科学者や研究者たちに伝えたい、「ブランド力」改善のススメ

クレイグとマークのコラムの紹介です。
https://www.we.org/we-schools/columns/global-voices/science-needs-rebrand-closing-gap/

学問としての科学に必要なモノには、データーに数値、研
究結果や考察などがあります。では、他に必要なモノはな
んでしょうか?私たちは、今の科学は、一般の人々に強く
PRするために、「ブランド力」の再構築が必要ではないか
と考えています。

ピュー研究所が最近行った世論調査によると、大多数の人
たち(79パーセント)が、科学は重要だと考えている一方で、
ワクチンから原発の問題に至るまで、科学者たちのあらゆ
る見解に対して、懐疑的に見ている人達が一定数いること
も明らかになりました。

科学者たちの見解と、一般の人達との理解に、溝ができて
しまっているということは、厄介な問題です。科学的知見が
正しく広まっていないことで深刻となっている問題の代表例
が、気候変動です。気候変動に関する問題意識が共有され
ていないために、国際社会が気候変動の問題に、一致団結
して取り組むということが、未だにできていないのです。この
ことから分かることは、科学者たちが問題に対して解明を進
めていっても、一般の人たちの理解は、勝手に科学者たちに
追い付いていくという訳ではないということです。科学者たち
の理解が深まっても、一般の人たちにとっては関係の無いこ
とになっているというのが、実情なのです。

私たちの世界観は、「客観性のある証拠(エヴィデンス)より
も、私たち自身の文化や過去の経験によって形成されてい
きます。これは「文化的認知」と呼ばれているモノです。この
認知論によって、98パーセントの科学者が進化論に同意し
ているにも関わらず、北米で三割もの人々が「人間は一気
に創生された存在」だと信じているという事態も、決して不
可解なモノではないということが分かります。

今言ったことを分かりやすくまとめると、「友達の意見は、学
者の小難しい見解に勝る」といったところでしょうか。しかし、
この状況は、科学者たちが、一般の人たちへの発信方法を
変えることで改善する可能性があります。つまり、科学者の
話でも、やり方次第で、友達の話と同じように、身近に感じら
れるものになるかもしれないのです。
新たな事実を解明していくとの同じぐらい、情報発信をして
いくのも重要なことです。そういった意味でも、科学者や研
究者たちの世界で、多様性を促進していくことはとても重要
だと考えます。「白髪のおじさんが、難しい専門用語を使っ
て話している」という、科学者に対して一般の人たちが持っ
ている固定観念を、壊していくことが、とても重要だと私たち
は考えているのです。大学の講義室、テレビや映画で見る
学者の姿が、「一般の社会の人たちとも変わらない姿で、同
じように社会生活を送っているのだな」という風に思われるよ
うな努力をするべきだと思います。

科学の情報を社会に向けて発信する際は、大衆文化を活
用する必要もあると思います。ヒップホップアーティストのG
ZAが、ニューヨーク中の公立学校を訪れ、生徒たちに、理
科に関するラップを作ろうと促した時、生徒たちは、実験室
で実験をする時よりも、真剣に理科に取り組んでいました。

ちなみに、私たちの今回の主張には、科学的な裏付けもあ
ります。

イェール大学が行った文化的認知の最新の研究によると、
科学的な好奇心に基づいた探求と、自分と意見を異にする
理論を論破することを目指した探求には、大きな違いが見ら
れるそうです。知識を持った科学者や研究者は、自分の理論
を証明するために、エヴィデンスを選定しようとするのに対し
て、科学的な好奇心で探求をしている人は、相違する見解や
理論に対して、寛容な態度を示すことが研究で明らかとなっ
ています。

このような現状を改善することが、科学界と、一般社会の
間にある溝を埋める第一歩です。

「科学界は、探求の場から、理論を論破する場へと変容し
てきたように思います。]サイエンスコミュニケーション会社
[Beakerhead]のCEO、Mary Anne Moserは語ります。「科学
界は、論破することを重視しすぎずに、より包括的になって
いくためにも、必ずしも『正しくない考え』に対して、寛容にな
っていく必要があると思います。科学界も、一般社会と同じ
で、いつでも正しくあることはできませんからね。」

今年のアースデイには、トランプ政権の科学予算削減に対
して、科学者たちが抗議活動を行いました。声を挙げること
自体は必要なことではありますが、普段は研究所に閉じこ
もっている人たちが、政治的な問題の時には、一致団結し
て、街角に繰り出しているという光景を見ると、余計に科学
者を敬遠してしまう人も出てくるのではないかと、私たちは
懸念しています。

政治的な運動も重要ですが、科学者や研究者のみなさん
には、やはり、私たちの好奇心を刺激して下さるような存
在であって欲しいと思っています。

巨大広告代理店「レオ・ブルネット」のスウィナンドCEOは、
科学者は、社会運動や広告業界から、多くのことを学ぶこ
とができると言います。

「科学者たちの知能指数が、心の知能指数と合わさったら、
ぜったいに魔法を起こせます。データーや知見に、科学者た
ちによって人の心が宿れば、多くの人にそれを伝えることが
できるでしょう。」(スウィナンドCEO)

少しの好奇心と、芸術性、そして感情を持ち合わすことがで
きれば、科学の「ブランド力」も向上し、一般社会にも自然と
溶け込んでいくようになるはずです。

参考リンク
ピュー研究所が行った世論調査:科学者と一般市民の認
識の溝

http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20150204/434335/

アメリカ社会などで根強く残る、「気候変動否定論」の実態

http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8730/

理科に関するラップの創作に取り組む生徒たち(英語)

イェール大学の文化的認知論の研究(英語)

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pops.12396/abstract

科学者たちが行った、トランプ政権への抗議活動

http://www.huffingtonpost.jp/2017/04/23/march-for-science_n_16187010.html

科学への好奇心は、科学者だけのモノではありません