インドの農村部で起きている「水の革命」
これまで、水の衛生状態が良好とはいえなかったインド・ラジャスタン州の農村部。
しかし、インフラの整備や現地の村びとの特段の努力により、その状況に変化が起きています。(清田)
ランバ・バイは、インド北部にあるラジャスタン州農村部の彼女の家を出発し、10歳の時から毎日してきた旅に今日も出ます。45年間、彼女は頭に粘土の瓶を乗せて運び、それらを水で満たしに村の井戸まで歩いてきました。
WE Charity(フリー・ザ・チルドレン)は現在、飲む前に水を煮沸するというもう一歩のステップ加えるようランバに頼んでいます。これは水系感染症を撲滅するための包括的な支援の一部です。
ランバのような女性は往々にして、このような支援事業には懐疑的な見方をしていることも多いです。
ランバには3人の成人した子どもがいます。彼女は最初、家族が病気になった時にそのことを知るだけでした。
その病気の発生源が水源によるものかもしれないとはわからなかったのです。
通訳を介してランバは頻繁な屁、食欲減退、熱と慢性的な胃痛を説明します。
そして、彼女はこの辺りで最も一般的な症状を指すswargh、メーワーリ語で「重苦しい」という意味の言葉を用います。
それは、この地域の様々な胃腸の病気一切合切のことです。
水に関する支援事業は、ただ単に井戸を掘って深くする以上の、包括的かつ重層的なものでないといけません。
インフラの整備は重要ですが、それだけでは人々の行動を変えないからです。
ラジャスタン州は砂漠の地帯で、地下水位が低いという実情もあります。
井戸により水の供給は増加しますが、その水を飲んで安全だという保証はありません。
しかし、水の煮沸が効果的だという事実はほとんど信用されておらず、そうすることで命が助かるかもしれないことはほとんど知られていません。
ここで、村びとが「重苦しい」と呼ぶ事態に共通する症状は、多くの場合水系感染症に相当します。
下痢、赤痢、黄疸そして腸チフスは、ラジャスタン州の水源内にいるバクテリアを通して広がります。
下痢性疾患は、世界で2番目に多い5歳以下の子どもたちの死因です。
腸チフスも、治療されないままだと命取りになりかねません。
7人のランバの家族はたくさんの水を使います。彼女は1日4回、朝に2回と夜に2回これらの瓶を満たしにいきます。
これは彼女の息子とその妻、彼らの子どもたちの渇きを癒し、多くの家事に使われる水です。「私はヤギのため、牛のため、飲み水、風呂、衣類の洗濯のために水を使います」とランバは語ります。
水道が配管されず、最寄りの食料雑貨店からも遠いため、村は天然水域、主に地下水井戸に頼っています。
このランバの家の近くの井戸は修復されることになっています。
WE Charityからの資源と機材によって、彼女の村は井戸をダイナマイトで爆破し、重い岩石を運び出す予定です。
これは井戸の深さを増させます。従って水の供給を、特に雨の止む夏期に増やすでしょう。
水を綺麗にするインフラの整備に加えて、WE Charityは啓発や教育も提供しています。保健指導員は支援地域で雇われて村から村へ戸別訪問し、女性と家族たちに飲み水を沸かさせています。
また彼らは村の仲間に、水系感染症、手洗いと衛生の重要性、そしてもちろん水の煮沸について参加者へ教える無料の訓練プログラムに出席するよう募集しています。
2015年、WE Charityの保健指導員がここランバの家に来て、彼女を研修会へ誘いました。
ランバは出席しました。彼女は、汚染された水の中のバクテリアと嘔吐、熱など彼女の仕事の妨げとなっていた症状を結び付け、水の煮沸を始めました。
「もう一歩」は今や、ランバが日々守っている習慣へ恒久的に足されています。井戸から家に帰ると、彼女は水を粘土の瓶から耐火鋼の中へ注ぎます。
2年間、彼女は家族の飲み水を煮沸し、明らかに健康になってきました。「きれいな水は、私の家族に普通の幸せな生活を送らせてくれます」とランバは説明します。「彼らは飲んだ後も具合が悪くならないの。」
煮沸の過程をより簡単にするため、ランバはchulhaという煙の出ないコンロを家に導入しました。
彼女の村では、ほとんどの調理が煙突の無い家屋での焚き火で行われます。
このために、水の煮沸は肺を煙で脅かし、余分に薪を使う雑用となるのです。
ランバは村の中で、初めてWEの新しい無煙コンロを使った女性であり、現在は友人たちにも変えるよう勧める提唱者です。
言葉は広がっていきます。
レルキ・バイは35歳で、近くの村の出身です。ヤギの乳を絞るために、彼女は毎日5時半に起きます。
午後は畑で働き、夕食を作る前には動物たちに水をやります。それから寝る前に食事です。
ここには3人の家族が住んでいます。レルキとその夫、彼の二人の兄弟、そして彼らの妻と子どもたちです。
レルキは煙突も、水の煮沸という余分な仕事も欲しくありませんでした。「私はそのコンロは大きすぎると言いました。私の古いコンロは小さく、一口だけのものです。」
レルキは、家族が腸チフスと黄疸に苦しんでいたことに言及します。
彼女の夫ナリングは片道15キロの医者のところへ定期的に行き、胃のむかつきを鎮めるために薬をよく買いました。
煙は別の意味でも冷酷でした。「私たちの眼にしみ、壁は黒くなりました」と彼女は言います。「台所器具も真っ黒です。私たちの肺は煙でいっぱいでした。」ひょんなことから、レルキはWEの保健セミナーに参加し、その後、無煙コンロを取り入れました。
レルキは新しいコンロで、外へつながる煙突と2口のバーナーを試してみました。
「私が最初に無煙のchulhaを使って壁が黒ずまないのを見たとき、このコンロが前のよりも良いことがわかりました」と彼女は言います。「家の中に暗くて黒い煙はもうありません。」
家族の健康はすぐに改善しました。夫はもはや、薬を買いに街まで旅することはありません。
無煙のchulhaは伝統的なコンロの2倍場所をとります。
しかしそれだけの価値があります。同じ量の薪を使いながら、レルキは水を沸かすのと料理を同時にできます。彼女は家族の昼食用に毎日20枚までチャパティを作ります。
夕食時にはレンズ豆か野菜を一つの口で調理し、飲み水はもう片方で沸かし、とても時間を節約できます。
「私は手早く料理します。」
WE Charityの無煙chulhaプログラムは2014年に始まり、それ以来700の煙突が無料で導入されてきました。
つまり700世帯です。低く見積もって4人家族だとしても、2800人が調理中きれいな空気を吸っていることになります。
これはすぐにもっと増えるでしょう。「友人皆に、新しいコンロを試して水を煮沸するように伝えます」とレルキは言います。
今度は友人たちがその友人に伝え、彼女たち自身の家族の健康が改善していくでしょう。
(原文記事執筆: ケイティー・ヘウィット 翻訳:翻訳チーム 中根葵 文責:清田健介)