【コラム】ネット上の児童ポルノという名の子どもたちへの人権侵害の撲滅に向けて、成果を上げつつある警察の取り組み
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンのパートナー団体であり、フ
ィリピンで活動を行うプレダ基金の運営を行っている、シェイ
・カレン神父が執筆したコラムをご紹介します。
http://www.preda.org/fr-shays-articles/police-win-against-online-child-abusers/
現在多くの国々で、インターネットを使ってペドファイル(子ど
もに性的な興味を抱く人)に対する捜査が行われており、警
察は素晴らしい成果を上げています。ペドファイルやポルノ
製作者たちがダークウェブに身を隠し、暗号化ソフトを駆使
しているにもかかわらずその検挙件数は増えています。ペ
ドファイルやポルノ製作者たちオンラインで子どもたちを虐
待し、何千枚にも及ぶ子どもたちの写真をインターネットを
通じて互いにやりとりしています。ペドファイルたちはこれに
刺激されて煽られるように、ネット上の空間から現実世界に
着眼点を移して、フィリピン国内外で、性的虐待の対象とす
る子どもたちを探すことに翻弄するのです。
わずか6歳あるいは7歳のフィリピン人の子どもたちが、
「隠れ家」ともいえる場所に連れていかれる事件があり
ました。子どもたちは性的虐待を受け、その模様はカメ
ラで撮影されネットを通じて生配信されました。その様
子を配信で見て快楽を得ていたのが、53歳でバージニ
ア州東部出身のアメリカ国籍の男、ドウェイン・スティン
ソンです。スティンソンは、電子決済で女たちに金を支
払い、その女たちに子どもたちに対する虐待行為を実
行させていました。スティンソンは、児童ポルノ制作、児
童虐待の場面を写した画像の作成、及びその画像を保
存した容疑で起訴され、本人も容疑を認めています。判
決宣告は、今年の8月に行われます。フィリピン警察は、
虐待行為を実行した女たちの発見には至っていません。彼
女たちは、政府認可の下でセックスバーやサイバーセックス
の隠れ家がで運営できる、まさに性的誘惑や商機に溢れた
この社会で、何の処罰を受けることもなく平然と暮らしている
のです。
今年はじめ、ダブリン在住の26歳のアイルランド人の男、
マシュー・ホーランが逮捕、拘束されました。ホーランは、
幼いアイルランド人とアメリカ人の女の子たちに対してイ
ンターネットを通じた性的搾取を行なっていた容疑で有罪
判決を受けたペドファイルです。被害者となった女の子の
なかには、わずか9歳の子もいました。性的虐待を受けて
いる子どもたちの様子を撮影した何千もの画像が自宅で
発見されました。裁判所命令を順守することを条件に、
2年の執行猶予付きの懲役7年6ヶ月の刑を宣告されま
した。将来的に、アイルランドの性犯罪関連の刑法が改
正されて、こうした裁判所命令に海外渡航禁止が含まれ
ることを願います。
フィリピンで、4年半前に、児童虐待と人身新売買の容疑で
起訴されたアメリカ国籍の男が、4年の歳月を経てようやく
容疑を認めました。プレダ基金は、これまで被害にあった
女性を支援する活動を行い、男への法による裁きを求め
てきました。この男がアメリカ国籍であることから治外法
権が適応され、アメリカで起訴されることになるものと思
われます。
2017年12月、200人ものペドファイルが、オンラインで子ど
もを虐待した容疑でイギリス国家犯罪対策庁(UK Nationa
l Crime Agency, NCA)に逮捕されました。特定された被害
者250人は、ネット上で10代と身元を偽っていたペドファイ
ルたちに操られ、罠にかけられました。ペドファイルたちは
そうした10代の被害者たちを言葉巧みに誘惑し、性的な露
出のある写真を送らせました。そして、Facebook等にその
写真を投稿すると脅迫し、さらに写真を送るよう子どもたち
に強要していたのです。
昨年の秋、イギリスのダラム在住で32歳ポール・レイトは、
児童に対する性的暴行の容疑で懲役16年の有罪判決を受
けました。この事件は、何千マイルも離れた距離を跨いで起
きた事件でした。レイトンは、14歳の少年を騙して裸の写真を
送らせました。その後少年を脅し、1歳になる姪に対する、オン
ライン上で性的虐待行為を行うよう繰り返し強要しました。少年
は警察に逮捕されました。一方レイトン は警察に対し、圧倒的
な力を盾に少年たちをはじめとする被害者を服従させることを
楽しんでいたと話しました。被害者たちの多くはオーストラリア
やカナダ、アメリカ、イギリスに住んでいました。
NCAの担当主任Will Kerrによると、インターネット上で児
童ポルノ画像をやりとりした容疑で、毎月400人もの容疑
者が逮捕されているそうです。 民間の子ども保護団体
が戦略を練った上で小児性愛者たち日々対峙していて、
それが逮捕者の増加へとつながっています。民間の「ペド
ファイルハンター」たちが集めた証拠を採用している警察
もあります。「ペドファイルハンター」はおとりを使い、10代
の若者のふりをしてネット上に忍びこみ、ペドファイルたち
の気をまずひきます。そしておとりがペドファイルの言いな
りになるような状況を作り出していくのです。その後、記録
した犯罪の証拠(電子メールやチャットその他集められた情
報)を警察に提供するという流れをとっています。BBCの調
査によると、イギリスでは「ハンター」たちによってもたらされ
た情報に基づき、警察が150人の容疑者に対する捜査がこ
れまで行われているそうです。警察が捜査を行い、被疑者
の特定につなげていくために、そのような情報を活用する
機会が増えています。
さらに攻撃的な「ハンター」も存在します。自ら容疑者を特
定し、容疑者と直接対決し、その様子をFacebookでライブ
配信して、容疑者の姿を世界に晒そうとしている「ハンター
」たちなどです。これはリスクを伴う危険な行為です。追い
込まれた容疑者は、暴力的な行為に及ぶかもしれないで
すし、そのような接触は警察に任せるべきです。またある
意味で、親たちにも注意が足りない部分があります。我が
子が風呂に浸かる姿や、裸の状態でビーチやプールにい
る姿を写真に撮り、それを誰でも見ることができるSNSに投
稿するといったような行為は、軽率であると言わざるを得ま
せん。ペドファイルたちはそうした写真にアクセスし、その写
真に写る子どもをターゲットにするかもしれないのですから。
子どもたちにもプライバシーの権利が保障されるべきなのです。
ネット上での児童虐待をなくすためには、予防策を講じるこ
とが最も大切です。ネット上での子どもたちの権利と尊厳を
守るためには、最終的には親が気を配り、警戒しなければ
なりません。相手の正体、素性を確認することができない場
合、絶対にその相手とネット上で関わりを持つべきではない
ということを、子どもたちに教える必要があります。
子どもたちには、ネット上で知り合った、あるいは他に誰も
いないところでしか会ったことのない人物に自分たちの写
真を送るようなことを絶対にさせてはいけません。多くの若
者が相手の要求に応じてしまい、SNSで晒し者になることを
強要される事態が起きています。なかには自殺に追い込ま
れた若者もいます。若い人たちとその親たちは、互いに信頼
関係を築き、情報を共有し、疑わしい人物については警察に
通報するということをしっかりと心がけるべきだと思います。
(訳者: Mikikoさん)