【開催報告】子どもWEEKEND2025 分科会⑫「多様な声を活かす学校や地域とは」
2025年9月26日・27日、日本財団主催「子どもWEEKEND」が開催されました。子どもの人権、家庭福祉、支援のあり方を考えるこの催しにて、フリー・ザ・チルドレン・ジャパンは2日目の分科会⑫「多様な声を活かす学校や地域とは」の司会進行を担当しました。
本分科会のテーマは、「当事者の声×おとなの責任がつなぐ、未来への提案」。子ども自身の語りと、子どもアドボケイトの視点を通して、学校や地域のあり方を見つめ直す90分となりました。
▼登壇者とモデレーター
- ナジラ・レワルさん(名古屋市立中学校1年生)
※通訳:「希望の学校」代表 駿渓(スルタニ)トロペカイさん
- 髙木萌伽さん(Leaf College Project副代表、元FTCJ子どもアンバサダー)
- 川瀬信一さん(一般社団法人 子どもの声からはじめよう 代表理事)
- モデレーター:中島早苗(認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン 代表)
▼分科会の冒頭では…
まず、モデレーターの中島より、フリー・ザ・チルドレン・ジャパンの活動紹介がありました。「子どもは助けられるだけの存在ではなく、自らが変化を起こす担い手です」というモットーのもと、子どもと共に事業を運営していることが語られました。

続いて、髙木萌伽さんがLeaf College Projectの活動を紹介。子ども自身が子どもの権利を伝える取り組みを行っていること、そしてその背景にある「知られていないことへの違和感」が共有されました。

ナジラさんからは、アフガニスタンでの教育の制限、日本に来て感じた驚き、そして中学校に通える喜びが語られました。特に日本で驚いたことは「女性が自由に移動できること」や「女の子でも中学校に通えること」だったそうです。

川瀬さんからは、子どもアドボケイトとしての活動や、子どもが大人のパートナーとして尊重されるための仕組みづくりの必要性についてお話がありました。
▼「声をあげる」ってどういうこと?
クロストークでは、「声をあげる」ことの意味について、登壇者それぞれの視点から語られました。
- もかさんは、声をあげる前の不安や、声をあげたことで生まれた変化について共有しました。
- ナジラさんは、「今日こうして話すことができて嬉しい」「安心して話せる場があると心強い」と語りました。
- 川瀬さんは、「どんな言語でも、どんな背景でも、子どもの声は大切」と強調し、子どもが安心して過ごせる地域づくりの必要性を語りました。
▼今、声をあげたいこと
もかさんは、「子どもの権利が学校で教えられていないこと」への問題意識を改めて語り、子ども自身が権利を伝える活動への想いを共有しました。子どもが子どもの権利の内容を理解しその存在を知って初めて、子どもの権利を使えるようになることを自身の経験からも共有がありました。
ナジラさんからは、「学校に行けることは嬉しいけれど、日本語がわからず授業が理解できないことへの不安」が語られました。また、「その悩みを誰かに伝えたことがあるか?」という問いには、「聴かれたことがないので、誰にも相談したことがない」と明かしてくれました。
ナジラさんやもかさんの言葉から、子どもが困っていてもそれを周囲に伝えることの難しさ、そして伝える場の少なさが浮かび上がりました。
▼見えてきた課題と学び
ナジラさんの勇気ある発言を通じて、「日本では海外ルーツの子どもへの教育支援が公的にほぼない現状」や、「年齢と学年が固定されている日本の制度が、個々の学びに合っていない」という課題が見えてきました。
カナダやドイツでは、移民として生活する子どもに対して、言語習得の支援や学年配置の柔軟性など、状況に応じたサポートがあることも共有され、日本が学ぶべき点があることが明らかになりました。
▼分科会を終えて
登壇者お一人おひとりの言葉と想いには、子どもの権利が実現されるための大切なヒントが数多く込められていました。
今回の分科会で交わされた声が、どの子どもも取り残されることのない社会づくりへの一歩となることを、心から願っています。そして、子ども自身が語る言葉が、これからの学校や地域づくりの中心に据えられていくように──。
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンとしても、今後も多様な団体や地域の皆さまと手を携えながら、子どもたちの声が活かされる社会の実現に向けて、歩みを進めてまいります。
最後に
今回、ナジラさんとの出会いのきっかけをつないでくださった、海外ルーツのある子どもたちへの支援に取り組まれている神田すみれさんに、心より感謝申し上げます。
神田さんの温かなご協力があってこそ、今回の分科会にてナジラさんの大切な声を届けることができました。改めて、深く御礼申し上げます。
(画像:右から神田さん、もかさん、スルタニさん、ナジラさん、川瀬さん、中島)