自分のこころを大切にしながら、幸せに生きていける社会をめざして
多くの人が抱えている、「こころの健康」の問題。しかし、この問題はタブー視されがちな問題でもあります。
今回ご紹介する若者は、その風潮を変えようとしています。(清田)
3年前、Delicia Raveenthrarajanは、ベッドからほとんど起きあがれない状態でした。
中学校時代に不可解な不安や悲しみの発作として始まったものが、徐々に悪化していったのです。
14歳の頃には、彼女は、一日に何度もパニック発作を起こすようになっていました。
でも、そのことをだれにも相談しませんでした。
Deliciaは、内には心の問題を抱えていましたが、外では優秀でした。
彼女は、8歳の時から、WE(フリー・ザ・チルドレン)スクールプログラムでボランティアをしてきました。
彼女は、北米中の教室や企業で、女子教育に対する自分の情熱を講演していました。また、
練達のミュージシャンとして、技術に磨きをかけました。
彼女は、歌ったり、ピアノやバイオリン、チェロを演奏したりしながら、学校ではオールAを取っていました。
でも、そういった素晴らしい成果を出す日々に対して、ちょっとうまくいかない日が数日あったものです
「それは好調・不調の両極端のようで、中間がありませんでした。」と、彼女は言います。
Deliciaは、自分の難題をみんなと共有することには消極的でした。
彼女の周りのみんなは、楽しそうに見えましたし、彼女は、目立ちたくありませんでした。
それで、彼女は、自分のやるべき事に没頭して、元気であるふりをしようとしました
13歳の時、Deliciaは、カナダ、オンタリオ州トロント市内のスカボロー地区で、あるWE Day形式のイベントを企画したことがありました。
それは、ケニアの学校建設のために10,000ドルの資金を募るというものでした。
1年後の2015年に、彼女は、スタディーツアーに参加して、その学校を訪れ、自分がやったことの大きな成果を目にしました。
Deliciaは、Oleleshwa女子中学校で、その生徒たちに会い、固い友情を結びました。
少女たちは、かつては様々な資源に乏しかったこの農村の村で、学校に通うために克服した難題についての物語を共有していました。
Deliciaは、彼女たちの誰もが、一人でそれをやったわけではないことを理解しました。
生徒たちは、自分たちの中の力に気づいていたのですが、自分たちの周りの人たちにも頼っていたのです。
「この旅で、私のものの見方は本当に変わり、自分が価値があると思えるとに集中するようになりました。また、私の幸せは、それらの価値あるものの一つであるということが分かりました。」
旅から戻るとすぐに、Deliciaは、音楽の先生、Dr.Tony Leongに打ち明け、自分の悩みを相談しました。
彼女は、勇気を振るって、両親、学校のスタッフや友人たちに、自分がこれまで耐えてきたことについて話をしました。
彼女の家族や友人たちは、協力的であり、彼女は、助けを求めることが新しい戦いになるだろうとは、全く思いもしませんでした。
Deliciaは、待ちに待った末、力量の無い専門家と面談することになったのです。
彼らは、明白で時代遅れでさえある症状の特徴、つまり、社会性やコミュニケーションスキルに乏しいといった症状を探そうとするだけでした。
彼女は、こういった特性を何も示さないので、彼女の不安は、いつも見過ごされていました。
彼女の記憶によれば、「実際、私を診た医師の一人は、『うーん、あなたは自殺するようには見えないし、健康なはずです』と言い、その時点で診察は終ってしまいました。」
「その医者からは、『私たちの診察システムでは、患者が、ギリギリの状態であるとういう前提で、治療することになっています』と言われましたが、私はそれには納得できませんでした。どうしてそんなにひどくなるまで待つ必要があるでしょう?」。
Deliciaは、若い活動家としての自分の経験を支えに、主張しました。
「WEの活動の時、一人の有色人種の若い女性として、私の声はいつも聞いてもらっていました。私は、自分の意見は価値があるということをWEを通じて知っていたので、どこでも必要な時は声を挙げて良いと思いました。」
現在、Deliciaは、回復に向けて、前向きに生きる道を歩んでいます。
彼女には、定期的に会って、良い生活状態を維持することに、これまでより熱意を注いでくれる医師が付いています。
彼女は、こころの健康に対する権利擁護者でもあり、ネットメディアのTeen Vogueやthe mightyに、「立ち直る力」についての記事を書いています。
「自分の怒りを情熱に変えて、状況を変えるために声を挙げ始めたのです」と、彼女は言います。
(原文記事執筆: Chinelo Onwualu 翻訳:翻訳チーム 山下正隆 文責:清田健介)