地球にやさしい未来を夢みて、奮闘するチェンジメーカーのストーリー

世界や地域に変化を起こすということは、時に時間や手間

を要することでもありますが、それでも諦めないことが大事です。

今回は、二年間という時間をかけて、母校にゴミの堆肥化

プログラムを導入したチェンジメーカーを紹介します。(清田)
https://www.we.org/stories/fighting-green-future/

ハンナ・シルスは、12歳のときには、エコ戦士になるなど思

ってもいませんでした。ところが、Huntley Centennial Public

校で始まったばかりのエコチームのリーダーに偶然なったこ

とで、それまで見たこともないような問題に目を向けるようになり

ました。

 

かつてハンナは毎日、生徒の昼食から出た茶色くなった

リンゴの芯、堅くなったサンドウィッチのかけら、バナナの

皮などで溢れ返っているゴミ入れを、特に気にすることな

く通り過ごしていましたが、いま彼女は、ゴミをただ見てい

るだけでなく、解決しなければいけないチャレンジだと考え

るようになりました。解決方法は、学校全体で取り組む、ゴ

ミの堆肥化プログラムでした。それは新設されたばかりの

エコクラブにとって大胆なプロジェクトでしたが、ハンナは

やってみなければと思いました。2年をかけて調査、計画

の立案にあたった一方、地元のオタワ市の行政からの支

援を取り付けようとしました。この計画は学校の用務員に

作業を任しておくようなものではないと、市を説得する必要

がありました。残念ながら、彼女の年齢が当時は壁となり、

おとなたちからゴーサインをもらうのに、2年の時間を要する

ことになりました。「一緒に働いている大人が他の大人たちに

すると同じように私の話にも耳を傾けてくれる、という確信を持

つということは、12歳の私には難しいということが分かりました」

と、ハンナがふりかえります。「それでも私が闘っていることは私

にとって大切なのだ、その想いを忘れないでいようと思いました。

 

さて、3年後、ハンナは15歳、新しい学校、West Carleton

中学に進学しました。が、彼女のまいた種は、しっかりと花

を咲かせていました。最近Huntleyに戻ったとき、グリーン

ビン(集積貯蔵容器)の並んだ大広間がハンナを迎えてくれ

ました。グリーンビンの上に、生徒たちが作った環境問題を

訴えるポスターがぶら下がっていました。いまHuntleyの校

舎を歩けば、「ハンナは環境問題についてアクションを起こ

しただけでなく、環境問題への意識をHuntley Centennial P

ublic校に根付かせた」ということは、否定しようがない事実

であることが分かります。彼女は誇らしく言います。「何年も

かけて、このグリーンビンのプログラムのように、私たちが率

先してきた行動で、私たちの学校が目覚め、環境について

誠実に向き合うようになりました」。

 

学校での活動という枠を超えて、ハンナの環境擁護への姿

勢は、エコフレンドリーな会社Seventh Generation に注目さ

れることになりました。植物をベースとした商品開発のパイ

オニアであるSeventh Generationの社名は、次の7世代の

先の地球が元気な星でいられるように、今の地球を大切に

しようという信念に由来しています。ハンナは7月2日、WE D

ay Canada の舞台に登場し、若者や家族がSeventh Genera

tion’s # coldwaterclean pledgeに参加して、未来の世代のた

めに地球を守っていこうと訴えました。

 

私たちは、ハンナがスピーチをする直前、ハンナにインタビ

ューしました。環境保護の活動が、ハンナにとってどのよう

な意味を持つものなのか、建国150周年を迎えたカナダに

住む人たちが、母なる大地を、今から150年後も守っていく

ためにできることなどについて聞きました。

 

Q & A
あなたは環境問題に積極的に取り組んできましたが
活動を始めたきっかけは何だったのですか?

 

『私の学校では、新しいエコチームの先頭に立つような生徒

を探していました。その当時、私は環境問題に今ほどの情熱

を持っていませんでした。この新しいチームが担う重要性につ

いて考え出して初めて、私の身近にある環境問題について考

え始めたのがきっかけです。』

あなたが提案することになった学校のゴミの堆肥化プログラ

ムというアイディアを後押したのは何だったのですか?

 

『毎週ゴミの日までに、私たち少人数のクラスでも、いつも

溢れそうな量のゴミが出て、ゴミ箱からゴミが漏れないよう

にするために、その場しのぎの対応をいていました。―こ

れらの多くが堆肥にできるゴミなのに。これにはうんざりで

したね。このゴミを、持続可能性を重視して処理していくこ

とは、私たちの学校の環境問題の改善にも有益だと思い

ました。その中で私たちの市が提供する堆肥化プログラ

ムを校内で導入することが、ベストな解決策だと思うようになりました。』

プログラムを実際に始動させるのは、なかなかの難題だ

ったでしょうね。先ず、克服しなければならなかった障害

は何でしたか?

 

『このプログラムは単なる課外活動ではないということを、理解してもらえるまで大変苦労

しました。ゴミに関することは、学校の用務員さんに任せれば良いのではではと言った様

々な懸念の声がありました。私は、一定の日を決めて、各教室の誰か1人が、定期的に

グリーンビンを持って出てオタワ市役所に回収してもらうようにすればと、提案しました。』

 

堆肥化プログラムを実行するのに2年かかったそうですね。

どのようにして、モチベーションを持ち続けたのですか?

 

『モチベーションを持ち続けることは難しくありませんでした。

環境問題が深刻になっていくのを、日々目の当たりにしてい

ましたからね。私はこの学校で、状況を改善するようなインパ

クトを起こしたいとずっと考えていました。だから、そのために

できることがあれば何でもやりました。そのうえ、先生や両親

からも大きな支援を受けました。いつも私を信じて、困難にぶ

ち当たった時はそばで手を差し伸べて導いて下さいました。』

全体として、この経験から何を学びましたか?

 

『この経験から学んだ最大のものは、チームとして協力する

ことの大切さ、そして周囲からの協力の有難さでした。グラッ

フ先生のような―私のように若い子をサポートし、必要な力を

貸してくれる先生―なしでは、学校や地域を巻き込んだこのプ

ログラムは実現しなかったでしょう。』

地域に変化を起こしたいという想いを持っている人に、どん

なアドバイスをしますか?

 

『まだ若いから無理、と決めつけてはいけません。何歳であ

っても、変化を起こすことは常に可能です。必要なのは、忍

耐強く一生懸命にやること、そして夢は大きく、それだけです。』

私たちの地球を守るために、皆さんに毎日1つやって

欲しいことは何ですか?

 

『環境について言えば、ささいな事で大きな効果が生まれま

す。私たちみんなが衣服を(給湯器を使用しないで)冷たい

水で洗うとしたら、エネルギーを節約でき、また、カーボンフ

ットプリント(温室効果ガスの排出量の総量)も減らすことが

できます。冷たい水で洗濯すると400万トンの二酸化炭素を

削減できるってこと、知っていました?これは、カナダの一般

家庭150万世帯1年間暖めるのに必要な量に相当するのですよ!』

あなたが個人的に憧れているのは誰ですか?そしてなぜで

すか?

 

『私は人に恵まれていて、本当に幸せです。これまで最大

のロールモデルと言えば、小学校時代お世話になったグ

ラフ先生の名前を挙げなければならないでしょう。先生は

教え子の一人ひとりの生活にも関わって手を差し伸べて

くださる程の格別な努力をしてくださいました。たえず前向

きで、いつもモチベーションをお持ちでした。先生は私に、

自分が信じることに打ち込みなさいといつも教えてください

ました。』

カナダの次の150年にかける夢は何ですか?

 

『環境の保護の分野では、とても先進的なカナダという国に

暮らせて、とても幸運だと思っています。私の唯一の夢は、

この先進性を維持するためにできる限りもことをすること、

そして環境問題に変化を起こせる機会を創り続けて行くこ

とです。』

 

(原文記事執筆:キャスリン・レーン・スミス  翻訳:翻訳チ

ーム 松田富久子 文責:清田健介)