フィリピンの大型台風の影で子どもが人身売買の被害に

昨年11月にフィリピンを襲った超大型台風30号により、被災するなど影響を受けた人々は合計で1500万人にも上っていると言われていますが、この災害の混乱に乗じて弱い立場の女性や子どもを狙った犯罪なども報告されています。

今日は、この台風禍により、人身売買の被害を受けた少年の事例を現地スタッフのレポートからご紹介します。

◆漁業の仕事があると言われ、島を離れた少年
17歳のレジーは、幼いころ父親を亡くし、妹と母の3人家族だった。近くにおばあちゃんや親せきが住んでいるため助け合っていたが、レジーの家族は父親がいないことでいつも家計は苦しく、レジーは学校に通いたかったが、3年前に学費がないため高校を中退し地元で働き始めた。しかし、2013年11月に台風30号によって家が壊され、被災し、地域での仕事もできなくなり困っていたところ、「バタンガスで仕事がある」と言われた。

大きな被害を受けたレジーの地域では、仕事は見つからない、とも言われ、思い切って地元を離れて、ルソン島にあるバタンガスでの漁業の仕事に就くことに決め、慣れ親しんだ地元の島を離れる決心をした。

◆紹介された仕事がない
少年はセブ島を離れたことがなかったが、家計や妹の学費を助けるため、初めて島を離れ、仕事のためにルソン島に渡りバタンガスへ向かった。しかし、実際に紹介された地域に行っても、言われた通りの仕事がなかった。その代りに、非常に衛生状況が悪く、肉体的にも辛い別の仕事をして働くしかなかった。住む場所もなく、稼げるかどうかもわからない状況だった。酷い状況に置かれたレジーはそこからどうしたら良いかわからず、途方に暮れた。そんな状況で過ごしていたが、ある日、レジーは運よく逃げ出した。が、故郷のセブ島に帰る交通費がなく、行くあてもなく、ただひたすら知らない土地を歩き、助けてくれる人を探すしかなかった。

◆留置所(刑務所)へ
お金もなく行くあてもないレジーは、路上で数日間を過ごすしかなかった。すると、路上で生活している未成年者を不審に思った警察によって、留置所に入れられた。数日たち、社会福祉課がレジーを調査に訪れ、レジーは今までのいきさつや事情を話したところ、「人身売買の被害に遭った未成年」ということで保護されり対象となった。しかし、警察や社会福祉課には未成年者を保護する施設がなく、留置所に入れらたまま引き続き、そこで過ごすことになった。

◆プレダ基金によってようやく救出、保護
レジーをずっと留置所に入れておくわけにはいかない社会福祉課は、刑務所や留置所に拘留された未成年者を救出、保護しているプレダ基金に連絡をしてレジーの状況を説明した。プレダ基金はすぐにレジーが入れられているパサイの刑務所へ向かい、手続きをして、プレダが運営するセンターでレジーを迎え入れることになった。
「清潔で明るく、健康的な食事が提供されるプレダのセンターで過ごせてとても嬉しかった。」とレジーに語った。

◆ようやくセブ島の自宅へ
プレダ基金はレジーの家族と連絡を取ることができ、セブ島の自宅に数か月ぶりに帰れる手配を取ることができた。初めての飛行機でセブ島に渡り、家族に会えることになった。家族は連絡が取れなくなり、どこに行ったのかわからなくなったレジーを心配していたので、レジーの帰宅にとても喜んだ。

◆レジーの今後
プレダ基金は、レジーの家族と親戚へ食糧を含む救援物資を提供しました。また今後、レジーが高校を卒業できるよう教育支援をする計画にいます。レジーの自立を応援し、見守りたいと考えています。