次世代の活動家を育てる鍵は、「多様なおもちゃ」にあり?

クレイグとマークのコラムの紹介です。

 

https://www.we.org/we-at-school/we-schools/columns/global-voices/diverse-toys-mean-better-leaders/

 

子どもたちが、普段よく遊んでいる「おもちゃ」。今、そのおも

ちゃが大きな転換期を迎えているということを、みなさんはご

存知でしょうか?

 

2016年のアメリカの年末商戦のおもちゃの売上総額は、

260億ドルという記録的なものになりました。(その売上を

支えた主力商品は、ローグ・ワン/スター・ウォーズ・スト

ーリーのアクションフィギュアでした。)その一方、おもち

ゃメーカーが、保護者などからの「おもちゃへの多様性

を求める声」に応えた、新たな商品の発表が目立った

年でもありました。マテルの主力商品である「バービー

人形」が、多様な肌の色をした、七種類の新たな人形

や、現実的な体系により近い人形を、新商品として発

表しました。また、レゴは「車椅子に乗ったミニフィギュ

ア」を新しく出しました。今取り上げたバービー人形の

新商品も、レゴの新商品も、2016年に新発売されたモ

ノです。

 

「どのようなおもちゃで遊ぶか?」「どのようなメディアに触れ

るか?」という選択は、子どもたちの自己肯定感の形成にも

大きく影響するということが、研究でも明らかになっています。

「非現実的な完璧なキャラクター」に触れるよりも、「自分たち

により近いキャラクター」に触れる方が、子どもたちは自信を

育みやすくなるということが明らかになっているのです。

「自信」というのは、人としてリーダーシップを発揮できる

ようにする上でも、基盤となっていくモノです。と、長々と

書きましたが、今申し上げたことは、正直そこまで意外性

のないことかもしれませんね。でも、研究によって明らか

になっていることがもう一つあります。「自分とは異なるバ

ックグラウンドをもつおもちゃ(人種など)で遊ぶと、思いや

りの心が育まれるということです。
おもちゃ遊びが、自己肯定感やリーダーシップ、思いやりの

心の形成に影響を与えているのだとすると、「次世代の活動

家を育てる鍵は、多様なおもちゃにある」という言い方もでき

るのではないでしょうか?

 

「どうして黒人のお人形を持っているの?」というタイトル

のドキュメンタリー映画も撮っているKnowles映画監督は

、「多様なバックグラウンド持つおもちゃで遊ぶことで、子

どもたちは、世界や自分自身に対する理解を、良い意味

で深めることができます」と語ります。

 

多様性の高いおもちゃや環境で遊ぶことは、これまで述べ

てきたようにいろいろメリットがあります。これに対して、多

様性とは真逆の、同一性の高い環境で遊んだりする子ど

もたちはどうなっていくのでしょうか?

 

アメリカの研究では、テレビを見ると、白人の男の子の自己

肯定感は高まるということが明らかになっています。アメリカ

のテレビには多くの白人男性の主人公が登場するからです。

これに対して、女の子や有色人種の子どもたちは、テレビを見

ると自己肯定感が低下するということが明らかになっています。

女性や有色人種は、脇役になっていたり、肯定的に描かれてい

ないことが多いからです。子どもたちは、主役や脇役を問わず、

テレビに映っているキャラクターを、自分たちに重ね合わせてい

るのです。

 

テレビを見ている時の子どもたちは受動的ですが、おもちゃ

遊びをしている時は、子どもたちは自ら役割を決めていきま

す。おもちゃ遊びをしている時の子どもたちは、おもちゃを通

じて、自分が主人公の物語を創っていきます。実はそのよう

なおもちゃ遊びの中で、子どもたちはある問いを投げかけら

れます。その問いは、一見おもちゃと無関係に見える活動家

にも重要な問いなのです。おもちゃ遊びをしている子どもたち

と活動家に投げかけられる共通の問い、それは「私には今、

何ができるのだろう?」という、他者/世界を意識した問いなのです。

 

七歳の子どもがアクションフィギュアで遊んでいる時、その

七歳の子は、アクションフィギュアを通じて自己肯定感を高

め、世界とつながろうとしているのです。

 

「自分の境遇や外見に似ているおもちゃで遊ぶ時、子ども

たちは『自分の外見のような人間は、価値のある存在と世

の中で思われているんだ』という無言のメッセージを受け取

っているのです。『価値のある存在と思われているからこそ、

大人が自分の外見に似たおもちゃを作ったのだから』とね。」

(Knowles映画監督)

 

「自分に似ているおもちゃ」に加えて、社会の中で必ずしも

公平に扱われているとはいえない人たちをモデルにした

「他の人に見えるおもちゃ」もぜひ子どもたちに与えてみて下さい。

 

多様なバックグラウンドを持つ人形で遊ぶ子どもたちは、強い共感

性を育み、人種問題や、差別や偏見に晒されている人たちが直面

する問題などについて、抵抗感をそれほど持たずに議論できるよう

になるということが、研究で分かっています。北米社会の中にある

差別の問題などについて子どもたちに話そうとする時は、「多様な

バックグラウンドを持つ人形」が便利なこともあるかもしれません。

 

「子どもたちには、『人種問題とは何か』を語るよりも、おも

ちゃで遊ぶことを通じて学ばせた方が、より力強いメッセー

ジを送ることができると思います。」と、Knowles監督はいい

ます。

 

子どもたちにとって、おもちゃ箱は、新たな物語を創作する

ための道具箱です。ですから、おもちゃ箱の中身というのは、

とても重要なんです。私たちは、全ての子どもたちが、バービ

ー人形のおもちゃセットで、将来国連で発表する演説の練習

ができるようになって欲しいと思っていますし、将来のノーベ

ル賞科学部門での受賞式のスピーチの練習もできるように

なって欲しいと思っています。(自分自身の性別の人形で)

 

そして、おもちゃを通じて、子どもたちは、自分とは異なるバ

ックグラウンドを持つ人の物語を知ることだってできるのです。

さらに、自分たちとは異なる部分がある人たちも、ヒーローにな

ることができるのだということを、知ることができるのです。

 

ちなみに、私たちがここで言っているヒーローというのは、い

わいる命知らずなアクションヒーローだけのことを言っている

のではありません。思いやりを持ち、他の人のために立ち上

がることができる人も、立派なヒーローですよ!

 

参考リンク
多様化するバービー人形
http://www.asahi.com/articles/ASJ1Z2D36J1ZUHBI00F.html

 

車椅子に乗ったレゴのミニフィギュア
http://irorio.jp/umishimaakira/20160129/297952/

 

映画「どうして黒人のお人形を持っているの?」公式サイト(英語)
http://whydoyouhaveblackdolls.com/

 

アメリカの子どもたちのテレビの視聴時間と自己肯定感に関する研究(英語)
http://edition.cnn.com/2012/06/01/showbiz/tv/tv-kids-self-esteem/index.html

 

多様なバックグラウンドを持つおもちゃが、子どもたちに与える影響に関する研究(英語)
https://www.naeyc.org/files/yc/file/200811/BTJRaceClassConversations.pdf

 

※今月から「クレイグ&カナダニュース」は、「世界のWEニュース」

にプチリニューアルしました!これまで同様、クレイグやマークの

コラムや、去年新しく生まれ変わったWE(旧フリー・ザ・チルドレン

・カナダ)から発信される世界の情報を紹介していきます!これか

らも、新しく生まれ変わった「世界のWEニュースをよろしくお願いし

ます!

人種や体形が多様化しているバービー人形