希望の種:コンゴ民主共和国の紛争下にある事業地域の現場から
事業報告/支援地域レポート

希望の種:コンゴ民主共和国の紛争下にある事業地域の現場から

私たちフリー・ザ・チルドレン・ジャパンが展開するコンゴ支援事業の現地パートナーで事業責任者のミシェル・チクワニネ氏から活動レポートが届きました。ミシェルの思いの詰まったレポートをぜひお読みください。

– 本レポートは、現地で連携して活動している団体PRWOP(Park Rangers Widows and Orphans Project)の公式ウェブサイトに掲載された英語記事をもとに、日本語でお届けしています。

 

希望の種:紛争下にある南キブ地域開発プロジェクト(SKCDP)の現場から

2024年7月21日、6歳の時以来訪れていなかったブカブ(コンゴ民主共和国東部に位置する南キブ州の州都)に降り立った時、圧倒されると同時に、胸の奥に染み込むような懐かしさが入り混じった気持ちになりました。これは単なるプロジェクト視察ではありませんでした。私にとっては、帰郷だったのです。
 

私はそこで、3歳の時以来会っていなかった従弟(いとこ)のミシェルと再会しました。彼はSKCDPのプロジェクトマネージャーの一人です。その空気、匂い、通り、すれ違う人々の声——そのすべてが、祖母や父の記憶を呼び起こし、今も私の中に生き続ける絆を呼び覚ましました。
 

私は最初のトレーニングセッションから、一緒に働いている人たちの喜びを感じました。

 

女性たちは最前列に座り、役に立つ情報を少しも聞き漏らすことのないよう熱心に聞き取ろうとしていました。その姿が今でも心に残っています。中でも、ナビントゥという若い女性が印象的でした。彼女は夫を亡くし、7人の子どもを一人で育てなければならなくなったばかりでした。
 

最初、彼女は静かにやって来て、何も話さず、ただじっと見つめていました。私たちは彼女に袋と種、そして園芸道具を渡しました。——けれど私たちが何よりも彼女に届けたかったのは、彼女が再び希望を見出す手助けです。
 

数ヶ月後、研修の成果を誇らしげに披露する彼女の写真が届きました。彼女の笑顔は、言葉以上に多くのことを語っていました。戦争に傷ついた土地でも、命は芽吹くのだと——その笑顔が教えてくれたのです。

           

左:種子を受け取る様子    中央:成長する作物       右:収穫された作物

 

私は、多くの思い出と共にこの訪問を思い起こします。一緒に昼食をとったときの笑い声、幼いときに祖母から聞いた、懐かしい言葉の数々。
最終日、農家の人々は歌い踊り、ただ自分たちの存在が認められ、声が届いたことを祝いました。

左:道具と種子を受け取るSKCDPグループ

中央:土壌の栄養を改善するためのフィールドトレーニングの様子

右:種苗場開発のための研修

 

カナダの支援団体「Gardens of Hope」の寄付者であるチャールズさんが、私を事業地まで車で送ってくれました。彼は車窓から広がる肥沃な土地を見つめながら、「この豊かな大地から、戦争がどれほど多くのものを奪っていったか」と、悲しげに語りました。その言葉は、まさに真実でした。
 

私が衝撃を受けたのは、村々に若い女性たちの姿が目立つ一方で、若い男性たちの姿がほとんど見られなかったことです。彼らは連れ去られ、避難を余儀なくされ、あるいは——もっと深い悲しみの中にあるのかもしれません。
 
そして、再び戦争が勃発しました。
 
インゲン豆を植えていた農民たちは、季節の雨が遅れて降ったことにより起きた壊滅的な洪水により、一気に豆を失いました。ようやく畑も人々も立ち直りかけた頃、M23の武装勢力現れ、ブカブとその周辺地域を襲撃したのです。
 

農家の中には家を捨てて逃げるしかなかった農民もいれば、私たちが提供した種子や農具など、持ち物を盗まれた人もいました。若い男性たちは、抵抗勢力に関与したと疑われ、拉致されたり命を奪われたりしました。

私たちのリーダーの一人であるブササが、自宅の外で銃声が聞こえたという音声メモを送ってくれました。その恐怖に満ちた声を聞いた瞬間、私は1997年から1998年にかけての記憶に引き戻されました。子どもの頃、同じような銃声を耳にしながら過ごしていたのです。

紛争が続く中、多くの人が畑を放棄せざるを得なくなりました。そんな中、フリー・ザ・チルドレン・ジャパンの支援のおかげで、紛争の最も激しい時期のブカブに、食料などの支援物資を届けることができました。いとこのミシェルは、M23が封鎖し補給路が遮断されたため、大変な危険を冒してルワンダに渡り、食料を調達しなければなりませんでした。
 

歴史は繰り返されているように感じます。1998年、私が11歳でコンゴ民主共和国を去ってから30年近く経ちましたが、今、また新たな世代のコンゴの若者たちの未来が奪われていくのを目の当たりにしています。戦争は私たちに平和をもたらしたことはありません。ただ苦しみを長引かせ、私たちの土地、地域社会、そして心に何世代にもわたる傷を残すだけです。
 

それでも、私は希望を捨てることができません。このプロジェクトを信じているのは、農民たちのたくましさをこの目で見たからです。そして、私たちの小さな、地域主導の取り組みが確かな変化を生み出すことを実感したからです。
 

このプロジェクトの参加者の一人であるサラは、自ら進んで先頭に立って質問し、他の女性たちを励ましていました。私は、農民たちは、何キロも歩いて研修に参加していました。成長したい、学びたい、生きたい——その思いが、彼らの一歩一歩に込められていました。

写真: SKCDP農業グループ

戦争によって歩みが遅れることはあっても、私たちの意志が打ち砕かれることはありません。パークレンジャーズ・ウィドウズ・アンド・オールファンズ・プロジェクト、フリー・ザ・チルドレン・ジャパン、リニューSCIO、ガーデンズ・オブ・ホープといったこのビジョンを信じ続けてくれる人々の支えがある限り、私たちは必ず戻ってきます。
 

2026年7月までに、事業地域での研修を再開し、プロジェクトのフェーズ1から一歩進み、農家向けの家畜飼育プロジェクトへと拡大する準備を進めています。9月までには、若い農民たちが再び畑に立ち、レジリエンスの種、尊厳の種、そして希望の種を蒔く姿が見られることを願っています。

 

「歴史に名を残す偉大な人々は、富や成功によって称えられるのではありません。その心と、他者のために尽くした行いによって讃えられるのです。」
— ラマザニ・チクワニネ(コンゴ民主共和国 人権弁護士)

この亡き父のこの言葉を、私は大切に心に留めています。だからこそ私は続けるのです。簡単だからではなく、正しいことだからです。
 

私たちを支えてくださっているすべての皆さまへ——皆さんが支援しているのは、農業だけではありません。長く苦しみを抱えてきたこの土地に、希望を取り戻す力を注いでくださっているのです。
皆さんは、今も書き続けられている物語の一部です。一つひとつの収穫が、その物語の新たな章を刻んでいます。

 

ミシェル・チクワニネ