「道なき道」にそびえ立つ学校

人里離れたハイチのマナク村。道路も市場もありません。で

も人里離れたこの村に、生徒や教師など、多くの人が放つ輝

きで満ち溢れている学校があります。(清田)

https://www.we.org/stories/education-comes-to-rural-haiti/

 

モスリンは一際目立つ5年生です。成績のため?それもそ

うですが、それ以上に彼女の信念のために。彼女は19歳です。

 

彼女は家庭の経済的事情で、何年も学校への入学、退学を

繰り返しています。

 

「おばあちゃん」とクラスメートからからかわれても、そのこと

を気にする様子はありません。

 

モスリンはハイチのキャンパスのマンゴーの木陰に座り、教

育の必要性を私に説きます。「教育を受けなければ、人とし

て存在していないのと同じです。」彼女は言います。「人が受

け取ることのできる最も価値のある資産、それは学校教育です。」

 

モスリンと彼女の8人の兄弟は、ハイチの山奥の丘にたた

ずむマナクという村で育ちました。ここへの道路のアクセス

はありません。市場もありません。診療所もありません。し

かし、学校があります。

 

この学校に行くために教師たちはハイキングをします。3時

間、1本道、舗装されていない細い道を登ったり下ったり、曲

がった岩棚、曲がった緑の草の台地。3時間!1本道!熱心

な教育者たちは、日曜日の夜遅くか月曜日の朝早くに行進し

ます。そして学校のそばの宿泊施設に滞在し、学校が終わる

金曜日に帰省するためのハイキングをします。

 

WEビレッジ(フリー・ザ・チルドレン)がこのような人里離れた

山奥の学校を再建したと最初に聞いたとき、私は不思議に

思いました。「教師たちはどのようにして通うのか?」「誰が

務めるのか?」

 

その答えを見つけるために教師たちの足跡をたどりました。

 

週半ばの夜明け、私はハイチの同僚とともにロバと並んで

通れるくらいの幅の泥だらけの道を出発しました。豆の苗

を7度の角度で植えている農夫たちの横を過ぎ、炭の荷を

町の市場へと運ぶロバの一列縦隊の横を通り過ぎました。

 

8キロ以上歩いた3時間後、地面は水平になりました。そし

て角を曲がったところに、明るい色で塗られた建物が、青

々とした田園風景の中から現れました。そこでは青と白の

ワイシャツを着た子どもたちがかけっこをしていました。風

や鳥の歌声が子どもたちのおしゃべりや教師たちの声に

変わりました。

 

外から来た者にとってそれは何もないところにひょっこり現

れたように感じました。でも、それは、紛れもなく、モスリン

の母校です。

「私は、本当だったらとっくの昔に卒業してなきゃいけないん

です。」モスリンは淡々と話します。学年がはるかに遅れてい

ることについて嘆いてはいません。「家から歩いて通える距離

の学校があるのだから、恵まれている」と言います。彼女のお

母さんは学校には行きませんでした。そして、お父さんは5年

生までしか行きませんでした。ですから、家族の中では、モス

リンが最も「高学歴」ですが、それを当然だとは思っていません。

 

農家である父親がモスリンの学費を払う余裕がなかった時

は、彼女は自ら考えて行動を起こしました。家にあった少し

のお金でクッキーやキャンディを買い、間に合わせのコンビ

ニエンスストアをつくりました。そしてそれらを売って制服代

にしました。

 

モスリンの教室は明るい紫色に塗られています。生徒たち

が選んだ色です。すぐ隣の教室はにぎやかな4年生にふさ

わしい派手なオレンジ色です。教室の上の屋根はコンクリ

ートの石で造られ隣の教室の屋根とひとつづきになっています。

私たちが着いたときには、新しい教室の建築資材はWE

ビレッジ のチームのメンバー、マナク村の子どもたちの

お母さんやお父さん、働き物のロバたちによって丘の上

まで運ばれていました。

 

WE ビレッジがマナク村とパートナーを組む前は、全てのク

ラスが一つの長細いごちゃごちゃした木造の建物の中で学

んでいました。4年生担当のプレセンデュ ・ジルナー先生が

説明します。学年は1枚の布で仕切られ、それぞれの学年

の授業の声がお互いの声をかき消していました。また、教

師の数が足りていなかったため親たちは子どもたちを学校

に行かせようとしませんでした。

 

「今は子どもたちは快適に座ることが出来ます。教室に詰

めこまれていません。」と彼は言います。「親たちは子ども

たちを気持ちよくここに送りだします。彼らは尊敬と誇りの

気持ちを持って子どもたちをここに通わせます。」

 

一流の教室がある新しい学校は、マナク村以外の地域

に住むに住む生徒たちも惹きつけました。さらにきちん

とした資格を持つ高いスキルを持つ教師たちも、生徒た

ちと同じく新しい学校に惹きつけられ、この学校での仕事

を引き受けました。

 

ジルナーは、「はるばる泥だらけの道を通って良く来て下さ

いました!」と私にお礼を言います。私は感謝される理由が

ないので思わず苦笑いして返してしまったのですが、ジルナ

ーは真剣な顔で、両手で握手を求めます。「ここに人が訪ね

てくることはめったにありません。我々がここで話したことを、

記事にして発信してもらえることがどれだけ心強いか…」彼

はそう言って にこやかに微笑みます。そして希望に満ちた

ように両腕を広げて上に上げます。

 

可能性、どんなことでも可能であるという感覚が、まるで地

平線が丘につながるように無限に広がっています。決して

諦めない19歳の生徒は、その象徴です。彼女と彼女のす

べての仲間の同級生のために、この道なき道にそびえた

つ学校は存在しなければならないのです。

 

(原文記事執筆 :ワンダ・オブライエン 翻訳:翻訳チーム

文責:清田健介)