isX0deYbz

 

Hamid Ghassemi-Shallについての記事(英語)

 

http://www.macleans.ca/news/world/hamid-ghassemi-shall-was-locked-away-but-not-forgotten/

 

22年前に誕生したフリー・ザ・チルドレン。最初に行われたアクションは、手紙を書く活動や署名運動でした。