中国農村地域

長い歴史を持つ、美しくも複雑な国

世界一の人口を抱え、世界に4番目に大きな国土をもち、14の国と接している国、中国。

その大きな国土には、暑い砂漠もあれば森林もあり、北極のように寒い高山地域もあれば、はたまた常夏の南国のような地域もあります。そして、それぞれの地域にたくさんの異なる民族が暮らし、多様な文化や言語が存在する、壮大な多民族国家です。

最近はこの国の経済成長が注目をあびていますが、一方でこの国が立ち向かわなければならない課題はまだまだたくさんあります。特に、農村地域の人々が抱えている課題はとても深刻です。子ども達の教育へのアクセス、安全な水の確保や下水のシステムが整っていない地域も多く、医療へのアクセスも限られています。都市部の繁栄とは裏腹に、農村地域での貧困がとても深刻な問題となっているのです。

 

中国の子どもたちが置かれている現状

残念ながら、この国が教育に投じている予算は充分とはとてもいえません。農村地域の学校の数は全く足りておらず、そのため、子どもたちは遠く離れた学校へ長く危険な道のりを毎日歩いて学校に通うしかないのです。それでも学校へ通えればまだ良い方で、多くの子どもが通える距離に学校がなかったり、家族の仕事を手伝わなくては生活ができないため、学校に通うことができません。

知っていますか?

86
中国は、世界第2位の経済大国であるにも関わらず、世界の188か国中、国連の人間開発指数は第86位です。(UNDP, 2018)

 

85%
中国農村地域において、安全な水を安定して得ることができる人々は85%です。(UNdata, 2010)

 

56%
中国の農村地域において、衛生的な下水設備のある村に住む人は全体の56%です。(WHO, 2010)

フリー・ザ・チルドレンの取り組み

フリー・ザ・チルドレンは、中国で起きたある事故をきっかけに2002年から中国での活動を始めました。学校に行くお金を稼ぐために工場で花火の組み立ての作業して働いていた8歳から11歳までの38人の子どもたちが、工場で起こった爆発に巻き込まれ亡くなってしまったのです。

このような問題に根本から取り組むために、フリー・ザ・チルドレンは農村部各地の政府と連携して学校建設に取り組んでいます。この活動を通じ、中国政府や都市の人々も、農村部に学校を作る事が大人数の生徒を抱える都市部の学校の負担軽減に繋がるだけではなく、農村部から都市部にまで登校しなければならない子どもの負担軽減になる事に気づき始めています。

さらに、中国では男の子と女の子の間の教育を受ける機会の差も深刻な問題となっている為、私達は、とくに農村部の女の子の支援や、母親が安定した収入を得られるようになるための支援を行っています。

 

支援のかたち

村の自立を応援するプログラム(Adopt a Village)

貧困を生み出す要因は、複数あります。ですから、貧困を解消するための解決策は一つではなく、様々な側面から同時に支援活動を行うことが大切だとフリー・ザ・チルドレンは考えています。

そこで、わたしたちは貧困地域の人々が生きるために必要な基本的ニーズ(衣食住や教育、健康、仕事など)が満たされるよう、教育・保健・水・収入安定・食料の「5つの柱」を軸とした、村の自立を応援する支援プログラムを開発し、持続可能なコミュニティづくりに向けて活動しています。

中国農村地域での分野別実施事業

■教育:学校建設 、教員宿泊施設、図書館建設 、必要な設備を備えた教室や教科書 、制服の配布

■水と衛生:清潔な水が飲めるようになるための設備、手洗い所、トイレ、水と下水処理についての教育

■保健:保健衛生の研修、健康診断、医師による保健衛生のワークショップ、給食室の設置

■収入確保:畜産、収入確保や暮らしの健康に関するワークショップ、地域保健員の育成、職業訓練

■農業と食料:農業訓練、種の配布、調理場の建設

 

事業内容

井戸の設置

中国の内陸部にある農村地域・河北省のGufubao地区における飲料水の確保(2008年)

人口の30%が子どもであるGufubao地区に井戸の設置を行いました。この村の人々は主に農業に従事していますが非常に貧しく、おとなの非識字率は男性30%、女性50%と報告されています。以前は遠くまで子どもたちが水をくみにいっていましたが、井戸ができて村の中で飲料水、生活に必要な水を供給できるようになりました。

 

緊急支援

四川省で発生した大地震に対する緊急支援・復興支援として、2008年に地震によって壊れた学校の校舎の修繕事業などを行いました。

Aluo村における学校建て替えと水道の設置

地震により校舎が崩壊したため、以前から衛生や学習環境に課題のあった旧校舎を新たな清潔で明るい校舎に建て替えました。同時に課題であった水の供給を進め、生徒は安全な水を学校で利用できるようになりました。

 

ケースストーリー

甘粛省の農村

私の名前はLihua Dingです。鳳山(フンサン)小学校に通う6年生です。今の学校ができる前は、別の村の古い学校に通っていましたが、その学校はとても危ないところでした。電気もなく、暗くなると黒板の字が見えなくなりました。校長先生は私たちに、壁が崩れたら、学校がなくなるかもしれないと言っていました。

だから、両親はいつも私の安全と将来を心配していました。雨が降ると、教室の雨漏りがひどく、教科書やノートを開く事もできません。先生の話を聞くときには、傘をささなくてはなりませんでした。粗末な造りの学校で勉強するのは大変でした。

私の村にフリー・ザ・チルドレン学校が新設され、とても幸せです。この学校に通えるのが私の自慢です。今はもう天気や時刻を気にすることなく勉強ができます。新しい教室に初めて入ったとき、私たちはみんな、ものすごく嬉しかったです。助けてくださって、ありがとうございました。

 

Aluo村

2008年、Aluoという村にある小学校は、集会の途中で大地震に襲われました。幸いにも生徒は無事に避難できましたが、校舎は壊滅的な被害を受け、学校として使用する事が出来なくなってしまったのです。この事態を受け、フリー・ザ・チルドレンはAluoでの活動を始めました。

活動開始当初、子どもたちは保護者が泥で建てた仮校舎に通っていました。 仮校舎は1年生から3年生までの教室しか確保できず、場所も物資も不足していました。校舎には明かりもなく暗い状態で、清潔とはいえず、電気も通っていなかったので防寒設備もありませんでした。

4年生から6年生には教室がなかったので、日曜日の夜になると、山の向こう側にある別の村まで3時間かけて歩き、そこの村の学校で授業を受けていました。家に帰ることができるのは金曜日の授業が終わってからの週末の間だけでした。

2009年以降、フリー・ザ・チルドレンは地域のボランティアの方々の支援にも支えられながら、 泥の仮校舎よりもずっと大きい安全な校舎を新築し、村の小学1年生から6年生までが村で共に学べる学校をつくりました。現在、245人以上の児童(以前に比べ53%増加)が通っています。地域のおとなたちは、熱心に子どもたちの教育のために投資をし続けており、雨季が終わるたびに通学路を舗装したりしています。フリー・ザ・チルドレンも制服や教科書などの必要な物資を配布したり、図書館や先生方のための仕事場や宿泊施設の建設を行っています。

また、地震で学校の水源は破壊されてしまったため、家で家事をしている女の子達は1km離れた村の外れまで歩いて水をくみに行っていました。これを1日2回やらなくてはならなかったので、勉強や遊びに使えるたくさんの時間を犠牲にしていました。

フリー・ザ・チルドレンは政府と協力しあいながら、Aluoの新しい水源を確保するために活動し、現在は地元の泉から学校までパイプで繋がっており、学校に清潔な水を供給することができています。学校のグラウンドにはトイレも設置され、児童たちが衛生について学ぶ場になっています。

 

さまざまな支援の方法があります