Supporting Children’s Participation
子ども参加を促す、おとなによる伴走のポイント
Introduction
はじめに
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンは、子どもを「子どもの権利の保護の対象」としてだけではなく、権利の主体者として、また、共に社会をつくる「パートナー」と捉え、1999年の日本での創設以来活動を行ってきました。
これまでの活動の中で、子どもが安心して声をあげ、その声が社会の中で生かされていくために大切な視点が見えてきました。そこで、子どもの参加を支えるおとなが知っておきたい基本的な考え方・準備・実践のポイントを以下にまとめました。
What Adults Should Know
おとなの心得
子どもの「声」は社会を動かします。そのことを子どもと共におとなが信じることが重要です。しかし、子どもの声を社会に届ける活動は、単発の機会だけでは実現しません。必要なのは、子どもたちが自分の力を認識し、自分の内なる「声」や周りにいる他者の「声」に気づき、それを安心して表現し、さらに社会の意思決定につながっていくまでの一連のプロセスを支える継続的な仕組みです。子どもが社会の一員として、そして、当事者として、声をあげ、行動できるようになる環境を育てていくことが重要です。
(1)多様性を前提とした関わり
子どもといっても、その背景は一人ひとり異なります。
そのため、声を上げやすい子どもだけでなく、声をあげにくい子どもが存在することを前提に設計することが重要です。
以下に掲げる分類はこれだけで多様性をすべて表すことはできておりませんが、参考までに幾つかの分類の視点を記載します。少なくとも、参加する子どもに偏りがある場合は、そのことに自覚的になることが重要です。
- 居住地域
- 経済状況
- 国籍・言語
- 障害の有無
- 性自認や文化的背景
(2)循環する参加の仕組み
活動に参加した子どもたちが、数年後には次の子ども世代を支える存在になる――。そのような循環型の参加の仕組みをつくることも重要です。
子ども参加は一度きりではなく、世代を超えて続く社会参加の文化として育てていく必要があります。
8 Preparations
8つの準備
子どもの参加を実践していくためには、活動開始前の準備が重要です。
-
仕組みと体制づくり
子どもが実際に意見を出し、意思決定に関われる仕組みを、組織内(活動するグループの中)にあらかじめ整えます。 -
役割の明確化
子どもとおとなそれぞれの役割を明確にし、関わる人全員で共有します。 -
ルールの合意
話し合いの進め方や意思決定の方法について、子どもとおとながともに確認し、合意形成を図ります。 -
選択権の保障
子どもには、参加するかどうかを自分で選ぶ権利があることを明確に伝え、その選択が尊重される環境を整えます。 -
おとなのトレーニング
伴走するおとなが、子どもの声を尊重する関わり方について学ぶ機会を設けます。 -
状況の理解
子どもの背景や状況を理解するよう努めます。ただし、個人情報の取り扱いには十分配慮し、本人の同意なく共有することは避けます。 -
安全の確保(セーフガーディング)
子どもがあらゆる危害から守られるよう、セーフガーディングの仕組みを整えます。
※セーフガーディングの考え方や具体的な取り組みについては、下記で説明しています。 -
責任の所在の明確化
子ども参加であっても、子どもが参加するための企画の運営はおとなが担うことを明確にしておきます。
Safe Environment
安心して「声」を出せる環境づくり
セーフスペースとセーフガーディング
子どもが意見を表明するためには、「ここでは安心して話せる」と感じられる環境が不可欠です。ここではセーフスペース(安心のための場)とセーフガーディング(安全管理)の両方が重要になります。
セーフスペース(安心できる場)
子どもが自由に発言できる環境をつくるためには、活動の最初に場のルールを子ども自身が考えることが効果的です。
例えば次のようなワークを行います。
子どもたちに問いかけます。
- 「こういう場だったら安心して話せる」
- 「こういうことがあると嫌だ」
その意見をもとに、具体的な行動ルールを作ります。
【例】
- 人の話を最後まで聴く
- 否定しない
- うなずきや拍手で応援する
- 発言を強制しない
このルールは固定ではなく、活動の中でいつでも見直してよいことを伝えます。
そして、参加する子どもたちと合意を得るプロセスを経ることが重要です。
⇒セーフスペースのワークショップの実施の仕方は、フリー・ザ・チルドレン・ジャパンの「チェンジメーカー教育プログラム」に詳細があります。そちらもご覧ください。
チェンジメーカー教育プログラムの詳細を見るセーフガーディング(Safeguarding)
セーフガーディングとは、子どもが活動の中で身体的・心理的・性的・社会的な危害を受けないよう守る仕組み全体を指します。
国際的な子ども支援団体では、すべての活動においてセーフガーディングの方針を設けることが求められています。
子どもを守るべき危害には次のようなものがあります。
- ハラスメント
- いじめ
- 差別
- 暴力
- 性的搾取
- 個人情報の悪用
- オンライン上の危険
子どもの参加を実践する活動では、意図せず子どもを傷つけてしまう可能性もあるため、あらかじめ対策(組織として何を大事にするか/事案発生時にどのように対応するか)を整えることが重要です。
セーフガーディングの基本原則
活動では次の原則を守ります。
-
二人きりの状況をつくらない
- 子どもとおとなが密室で二人きりにならない
- オンラインでも個別通話は原則行わない
-
身体的接触は慎重に
- 不必要なボディタッチを避ける
- 子どもの同意を尊重する
-
権力関係を意識する
おとなと子どもには力関係があります。おとなはその影響力を自覚して行動する必要があります。 -
相談できる仕組みをつくる
子どもが不安を感じたときに相談できる窓口を用意します。 -
オンラインの安全
- SNSでの個別連絡を避ける
- 個人情報を公開しない
- 写真や動画の使用は必ず同意を得る など
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンでは、子どもの安全と尊厳を守るためのセーフガーディング方針を定めています。詳しくは、以下のページをご覧ください。
セーフガーディング方針を見るGuiding Principles
伴走者の基本姿勢
伴走するおとなは「教える人」ではなく、子どもの声を引き出す人です。
基本の姿勢は次の4つです。
聴く / 待つ / 引き出す / 寄り添う
つまり、おとなと子どもが水平な関係で関わることが大切です。
意見を引き出す問いかけ
子どもの考えを広げるために、次のような問いかけが役立ちます。
- 視点を変える:「別の人だったらどう考えると思う?」
- 具体化する:「もう少し詳しく教えてもらえる?」
- 未来を想像する:「このアイデアが実現したら、来年はどうなっていると思う?」
沈黙も尊重する
子どもには
- 発言する権利
- 発言しない権利
の両方があります。考える時間が必要な子どももいるため、無理に発言を求めることは控えます。
多様な表現方法を認める
子どもが声をあげるとき、必ずしも言葉だけとは限りません。子どもはさまざまな方法で表現できます。
- 絵
- 動画
- 写真
- ダンス
- 音楽
- ジェスチャー、しぐさ、態度、目線、表情、行動
その子どもに合った表現を歓迎することが大切です。
Adults’ Commitment
おとなとしての約束
日本社会において、子どもが権利の主体として尊重される社会の実現には、まだ多くの課題があります。例えば
- 参加者の多様性の確保
- 声が政策にどう反映されたかの可視化
- 参加の機会の継続的提供
などです。
だからこそ、より子どもの声が反映される社会の実現に向けて、子どもに関わるおとなたちは活動を通じて学び続ける必要があります。そして、子どもたちが「自分たちの声で社会が変わった」と実感できるプロセスを提供する必要があります。
「世界は変えられる」
子どもたちがそう実感し、社会の当事者として行動していく環境をつくること。
それは、子どもたちのウェルビーイングのみならず、よりよい社会を実現するための最良の道です。
おとなの役割は、その芽を伸ばすための「土壌」を耕し続けることです。
一緒に、子どもたちの声が響きあう社会を育んでいきましょう。
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