ニュースには流れないイスラム教徒の若者の姿
カナダのクレイグとマークのコラムの紹介です。
http://www.huffingtonpost.ca/craig-and-marc-kielburger/islamophobia-canada_b_7949776.html
先日、IS(いわゆる『イスラム国』と言われているテロ集団)のに参加したカナダ人の若者がまた一人、イラクで命を奪われました。また、カナダ議会上院から出された報告書は、カナダの多くのイスラム教徒が過激主義に走っている現状に警鐘を鳴らし、対策として、カナダ人のイマーム(イスラム教において、信者を指導する立場にある役職の人)への取り締まり強化を提言しています。
また、過激派の武装集団に加わろうとして、シリアへの渡航を計画していた10人のイスラム教徒がモントリオールの空港で逮捕されるという事態も起きています。
今ここで挙げた事件が、ここ数カ月、教徒について私たちがマスコミを通じて見聞きしたカナダ人のイスラム教徒に関するできごとの全てではないかなと思います。カナダのイスラム教徒の人々の現状をマスコミがきちんと報じているかといえば、問題提起としての報道はそれなりにやっているかもしれないけれど、異常に偏っていると言わざるを得ないと思います。
ニュースでは報道されずに私たちが知らないこととして挙げられるのが、イスラム教徒として生きている人たちが、私たちの暮らす社会や世界を良くするために行っている前向きなアクションについてです。このようなことが報道されないがために、カナダ人は宗教を理由に、同じカナダ人として暮らすイスラム教徒の人たちに偏ったイメージを持ってしまっています。
2013年のある世論調査では、54%のカナダ人が、イスラム教徒に対して良い印象がないと答えている結果が出ています。もし、この調査を今やれば、その54%よりもさらに高い数字が出ているのでないかと、どうしても心配になってしまいます。
カナダの最新の国勢調査によれば、カナダにはイスラム教徒として暮らしている国民が百万人以上います。イスラム教徒は今、我が国で最も増率加の著しい宗教の信者となっています。また、イスラム教徒の平均年齢は28歳で、我が国で最も若い層でもあります。しかしながら、とても悲しいことなのですが、ネットで「イスラム教徒 若者」と検索すると、結果として表示される記事の10本中7本は、過激化や暴力化を懸念する内容の記事が出てきます。
「イスラム教徒に関してメディアで報じられる内容は、基本的にはマイナスな内容です。そしてそんな内容ばかりがメディアではいつも流れています」 「カナダの女性イスラム教徒の会」のプロジェクトに携わっている、ステファン・ペローはこう嘆きます。
ペローは、この会が、世間で定着しているイスラム教徒のイメージに対抗するために行っている活動を説明してくれました。(悲しいことに、こういう活動がニュースにはならないのです) 「わたしのカナダ」というプロジェクトでは、カナダ人のイスラム教徒の若者に対して、ワークショップやネットという場を活動して、自分たちがカナダ人として生きるということについての意味、自分たちの周りでリーダーとして活動したりボランティアとして活動することの意味などを、積極的に表現していこうということを促す活動を行っています。
他にこの会が積極的に取り組んでいることは、メディアリテラシーなどのような能力を高める講座の開催や、イスラム教徒と非イスラム教徒の若者たちが、自分たちで身の回り問題を見つけ出し、その問題に取り組むために何ができるかを見つけることができるようにするための支援を行っています。
「メディアからの取材を受けると、いつも過激主義などに関する質問を受けます。それとは別に、私たちの活動についても話しているのですが、私たちの活動のことが実際に記事に載ったり放送に流れることはあまりありません」(ステファン・ペロー)
「私がいつもイスラム教徒の女性から聞かされる不満や葛藤は、この社会が彼らに持っているイメージ(思い込みも含む)についてです」トロントを拠点にしている、「アウトバースト」のコーディネーターの一人、Shameela Zamanは言います。
アウトバーストは八人のイスラム教徒の女性に運営されており、その活動内容は幅広いのですが、トロントの公営住宅街などの、社会的に取り残されがちな人たちが多い場所で、女性に対する暴力、ホームレス状態にいる人々が発生している事態、人種差別などの問題に取り組んでいます。
「アウトバースト」や、「カナダの女性イスラム教徒の会」が行っているような取り組みは、各地域に良い変化をもたらしています。しかしながら、私たちがカナダ人の若いイスラム教徒のヒーローについての話を聞くことはあまりありません。フリー・ザ・チルドレンの一員である、Dalal Al-Waheidiもそんなヒーローの一人です。彼女のような素晴らしい女性がFTCの一員でいてくれていることを、私たちは本当に嬉しく、有難いと思っています。
ガザ地区で育ったAl-Waheidiは、彼女が通っていた学校の教育内容を、より充実したモノにするように改善を求める運動を行い、活動家になりました。トレント大学から、満額の奨学金を受け、カナダへと渡ります。
Al-Waheidiが今のようにFTCのWe Dayの運営に関わるずっと前から、彼女は世界中の若者を勇気づけてきました。カナダに来た移民の若者の相談相手としてボランティアをしていたこともあります。Al-Waheidiの情熱は多くの人の人生を動かし、輝かしいモノにしたのです。
昨年、Al-Waheidiはカナダの企業から「カナダの移民ベスト25人」に選ばれました。多くの人にまだ知られていない「もう一人のAl-Waheidi」はこの国に何人いるのでしょう?
カナダは多様性のある寛容な国として世界中に知られています。でも、イスラム教徒の人たちに対して偏った考え方を持ち、彼らの社会の中にあるほんの小さな「悪い部分」(抱えている問題だけを見てしまったら、イスラム教徒の隣人たちは孤立し、社会から受け入れられていないと思ってしまうでしょう。
そうなってしまったら、カナダの世界での評判は落ちてしまいます。もうそろそろ、今の世の中で「溢れている話」よりも「良い話」をするべき時がきているのではないでしょうか?
今、この記事を最後まで読んでくれたみなさんで、今すぐイスラム教徒の人々が置かれている状況を変えましょう。あなた自身がイスラム教徒であれば、あなたが地域や国全体をより良い場所にするために何をしてきたかを、SNS等を通じてシェアしてください。もし、あなたがイスラム教徒の若者を知っていたら、その人についての話をシェアしてください。
(訳者コメント)
今回のコラムは、このような呼びかけで終わっていますが、日本ではまだイスラム教徒の方を知っている人はそれほど多くないかもしれませんね。日本人のイスラム教徒の数は、公的な統計は私の方では見つからなかったのですが、一般的には1万人と言われているようです。
http://japanese.irib.ir/component/k2/item/56439-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A0%E6%95%99%E5%BE%92%E3%80%81%E6%96%AD%E9%A3%9F%E6%9C%88%E3%81%AB%E3%83%A2%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%81%A7%E4%BA%A4%E6%B5%81
2020年の東京オリンピックに向けて、日本でもイスラム教徒の人たちが安心して食事ができる環境の整備が少しずつ進んでいるようです。
http://www.sankei.com/life/news/140317/lif1403170029-n1.html
日本では、カナダなどと較べると、イスラム教徒の人の人数が少ないこともあり、そんなに問題は起きていないかもしれません。でも、そんな日本であっても、メディアからマイナスなイメージで報じられがちになっていて、社会からの風当たりが強くなっている人たちもいるのではないかなという風に感じることはあるような気がします。
もしみなさんもそう感じるようなことがあれば、実際にそのような状況にある人たちと交流してみたりするのもいいかもしれません。もしそのような機会があれば、コラムでも呼びかけているように、その時の体験などを自分から発信してみるのもいいかもしれませんね。身近なところ(テレビや新聞以外からでも!)から情報を入手したり発信したりして、世界を自分たちで変えていきましょう!
(訳者:翻訳チーム 清田健介)