【コラム】インターネットの光と影
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンのパートナー団体であり、フ
ィリピンで活動を行うプレダ基金の運営を行っている、シェイ
・カレン神父が執筆したコラムをご紹介します。
http://www.preda.org/fr-shays-articles/the-bright-and-the-dark-internet/
私たちは誰もが、インターネットに接続されている環境を愛
しています。インターネットは素晴らしいテクノロジーです。
コミュニケーションや情報共有を可能にし、娯楽にも利用で
き、人と人をつなげることができます。商業やビジネスは完
全にインターネット頼みです。電子メールに会議、コミュニケ
ーション、書類のやり取り。インターネットはなくてはならない
モノになっています。しかも紙を使う機会が減り、無数の木々
の命
が救われています。
現在、インターネットのニュースや映画、歌やネット番組の
ライブ配信が盛んです。ハリウッドも映画館もやがて置き去
りにされる日が来るでしょう。従来のニュース・チャンネルや
ラジオ局は、インターネットを通じて24時間配信される、ウェ
ブ・ニュースと競い合っています。
その一方で、インターネットは悪用されることもあります。有
権者に影響を与えたり、民主的プロセスをハイジャックする
ようなフェイクニュースを流したり、ターゲットを絞って偏った
メッセージを広めます。ケンブリッジ・アナリティカが政治的プ
ロセスに干渉し、選挙結果に影響を与えるためにFacebookを
不正利用し、個人情報を収集したとされる疑惑については、現
在調査が行われています。データの悪用はどこにでも存在します。
便利で素晴らしいテクノロジーであるインターネットは、犯罪や
強盗、搾取、虐待目的に使われることもあります。サイバー犯
罪は急激に拡大しつつあり、銀行口座のハッキングや脅迫、
詐欺によって莫大な金額が消えています。ジェニーとその10
代の友人4人は大都市からそう遠くない農村に住んでいまし
た。ホテルやレストランでの仕事を紹介されたが、最終的に
は仕事を紹介したブローカーに借金を負うことになり、間も
なく、インターネットに接続されたライブカメラの前で、料金
を支払った客たちへ向けて性行為を行うよう強制されまし
た。実際の年齢である14、5歳よりさらに若く見せるよう、彼
女たちは全身の体毛を剃るよう指示されました。彼女たち
はライブ配信される児童ポルノの犠牲者です。すっかり変
わってしまった彼女たちは自分自身をひどく憎み、自分た
ちを肯定することもできなくなっていました。借金返済に絶
望し、家に帰り、学校へ戻ることもできない状態になってい
ました。
幸い彼女たちは警察の捜査により救出され、プレダのガー
ルズ・ホームに連れてこられました。彼女たちは少しずつ回
復し、信頼と尊厳を取り戻し、そして心の傷を克服しました。
しかし、何千もの未成年者たちは救出されることなく、搾取と
虐待による苦悩に満ちた日々の中にいます。オンラインで児
童ポルノ映像を視聴している地元や海外の顧客たちは、画像
の中にいる子どもたちに会うためにやって来て、性的虐待を行
っています。児童ポルノやサイバーセックス画像が、国際的な
セックスツーリズムを煽っているのです。
インターネット悪用の最悪の形は、若者や子どもたちを食い
物にするやり方です。チャットを利用して新しい彼氏や彼女
を装いながら、若者や子どもたちに接触します。搾取を目論
む人間たちはそうした若者や子どもたちをうまく言いくるめ、
ライブカメラの前で体を露出させ、性行為に及ばせています。
そしてその様子を撮影します。その後、映像をインターネットに
流出させたり、あるいは親や友人に送りつけると言って彼らを
脅し、脅迫したりしています。こうした状況が多くの自殺者を生
み出しています。数はわかりませんが、自殺する若者の数は
劇的に増加しています。10代の若者たちは、彼らを狙う犯罪
から保護されるべき存在です。また、そのような犯罪について指導を受け、
注意を促される必要があります。
世界保健機関(WHO)の調査によると、90の国々(地域)で、
自殺は若い男性の死因第4位、若い女性の死因第3位となっ
ています。上記90の国と地域において、死亡した若者13万2,
423人のうち自殺者は9.1%を占めています。
WHOによると、世界的に15歳から29歳の死因の第2位
は自殺となっています。この数字は衝撃的ですが、犯
罪目的によるインターネットの悪用が自殺増加の要因
となっているのかもしれません。犯罪者たちは、何千も
の若者の命を縮めています。
インターネット上で行われているもうひとつの恐ろしい犯罪
が、児童ポルノです。児童ポルノの拡大は勢いを増し、性
的に虐待される子どもの数を増やす要因の1つとなってい
ます。児童ポルノはそれ自体、ほとんどすべての国で深刻
な犯罪です。フィリピンでは、反児童ポルノ法の下、児童ポ
ルノの制作または販売、またはその両方については最高2
0年の懲役が科せられます。違法画像をコンピューターや携
帯に個人的に所持していた場合でも、重い刑罰が科せられ、
さらに高額の罰金刑に処せられます。ですが法の執行の甘さ
に問題があり、児童ポルノはそこかしこに存在しているのが現状です。
反児童ポルノ法(または共和国法第9775号)は上記のよう
な処罰を科しています。この法律は筆者(カレン神父)が上
院議員、Jamby Madrigalに提出し、陳情したものです。そし
て2009年に法として成立しました。この法律は、電気通信委
員会(National Telecommunications Commission、NTC)が管
理するコンピューターを使ってインターネット接続を行なってい
る大手企業(Internet Server Providers、ISPs)に対して、児童
ポルノを特定し、ブロックし、フィルタリングを行うソフトをインス
トールすることを命じています。
同法第9項には、あらゆる児童ポルノへのアクセスやその
送信に対して、確実にブロック機能やフィルタリング機能が
実行されるよう、すべてのISPsは可能な限りのテクノロジー
やプログラム、ソフトを導入しなければならない、とする趣旨
が明記されています。もしISPが認識しつつ故意にこの条項
に違反した場合、同法第15項(k)によって規定される刑罰の
対象となります。NTCは、同法が効力を発してから90日以内
に、この条項の実施に必要な規定を交付しなければなりませ
ん。この規定には、あらゆる児童ポルノへのアクセスやその送
信をブロックするようなフィルタリング機能を持つソフトを導入す
ることを規定する項目が含まれています。
しかしながら、この法律が尊重され、効力を発揮していると
はいえないようです。児童ポルノとサイバーセックス犯罪は
フィリピン国内に蔓延し、さらに広がりつつあります。何千も
の子どもたちが性的に虐待されながら撮影され、その画像
が国内外で販売されています。これは、あらゆる犯罪の中
で最も悪質な犯罪です。力のあるものが、何らとがめを受
けることもなく、この状況に甘んじています。我々は異を唱
え、子どもたちを守るために行動を起こさなくてはなりませ
ん。そして、子どもたちを食い物にする人間とそれを後押し
する者たちに法の裁きを受けさせなければなりません。
(訳者: Mikikoさん)
カレン神父とプレダ基金の子どもたち