【中間報告】フィリピン・視覚障害者支援プロジェクト(2021年9月~2022年8月)
2021年12月から当団体がオンライン寄付サイト「Give One」で実施している資金調達プロジェクト「フィリピンの貧困家庭の視覚障害の中高生に教育支援をしたい!」につきまして、現地パートナー団体のフィリピン盲人連合(以下PBU)から中間報告が届いたので、背景を補足しつつご報告致します。
【プロジェクトの経緯・背景】
●2020年秋~2021年夏の支援事業について
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンは、フィリピン視覚障害者支援事業の一環として、現地パートナー団体のフィリピン盲人連合(以下PBU)・視覚障害ITセンター(以下ATRIEV)と協働し、「フィリピンのコロナ禍で失業した、視覚障害のあるマッサージ師の生計再建支援」を2020年10月~2021年8月の期間で125人に行いました。
●背景
フィリピン政府は日本よりも遥かに厳しい新型コロナウイルス感染対策をうちだし、学校では対面授業を禁止したり、課題プリント・テレビ・ラジオ・分散登校/少人数授業やオンラインで遠隔授業を行うことを推奨したりしています。そのため、フィリピン教育省(日本の文部科学省に相当、現地ではDepEDと略称)も、コロナ禍の長期化やコロナ禍の収束後を見据え、オンライン授業用教材・プラットフォーム(DepED Commons)や、障害のある子どもたちへの教材・教育プログラムなどを急ピッチで開発しています。
しかし、フィリピンは電気やネット回線などの生活インフラの普及が地域によってはかなり遅れているため、自宅に電気・ネット回線が通っていない、パソコン・スマートフォン・タブレット端末や文房具などが無い貧困地域の子どもたちが「そもそもオンライン授業に参加できない」状況が各地で起き、教育格差が急速に拡大しています。
参考:日本貿易振興機構「フィリピン 教育(Edtech)産業調査(2020年12月)」(pdf)
中でも、視覚障害のある子どもがスマートフォンやパソコンを使ってオンライン教育を受けるには、画面に表示された文字を拡大したり、読み上げたり、音声に変換したりするアプリや、視覚障害者向けの電子書籍が読めるアプリなどが必要になりますが、こうした機能をストレス無く利用するためには、相応の性能が必要になり、どうしてもパソコン等の機器の購入のハードルが健常者よりも高くなっています。
(PBUによると、「日本と同様、フィリピンでも政府がオンライン授業を受けるために必要な機器の推奨スペックを公開しているものの、視覚障害者が快適に教育を受けるには性能が低過ぎる」とのことです。)
そのため、視覚に障害のある、低所得家庭の子どもたちは健常者以上に授業へついていくことが厳しい状況が2年以上続いています。
2021年夏、1年目の支援事業を完了するにあたり、現地パートナー団体との協働プロジェクトの2年目としてどのような支援が必要か支援ニーズを現地と話し合った結果、「視覚障害のある子どもがオンライン授業を受けるために必要な機器が、外出制限などで手に入らない・貧しくて買えないので助けてほしい」という声がフィリピン全土からPBUにたくさん届いていたことがわかりました。そこで、私たちは2021年秋から行うフィリピン視覚障害者支援事業として、フィリピンの低所得世帯に属していて、かつ視覚障害のある子ども(日本の中1~高3)200人に、オンライン授業を受けるために必要な性能・機能を有したスマートフォンを無料提供するとともに、機器の使い方を本人と家族へ教える「教育支援」(現地では「PBU Phone Project」と呼称)を実施することにしました。
【プロジェクト中間報告】
2021年11月14日にPBUのFacebookで受付を開始し(下記)、2022年2月までに定員を超える282件の申込がありました。
PBUでは、
- 視覚障害を有していること
- (フィリピン国内の)7~12学年の高校(日本の中学~高校)に在学していること
- 先述した性能と同等の性能を有した電子機器を保有していないこと
- 低所得世帯であること
という審査基準で受益者の選考を順次行っており、2022年2月までに、拡大鏡・読み上げ・電子書式リーダーアプリをプレインストール(搭載)し、最低限の通信量(いわゆる「ギガ・パケット」)を確保したプリペイドSIM・文字を読むうえで障害のある人のための電子書籍ライブラリ「BookShare」(リンク先英語)の1年間無料サブスクリプションが付属したスマートフォン(「Samsung Galaxy A03s」という日本未発売の格安機種)を、視覚障害のある子どもたち66人へ届けることができました。現在、PBUでは残り216人の申込者の選考や選考通過者へのスマートフォンの発送・手配を続けています。
●受益者の皆さんからの感謝のコメント(Facebook投稿、英語またはタガログ語)
(2022年3月30日9:30追記)
たくさんの温かいご寄付のお陰で、本事業を無事に完了することができました。皆様からのご支援・ご協力に心より御礼申し上げます。