インドの少女への性的暴力をなくすために
わたしたちフリー・ザ・チルドレンでは、インドの西ベンガル州と
ラジャスタン州で子ども支援事業を実施していますが、
今回は西ベンガル州で最近起きている女性へのむごたらしい
性暴力事件とその背景について、
現地スタッフからレポートが届きましたので、お届けします。
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西ベンガル州で活動するインド人現地スタッフからの報告
(2014年2月1日)
◆16歳少女のケース
昨年、インド西ベンガル州のコルカタで、ある16歳の少女が2度にわたり集団レイプされたうえ、体に火を付けられ、昨年12月31日に死亡するという痛ましく許しがたい事件がありました。
少女の家族はインドのビハール州から去年9月頃引っ越してきたばかりでした。父親はタクシー運転手として働いており、娘と妻と3人で暮らすごく一般的な家族です。
しかし、10月頃自宅に1人でいた少女はギャングによって連れ出され、自宅付近のたんぼで6人の男たちによって集団で襲われたのです。少女はその場に放置されたままでしたが両親によって翌朝みつけられ、病院に行きました。同時に、意を決して警察に被害届を出しました。しかし、自宅に戻る途中に、同じギャングに再びさらわれ、再び襲われたのです。母親はすぐに警察に通報しましたが、その日は少女を探し出すことができず、翌日、線路脇に放置されている姿が見つかり保護されました。警察はその後捜査しましたが、なかなか犯人を逮捕しませんでした。
その後、少女の家族は被害届の訴えを取り下げるようギャングたちに何度も脅され、別の場所へと引っ越しをせざるを得なくなりました。引っ越した後もギャングに脅されましたが、家族は訴えを取り下げないということを伝えると、ギャングらは少女に火をつけたのです。少女は病院に運ばれましたが、12月31日に命を落としました。
ある状筋によれば、このギャングたちは、与党と通じていることから、警察が捜査をしないのではないかと言われています。こういった警察がしっかりと捜査しないこと等に対して、私たちNGOは、少女が人権を無視されてひどい扱いを受けていることが最初から見受けられたので、抗議行動を起こしていました。そして、ニュースで大々的に報道されると、今年の新年1日には、コルカタで数百人が抗議行動に参加するまでになりました。
そして、とうとう、警察は年が明けてから容疑者1人を逮捕しました。
私自身は、ここ、コルカタで少年司法制度委員の一人として、児童福祉局へ少女の人権と身柄を守るためにも、どこかのシェルターで保護するように、事件当初から訴えてきましたが、何も当局はしませんでした。
ギャングの一人は逮捕されていますが、少女が亡くなった今、聞き取り調査など詳しいことが分からなくなってしまったために、近いうちに保釈されるのではないかと言われています。
◆20歳の女性への集団性的暴行のケース
今年の1月中旬、同じく西ベンガル州のビルブムの村で20歳の未婚女性が、別の村の男性と付き合っていた罰として村の長老たちで構成される自治組織「パンチャヤット」の裁判にかけられ、罰金を5万ルピー(約8万5千円)を支払うよう命じられたが、支払うことができないと女性が伝えると、監禁され12人の村人から集団レイプを受けるという事件が起きました。この性的暴力は数日間に及びましたが、とうとう警察が来て女性は保護され病院に運ばれました。
そして、加害者である11人の男性は捕まりましたが、長老は逃亡したままです。
◆なぜ、少女や女性への性的暴力事件が起きるのか
最近の二つの大きな痛ましい女性への事件は、世界的にも報道されたことで注目されていますが、実は、ここ最近の珍しいニュースではなく、西ベンガル州では、日常的に良く報道されているニュースです。毎日、1つか2つは、女性がレイプされたり、性的虐待を受けたなどといった事件が新聞記事として載っており後を絶ちません。
なぜ、こういった痛ましく許しがたい女性への性暴力が良く起きるのでしょうか。
それは、以下の理由が考えられると思います。
1.政治の腐敗
闇組織と繋がっている政治家などがいて、警察や司法が
機能していない。
2.貧困の負の連鎖
貧困のために非識字状態にいる人々にとっては、女性や子どもの
権利を守り、尊重するという教育を受けていないため女性たちへ
の接し方に問題がある。また、非識字者は社会常識や身を守るた
めの情報を知らず、被害を受けてもどうしてよいかわからない。
3.部族や村に縛られたコミュニティ
男性優位の部族や村の掟に縛られた生活のなかに置かれている
ことで、村のリーダーや男性らは女性や子どもを所有物と見なし
ひどい扱いをしてしまう傾向にある。また、女性や子供は男性に
よる犯罪に巻き込まれたり影響を受けやすい。
◆こういった事件をなくすために
このような子ども、女性、社会的弱者への虐待や搾取をなくすために、日々、私たちは西ベンガル州で活動しています。具体的には、被害を受けた家族への法的、資金的、精神的サポートを行い、加害者が司法制度によって裁かれ正義が貫かれるようにします。しかし、インドでは裁判を行うのには多額なお金がかかり、時間もかかりますので、様々な困難があり支援を十分に実施することは容易ではありません。
また、貧困農村地域への支援を行っている私たちは、単に収入の自立を目指すのではなく、村人全ての人権が守られ、平和のコミュニティの構築を目指すために、子どもや女性の権利擁護のための意識改革を実施しています。しかし、限られた資金では全ての村への支援の実施は困難なので、ゆっくりと取り組んでいる状況です。
◆日本のみなさんができること
日本の皆さんが協力できることがあります、ぜひ、一緒により良い世界をつくっていきましょう。
1.女性や子どもへの暴力は絶対に許せない!という声をコルカタ当局に送って下さい。
2.子どもや女性の権利を守るための活動へ募金するなどご協力をお願いします。
3.インドをもっと知るために、フリー・ザ・チルドレンが実施するスタディツアーに参加したり学習会に参加して下さい。今年の6月には日本に行く予定です。ぜひお会いしましょう。
※3月の春休み中にフリー・ザ・チルドレンのスタディツアーが実施されますが、訪問先は西ベンガルではなく、ラジャスタン州です。ラジャスタン州でも女性の権利が低い地域が多くみられますが、フリー・ザ・チルドレンが支援しているコミュニティでは、女児の教育の大切さの訴えが浸透しつつあり、建てた小学校には多くの女の子が通うようになった地域もあります。
ぜひ、そういった地域を訪問して、変化を感じてもらえたらと思います!
→インド・スタディツアーについてはコチラ:
http://www.ftcj.com/get-involved/study-tour/India2013.html