【コラム】フィリピン政府は、奉仕者への弾圧を止め、性的搾取を行う者に厳重な処罰を!

フリー・ザ・チルドレン・ジャパンのパートナー団体であり、フ
ィリピンで活動を行うプレダ基金の運営を行っている、シェイ
・カレン神父が執筆したコラムをご紹介します。

http://www.preda.org/fr-shays-articles/deport-the-sex-tourists-not-the-missionaries/

アイルランドでは1万6,000人以上のフィリピン人が暮らし
ています。仕事を持ち、好条件の賃金を稼いでいます。4
,265人が看護師として働き、さらに数千人が介護士、その
他の職業に従事しています。こうしたフィリピン人たちはア
イルランドで歓迎され、信頼され、非常に尊敬されています。
彼らは家族を支えるために、懸命に働いて得た収入をフィリ
ピンに送金しています。ここにいるフィリピン人たちは思いや
りがあり、信頼に値し、自分たちの仕事に精一杯励んでいま
す。そして、アイルランドの人々から愛されています。アイル
ランドの医療制度において、このようなフィリピン人たちは極
めて重要な働き手です。彼らの多くは敬虔なキリスト教徒で
あり、礼拝にも出席します。多くのフィリピン人教会で、人々
はフィリピン人聖歌隊に心動かされています。海外に暮らす
フィリピン人イスラム教徒たちも、熱心にモスクに通っています。

こうした海外の労働者たちは、フィリピンにいる家族と共に
暮らせないことに耐え、自分たちを犠牲にして生活費を稼
ぎ、子どもたちや親を支えています。フィリピン経済の成長
率はおよそ6.4%だと言われています。 しかし、フィリピンの
失業状況は悲惨です。何百万人ものフィリピン人たちが労
働に見合った賃金の仕事を求め、故郷を離れることを余儀
なくされています。このような現状では、経済成長率の数値
が、フィリピンの経済の実態を反映しているとは言い難いと
言わざるを得ません。

嘆かわしいことに、中東では、たちの悪い雇用主からの虐
待や搾取に苦しむフィリピン人たちがいます。彼らは人身
取引や性的虐待、さらには殺人の犠牲者となっています。
クウェートのフィリピン大使館にある保護施設には、大使
館職員によって雇用先から救出された600人のフィリピン
人たちが生活しています。この動きが物議を醸し、クウェ
ート当局の怒りを買うこととなりました。
できるだけ早くクウェートとフィリピンの間で合意がなされ、
クウェートで働く17万人のフィリピン人の権利と尊厳が守ら
れ、尊重されるようになることを願います。海外で働くフィリ
ピン人労働者たちの権利を政府が保護することは非常に重
要です。世界中のどの国にもフィリピン人労働者は存在しま
す。彼らは広く受け入れられ、尊敬される存在となっています。
海外で働くフィリピン人たちはおよそ140億米ドルを、毎年フィリ
ピンに送金しています。フィリピン政府とフィリピン経済の頼み
の綱となっているのです。

フィリピンにいる外国人の多くは、多国籍企業やフィリピン
企業の従業員、あるいは恥も外聞もなくフィリピン人たちを
搾取するセックス・バーやクラブへの投資家たちです。後者
は、政府当局による麻薬がらみの強制捜査や救出作戦に
おいて、処罰されない状況を楽しんでいるように見えます。
クウェートにいる女性たちは、クウェート当局のすぐ目の前
で救出されました。ここフィリピンでは、若いフィリピン人女
性や子どもたちに対する虐待や搾取、薬物使用は多くの
場合、容認されます。犠牲者を救出し、そこに手を差し伸
べ行為を行っているのはたいてい非政府組織です。

フィリピンにいるその他の外国人は、フィリピン人に奉仕す
るためにやってきた宣教師たちです。宣教師たちは無報酬
のボランティアで、母国で家庭を築き、子どもを持ち、親族
と暮らすといったといった当たり前の幸せを諦めフィリピン
に来ています。宣教師たちは、厳しい状況にある地域で虐
げられ、虐待を受け、貧困に苦しむフィリピン人たちへの愛
と一体感から、人生を捧げ、貧しい人々や不公平な扱いを
受けている人々のために無報酬で働いています。 彼らは
まさに命懸けで仕事をしています。ここ何年かの間に殺害
されたり、誘拐された者もいます。搾取されたり虐待を受け
ている人々や、人権侵害の被害者たちを守る活動に従事
していることは尊いことであり、もっと知られるべきです。こ
れは政府が行うべき社会政策ですが、現実にはそういった
政策がきちんと執り行われていません。このような政府の手
が届いていない分野に、慈悲の精神を持ったボランティアた
ちが、思いやりを持って様々な諸問題と向き合い、支援活動
にあたっています。このような人びとが、「政治活動」に関与し
たとして汚名を着せられるという、信じ難い現実があるのです。

27年間、貧しい人々のために働いてきた、71歳のオースト
ラリア人シスター・パトリシア・フォックスは、フィリピンにあ
るシオン聖母修道女会の修道院長です。彼女は数週間前、
移民局の職員によって逮捕され、取り調べと尋問のために移
民局へと連行されました。宣教師としてのビザが取り消され、
30日以内に強制送還されることになりました。人権擁護の活
動や、弾圧を受けているミンダナオ島の農民や先住民たちの
権利擁護を訴える活動をしていたことを理由に、「政治活動」
に関与したとして罪に問われました。

シスター・パトリシアは、人権や、ミンダナオ島で抑圧されて
いる農民や先住民たちの権利を擁護する活動をしてきまし
た。それを「政治活動」への関与であるとして罪に問われま
した。同時に彼女は、強制送還の処分にすると脅されました。

野党議員たちは次のような声明を発表しました。「貧しい
人たちに手を差し伸べることは犯罪ではない。農民の福
祉向上や人権を擁護するための平和的な活動に参加す
ることは、法に違反しない。」議員たちは、シスター・パト
リシアの即時釈放を求めました、その後彼女は釈放され、
強制送還されることもありませんでした。

貧しい人たちに奉仕し、人権侵害に抗議することが犯罪
とみなされ、政治活動であるとして不当に汚名を着せら
れる状況が許されるのであれば、フィリピンの民主主義
は死んだも同然です。民主主義の死の先に待っている
のは、暴政であり、更なる弾圧です。

慈悲と思いやり、正義を信じる宣教師たちを突き動かして
いるのは、信仰です。そうした人々は自らの信仰に基づき、
弾圧や侵害に立ち向かい、その善悪に対して堂々と声を挙
げています。しかし、これは信仰の有無を問わず、人のある
べき姿です。私たちは、不正行為に立ち向かうことを恐れて
はいけない。悪事を働く者たちに屈してはいけないのです。

移民局が取り調べるべきは不法滞在している外国人であり、
役人たちを賄賂で買収して、セックス・バーを運営し、何のと
がめもなく若い女性や未成年者たちを搾取している外国人
たちです。貧しい人々に奉仕する宣教師たちではありません。

(訳者: Mikikoさん)

カレン神父と、プレダ基金の子どもたち