ケニアにWE Collegeが誕生!

WE Charity(フリー・ザ・チルドレン)が支援を行っている高等教育機関であるケニアの「WE College」。昨年行われた同校の開校式には、ケニアの大統領夫人も出席しました。(清田)

https://www.we.org/en-CA/we-stories/global-development/first-lady-of-kenya-visits-we-college-opening

 

ヘリコプターの羽根が頭上の空気を切り裂き、激しい音がすぐ近くのネグロスヒルズから反響してマラ渓谷に響き渡ります。

ナロクカウンティのいかにも牧歌的な音にそぐわないこの響きの意味は、間もなく明らかになります。

ケニアの大統領夫人、マーガレット・ケニヤッタが降り立とうとしているのです。

大統領夫人の到着を一目見ようと親たちは仕事の手を休め、子ども達は首を伸ばし空を見上げているその間も、試験室に仕立てられた大食堂は紙を走る鉛筆の音で満ちています。

そこでは、14人の若い女性がヘリコプターの騒音など気にも留めず深く椅子に腰かけ専念しています。

彼女たちは身近に迫った仕事:WE College’s School of Tourismの最初の卒業生になる前の最終ステップとなる試験のために全神経を集中させているのです。

 

大統領夫人は、この地では数少ない中等教育後の教育施設の1校であるWE Collegeの開校を祝福するために、ナイロビからマサイラマの外れまで200キロ以上の道のりをやって来ました。

WE Charity によって設立されたこのカレッジは、変革の先駆けとなり、マサイとキプシギスの若い女性・男性たちは家を離れて大都市まで行かなくても地元で教育を完了できる機会ができたのです。夫人の訪問を受けるとことで、この農村地域が優位な立場に立つのです。

それはまた、この地域でWE Charityの20年にわたる開発作業を承認する印しでもあります。

ヘリコプターの轟音が頭上を通り抜け、地上では黒っぽい護衛隊のSUVの車列が土埃をまくし立てながら轟音を立ててでこぼこ道を走り、また隊員たちが小走りに動き回るため、多少とも大きなざわめきが起こります。

 

ケニア(共和国)は近年、教育にかなりの投資をしてきました。

政府は2003年に無償の義務教育の小学校を設立し、また、今日では700万人の生徒が中学校に在籍しています。

しかし、カレッジや大学での出席の上昇率は鈍く、むしろナロクカウンティのような農村や施設が不十分な地域では下降している状態です。

100万以上の人口を抱えるナロクカウンティが支援できるのは、国の中等後教育の生徒の1%の半分にもなりません。

20年間、WE Charityはこの地域で、教育へのアクセスを増やす、試錐孔を掘る、病院や保健所を建てる、経済的な機会を与えて女性に活力を与える、食の安全プログラムを配達するなど尽力してきました。

WE Collegeは最高学府として、学生が教育を完了し、彼らのコミュニティに貢献できる職を確保するために、最後の障害物を取り除くことを誓っています。

 

 

 

観光学を学ぶ22歳の学生、Mercy Ntualaにとって、試験場の外の祝典は、試験で優秀な成績を上げたいという彼女の願望に火をつけます。

「何が起っていようと、大騒ぎしていようと、私に必要なのは、ただただ集中することでした」と熱心に語りながらも、また祝祭行事への参加を切望していたことを告白します。

Eor Ewuasoで育ったNtuala はコミュニティを超えて目的を達成しようとした女性の例をそう多く知りませんでした。彼女は家族の中で初めて高校に行った人であり、村で初めてカレッジの卒業証書を手にする人になります。

彼女はリーダーになっています。よく高校の授業に招かれて自分の話を生徒に伝えて、少女たちに勉強を続けるよう励まして来ました。

 

この国で最も傑出した女性のリーダーの1人であり、女性の権利の熱烈な支持者であるケニア大統領夫人のこの訪問は、彼女が個人的に確認するためのような感じがしますと、Ntualaは言います。

 

丘の途中で腰を下ろし、Ntualaとクラスメートは文字通り雄大な景色を見渡しています。

眼の前に、渓谷全体の景色が広がります。

曲がりくねったマラ川、所どころで草を食む牛の群れ、低地の村々、そしてWE Collegeの2本の黄土色の塔が見えます。

景色が遮られたあたりからキャンパスのがやがやした声が聞こえてきます。

 

クラスからクラスへと行き交う学生特有の騒がしい声がブーッと言う電動音にとって代わりました。イベントのための最後の準備が進行しているのです。

最終列の椅子が並べて置かれます。音響システムがチェックされます。

舞台の裏では、若い女性が政府の役人を歓迎するセリフのリハーサルをしたり、ダンスの曲に合わせてフットワークの練習をしています。

近くのフットボールのピッチでは、地域の住民が、老いも若きも、この祭典のために設置された大スクリーンでイベントを見ようと、最高の場所を競い合っています。

 

キャンパスではケニヤッタ大統領夫人は、ナロクカウンティの知事、マサイとキプシギスの長、そして渓谷にまたがる村々から集まってきた何千もの人たちと一体になっています。

数年もすれば医学、看護、工学、教育などの学位を取得して卒業する若者は男女ともに、リーダーシップの役割を果たすに必要な技術やノウハウを身につけ、この地域の新しい進路を作って行くのです。

 

 

 

カレッジの学生―そして彼らの後に続きたい小・中学生の少年少女たち―にとって、このイベントはケニア政府の最高レベルの省庁から認められたものです。

多くの学生は誰も皆、家族を助けるためにより良い職を求めて、家事と勉学を両立させながら、カレッジに通学できるようになるのは誰かと言った教養上の前提を克服しながら、数々の障害物を乗り越えてきました。

彼らは何千人もの強い願望の姿の表現なのです。

 

このイベント全体がコミュニティが何十年にも亘って行ってきた変革の証拠ですと、WE Charity East Africaのディレクター、Justus Mwendwaが言います。

「着工の時に、WE Collegeはテープに鋏を入れることもなく、起工式さえしませんでした」と彼はキャンパスの管理ブロックの2階の事務室から説明します。

それどころか、この地域でWE Charityが建設した最初の小学校の起源をたどって話を進めて行くのです。

 

ナロクカウンティの村で学校の数が増えるにつれて、初等教育を受ける若者の数も以前よりずっと増えてきました。

しかし多くの若者にとってそこが教育の終着点なのです。中学校も設備が不十分であるとか、通学に不便で、また学費も手の届かない学校も数校ありました。

Mwendwaは初等教育の子どもの親から、「じゃあ次はどうしたらいいの」と問われたことを思い出しています。

強まっていく必要性と願望に応えるため、WE CharityはKIsaruni Group Schoolを建て、少年少女たちに教育を続けられる機会を提供しました。

そこは以来ずっと表彰に値するほどの優良な高校のキャンパスとなっています。

2年後、同様の問題が持ち上がりました。2012年のある日、キプシギスの長、Erickson Ngenoがエネレライの村を散歩中のMwendwaを呼び止めました。

彼はその時までマサイコミュニティのライラ近隣の村のリーダーと話をしていたのです。

この2人の族長は村人のために一段と高い希望を持っていました。

彼らは、最も優秀の学生たちが家の近くで学びその後良い職に就いてコミュニティに恩返しできるような地域にカレッジがあればと願っていました。

 

 

 

 

Mwendwaはその時は答えられませんでした。

WE Charity が願望を政府の認可を得た実践的な計画に飛躍させるには何年もかかるだろうと思われるからです。

カレッジがコミュティが必要としていることに応えるものか、またこの急進的な考えのために初期の資金を投資してくれる寛大な寄付者の支持をカナダやアメリカで確実に得られるのか、そのような確信が持てるためには、親や村のリーダーたちと数えきれないほど会合を重ねなければなりません。努力に努力を重ねた末、2017年にWE Collegeは最初の学生を迎えました。

大統領夫人の訪問中のある時点で、学生のパフォーマンスや政府高官の演説の最中に、Mwendwaは群衆の中に2人の族長を見つけます。

 

彼はライラの族長で旧友のJames Nabaalaと共に拍手を送っています。Nabaalaは彼を引き寄せて「若者の未来を創って下さってありがとう」と興奮の騒音の中で言います。

 

Nabaalaの感情の声が響き、大統領夫人がステージに立つと、彼女は畏敬の念に満ちた聴衆に向かって、この地に希望が芽吹き始めて来ましたと話します。

「私たちは今ここに集い夢の実現を祝福しています」と彼らに語ります。

「このような形式のカレッジは学術機関としてはケニアで最初のカレッジであり、マサイラマのの学問の中核となり得るものです」。

 

式典とそれに続く祝賀行事が終わると、ケニヤッタ夫人と側近が黒いSUVの車に駆け足で戻りヘリポートに戻って行きます。

椅子は積み重ねて片付けられます。祝賀行事用に張られていた巨大なテントは畳まれていきます。キャンパスはゆっくりと静かな学び舎へと戻って行きます。

 

そしてNtualaは、図書館に向かいます。大統領夫人の来訪はNtualaが歩んできた道のりを強く承認するものとなりました。

このイベントの華やかさは最終試験のストレスから逃れる嬉しい気晴らしでした。

しかし彼女には、WE Collegeを卒業するまでにもう1つ試験が残っています。

そして後には、彼女の未来が待ち構えているのです。

 

(原文記事執筆: ジェシー・ミンツ 翻訳:翻訳チーム  松田富久子  文責:清田健介)