情けは人のためならず

「人を助けたい」という想いを持って行動を起こすとき、私た

ちは誰かを助けてあげようと思いがちですが、行動を起こす

ことで、私たちが学ぶこと、助けられることもたくさんあります。

今回は、そんな体験を糧にしている若者を紹介します。(清田)
https://www.we.org/stories/b-c-elementary-school-students-give-back-to-local-community-and-global-community-through-we-schools/

 

 

2016年暮れ、シリアのアレッポに爆弾が落とされた日、勇

気ある7歳のシリアの少女は荒廃した地から平和を願って

ツイートしていました。そのツイートは遠く離れたブリティッ

シュコロンビアのサレーに住むもう一人の若い女性の心を捕らえました。

 

ケンブリッジ小学校7年生のイザベラ・レイのクラスでは、シ

リアでの紛争が現地の若者に及ぼす影響について学んで

いました。その日、イザベラは父親のツイッターのアカウン

トにログインして、シリアの少女、バーナ・アベッドにメッセ

ージを送りました。勇敢な少女が発する戦争の恐怖、そし

て困難な状況であっても抱いている若者としての未来への

希望などを発信したツイートがクラスを引きつけていました。
「彼女の話が素晴らしく、彼女の勇気が希望を与えてくれ

たことやクラスの子どもたちが彼女のことを心配している

ことを伝えたかったのです。」とイザベラは言います。

次の朝、イザベラはベッドから飛び起きてパソコンに駆け寄

りました。バーナはすでその日5回ツイートしていました。そ

の全てが、ニュースなどとは違う個人の視点からの体験を

綴ったもので、その多くが生々しいものでした。バーナが厳

しい状況に直面していることを知りイザベラの抱いていた希

望は打ち砕かれました。

 

その時、右上の未読メッセージのアイコンに気がつきました。

「そのメッセージを読んで私の目は涙で溢れました。」とイザベ

ラは言います。 「彼女は戦争の真っただ中にいるようには思

えませんでした。まるで私が助けを必要としていて、慰めが必

要な人のようでした。」

 

イザベラはケンブリッジ小学校のWE(フリー・ザ・チルドレン)

クラブでその出来事を伝えました。それは、イザベラがその

日のケンブリッジ小学校WEのクラブでクラスメートと共有し

た教訓でした。「人はたとえどんなことを経験してもそれを乗

り越え、前を向き、他人を支えることができる。」

 

それは教員のレスリー・バーウォッシュが教室で懸命に育

んできたものでもあります。 彼女は10年ほど前に、地球市

民としての考え方を学ぶ授業の中核としてWEを学校に導

入するために尽力しました。彼女はプログラムのカリキュ

ラムの効果を上げるため、生徒を毎年WE Dayへ参加させ

ています。このイベントで彼らは地域の他の学校の良い影

響を受け、翌年の行動計画へのアイデアを得ることができ

ます。

彼女は生徒の話題になると、イザベラが特別であることを

強調します。「 教室で授業を受けたすべての生徒がバー

ナにメッセージを送るわけではありません。イザベラは特

別ではありますが、他にも彼女のような生徒はたくさんい

ます。」先生は誇らしげに言います。「イニシアティブを発

揮し、周りのものを変えたいと思う生徒がたくさんいます。

それはWEを通じて育まれたものです。子どもたちは本当

に他人を助け、地球に生きる市民としての役割を果たすことを望んでいます。]

 

学校全体の食糧支援事業や、地域社会の貧困に取り

組むために募金活動をしているイザベラが、WEに参加

するきっかけになったのは彼女の家庭環境でした。

 

ケンブリッジの生徒は、WEクラブに加わるために、エッセイを書か

なければなりません。イザベラは一部の生徒が悪戦苦闘していた

ことを覚えていますが、彼女自身にとってはそれほど難しくはあり

ませんでした。

彼女は父親から話してもらったことについて書きました。彼

はイランからの移民で、イラン革命とその後のイラクとの戦

争を乗り越えてきました。彼はイザベラと同じ年齢のときに

カナダにやって来ました。まだ彼女の家族にとっては敏感

な話題でしたが、イザベラは父親が直面した不幸な話の断

片をつなぎ合わせました。

 

数年後、カナダバンクーバーのダウンタウンで彼女の父親

は図書館員になりました。時折り、イザベラは街へのドライ

ブについて行ってイーストヘイスティングスの貧困を目の当

たりにしました。 「私は初めてドライブしたときのことを思い

出します。そして、私は何がそこで起きているかについて、

両親に尋ねました。」と思い出して暗い表情で話します。
「パパが、私がドライブで見た人たちがしているのと同じ

苦労をしたことがあるということを知って衝撃を受けました。」

 

その経験をエッセイにイザベラは活かしました。

エッセイを書いたことで彼女はWEクラブに入ることができま

した。彼女は14人の有望なチェンジメーカーとともに多文化

主義をテーマとするイベントを催し、偏見や人種差別の問題

を考えました。地域で食糧を必要としている人への支援活動

を行ったり、WEの国際開発プロジェクトのための募金活動を

行いました。

 

これらの活動がイザベラのような生徒に良い効果をもたら

すのは明らかです。 「私は幼い頃、いつも『私は他人を助

けたい』と言っていました WEは私にとても多くの機会を与

えてくれてきました。」

 

(原文記事執筆: ジェシー・ミンツ  翻訳:翻訳チーム

文責:清田健介)