アルゴリズムによって分断されている、私たちのインターネット

クレイグとマークのコラムの紹介です。
https://www.we.org/we-schools/columns/global-voices/internet-algorithms-dividing-us/

 

検索エンジンって、魔法みたいですよね!ネット上で質問を

入力すれば、何かしらの答えが必ず出てくる訳ですから!

 

しかし、その検索結果は、平等性を担保したものではありま

せん。みなさんの現在地、過去の検索履歴、SNSでの閲覧

履歴などに基づいて、各個人に特化したものしか表示されて

いません。いまみなさんが使っているインターネットは、実

はみなさんひとりひとりだけに与えられている世界なのです。

 

バンクーバー在住の旅行ライターが「ベネズエラ」と検索し

た時に表示されるのは、現地で必見のレストランかもしれ

ません。一方、ニューヨークの人権派弁護士が同じ単語を

検索した時に表示されるのは、現地で続く政治弾圧の最新

情勢を伝えるニュースかもしれません。

 

検索結果が、私たちの普段のネット上での行動で変わって

くるということを、私たちは普段あまり意識していません。好

みのレストランを探す時には、それはとても有難い検索エン

ジンの特性でしょう。しかし、情報を入手するという点から見

ると、これは問題です。情報が大量に出てくる一方で、どん

な情報を見逃しているか分からなくなってしまうという事態

が起こってしまいます。

 

ロイタージャーナリズム研究所の2016年の調査によると、

カナダ人の75パーセントが、ネットでニュースを見ています。

そして半数近く(48パーセント)が、SNSでニュースを読んで

います。ニュースのみならず、エンタメ、リサーチ、何か元気

が出るような言葉を探す時など、私たちは本当に何でもネッ

トに頼っています。

 

インターネットは、様々な情報が詰まった宝箱のはずでした。

しかし、実際のインターネットは、私たちの見たいものだけを

見せて、私たちを分断しているのではないでしょうか?

最新式のアルゴリズムは、私たちを裏で操っているかのよう

です。私たちの好みを認識し、見せるべきコンテンツを識別

しています。

 

アルゴリズムの機能によって、私たちはお気に入りのバンド

が私たちの地元に来た時、いち早くその情報を手に入れる

ことができます。お気に入りの店のバーゲンセールもいち早

く知ることができます。実は、そのアルゴリズムこそが、「Fac

ebookの友達は、政治的な意見が私と同じ人ばかりだ!」(だ

から私は正しい!)と感じてしまう理由でもあります。Faceboo

kのニュースフィードは、みなさんの「いいね!」を基に、各ユ

ーザーが共感しやすい内容の投稿を優先的に表示している

のです。つまり、Facebookのニュースフィードは、議論が巻き

起こる「白熱教室」ではなく、「心地良いぬるま湯」になってい

るのです。

クリック数を稼ぐための競争が激しいインターネットでは、あ

らゆる場所にアルゴリズムが導入されています。検索エンジ

ン、既存メディアのウェブサイト、ネットフリックスのアカウントに至るまで..

このようなパーソナライズ化は問題を引き起こすでしょう。ただでさえ、フ

ェイクニュースや、政治的イデオロギーの対立の激化によって、既に社

会の分断が進んでいる現在です。アルゴリズムの進化は、そのような分

断に拍車をかけることになってしまうでしょう。政治の問題や人種差別、

性差別など、あらゆる問題を自分の色眼鏡だけで見るようになってしま

います。

 

TEDのプレゼンテーション『危険なインターネット上のフィル

ターに取り囲まれた世界』のプレゼンターとして知られる、

イーライ・パリザーは、英紙ガーディアンとのインタビュー

で、この問題にも言及しています。「問題は、市民の人た

ちが、多様な情報に接する機会を失うどころか、それに気

づくこともなく、且つ何の違和感もなくやり過ごせてしまうと

いうことです。」

 

ネット上で多様な視点を見る経験をするということは、社会

問題に積極的に関わる態度を養い、情報や知識を身に着

け、自分とは異なる立場の意見にも共感できる態度を養う

ということにもつながっていくでしょう。

 

技術的には、プライバシー設定の変更も可能ですが、ネット

上での行動を少し変えることで、アルゴリズムに対抗するこ

ともできるのではないでしょうか?

 

アルゴリズムには、私たちのクリックが反映されます。です

から、まずはそのクリックから変えてみるのはどうでしょうか?

 

みなさんが同意できない内容の記事や、意見をクリックして

みて下さい。多様な声をSNSで見つけて下さい。あなたの考

えや意見に、真っ向から反論するような、映画やウェブサイ

トを見て下さい。
大事なことは、私たち自身が、積極的に情報を求めていくこ

とです。自分たちとは異なる意見を、積極的に求めていく姿

勢が、私たちの社会にある多様な声を発信できるメディアの

形成につながっていきます。そして、私たちも多様な情報に

接することができるようになるのです。

 

今は、情報が指一本で探せる時代です。しかし、私たち

がいま抱える社会問題を考えていくための材料となる、

洗練された情報、確かな情報に基づいた意見や見識を

見つけるのが、今ほど困難な時代はないと言わざるを

得ません。恐らく、その困難さはどんどん増していくの

ではないかと思います。

 

参考リンク

 

個人に特化した検索結果が作られる仕組み

 

https://www.hivelocity.co.jp/blog/31204/

 

カナダ人と同じく、日本人もネットでニュースを読む習慣が定着

 

http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2017/08/09/26475

 

政治観によって、表示される内容が異なるFacebookのニュースフィード

 

http://jp.wsj.com/articles/SB12363839694362934444104582075542920636580

 

フェイクニュースの問題

 

http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3929/1.html

 

イーライ・パリザー:危険なインターネット上の「フィルターに囲まれた世界」
https://www.youtube.com/watch?v=B8ofWFx525s&vl=ja

 

ガーディアンのパリザーへのインタビュー(英語)

 

https://www.theguardian.com/media/2017/jan/08/eli-pariser-activist-whose-filter-bubble-warnings-presaged-trump-and-brexit

 

アルゴリズムは、みなさんの検索履歴を記録し、みなさん最適だと思われる情報・広告をみなさんに表示しています。