コンゴの未来を変えるために、私たちに何ができるのか―元子ども兵士・活動家のミシェル氏×FTCJ代表・中島 対談(活動報告会2026夏)
2026年8月28日、フリー・ザ・チルドレン・ジャパンでは、活動報告会2026夏「ミシェルから学ぶ、コンゴ民主共和国の紛争と今」をオンラインで開催しました。当日は、メンバーや寄付者の皆さまをはじめ、100名弱の方にご参加いただきました。
今回の活動報告会では、FTCJの海外支援事業の中でも、特にコンゴ民主共和国への支援に焦点を当て、パートナーであるミシェル・チクワニネ氏とFTCJ代表の中島が対談。カナダと日本をオンラインでつなぎ、コンゴ民主共和国の今と未来について語り合いました。
ミシェル・チクワニネ氏は5歳のときに紛争に巻き込まれ、子ども兵となった経験を持つ方です。
その後、難民として故郷を離れ、カナダへ移住。
現在は平和や子どもの権利について世界各地で発信するとともに、コンゴ東部で家族を失った子どもや女性への支援にも取り組んでいます。

今回の対談では、FTCJ代表の中島とともに、現在のコンゴ東部で起きている紛争の状況だけでなく、その背景にある鉱物資源をめぐる国際社会の構造、そして日本政府・企業・市民に何ができるのかまで、幅広いテーマについてお話を伺いました。英語と日本語で行われた対談では、同時通訳の代わりにZoomのAI翻訳機能(字幕)も活用し、カナダと日本をオンラインでつないでお話を伺いました。
なお、当日のイベントアーカイブのご案内と、参加者の皆さまから寄せられた質問へのミシェル氏からの回答については、次回の記事で詳しくご紹介する予定です。次回もお楽しみに。
本記事では、対談の中から特に印象的だったお話を取り上げ、
「コンゴの未来を変えるために、私たちに何ができるのか」を考えるきっかけとして、当日の内容をご紹介します。
「資源が豊かなのに、人々はなぜ貧しいのか」
対談の冒頭、中島からミシェルさんに投げかけたのは、コンゴの経済成長と貧困をめぐる問いでした。
コンゴ民主共和国は、コバルト、銅、金、タンタルなど、世界の産業にとって重要な鉱物資源を豊富に持つ国です。
ミシェルさんは、経済成長の数字だけを見ても、人々の暮らしが良くなっているとは限らないと語りました。
むしろ、鉱物資源が武装勢力の資金源となり、資源をめぐる利権が紛争を長引かせる一因にもなっているといいます。
本来なら人々の生活を豊かにするはずの資源が、紛争や格差を生み出す。
「資源の呪い」とも呼ばれるこの構造は、コンゴが抱える大きな矛盾の一つです。

「いま、コンゴ東部で何が起きているのか」
現在、特に深刻な状況に置かれているのがコンゴ東部です。
ミシェル氏の故郷でもあり、現在当団体でも支援している南キブ州を含む地域では、武装勢力による支配や戦闘が続き、人々の生活に大きな影響が出ています。
銀行が機能しなくなり、モバイルマネーに頼らざるを得ない地域や、学校にも影響が及んでいることが語られました。
また、戦争によって避難を余儀なくされ、家族を支えるために石や砂利を砕いて働く少年の姿も紹介されました。

学校へ行きたい。家族と安心して暮らしたい。働いて、自分の未来をつくりたい。
その当たり前の願いが、紛争によって奪われています。
当日紹介された動画の一部をご紹介します。
なぜ紛争は終わらないのか――「資源の呪い」
なぜこれほど長い間、紛争が続いているのかとミシェル氏に問いかけてみました。
その背景の一つとして鉱物資源の問題が取り上げられました。
コンゴ東部で産出されるコルタンなどから得られるタンタルは、電子機器などに利用されています。つまり、コンゴの鉱物は、私たちが日常的に使うスマートフォンやパソコンなどともつながっています。
さらに、電気自動車や蓄電池などの需要が高まる中で、コンゴの重要鉱物は世界からますます必要とされています。
しかし、ミシェル氏が語ったのは、単に「コンゴに資源がある」という話だけではありません。
東部コンゴで採掘されたコルタンなどの鉱物が周辺国へ流出し、ルワンダを経由して「ルワンダ製」として扱われ、EU企業などを通じて市場に出ていくケースがあると、ミシェル氏は説明しました。
また、こうした動きの背景には、ルワンダが安全保障上の脅威への対応を理由として掲げていることがあります。ミシェル氏は、約30年前のルワンダで起きたジェノサイドへの恐怖や、安全保障上の脅威への懸念が、現在の鉱物や土地の支配を正当化するために利用されているのではないか、と指摘しました。
ミシェル氏が強調したのは、「コンゴで起きていることは、コンゴだけの問題ではない」ということでした。
豊かな資源があり、世界中がその資源を必要としている一方で、資源の近くで暮らす人々がその恩恵を受けられず、貧困や紛争に苦しんでいる、この大きな矛盾こそ、私たちが考えなければならない問題だと痛感しました。

「どこから来た鉱物なのか」を知る責任
コンゴで採掘された鉱物が別の国を経由することで、原産地が分かりにくくなるケースがあります。
そのため、単純に「紛争地域の鉱物を買わない」のではなく、その鉱物がどこから来たのかを追跡できる仕組みをつくり、人権を守り、紛争や搾取に加担しない責任あるサプライチェーンをつくることが重要です。
ミシェル氏は、日本政府や企業にも、鉱物の産地を確認し、人権・環境などの倫理基準を守りつつ、原材料から最終製品までの流れを記録・追跡できるようにする役割がある、また、日本政府には、鉱物取引だけではなく、インフラやガバナンスへの支援、アフリカ主導の平和構築の取り組みを後押しすることも期待したいと語りました。
「支援する」だけではなく、「人に投資する」
日本にいる私たちには何ができるのかという問いに、ミシェル氏がまず挙げたのは、今すぐ必要な緊急支援でした。
紛争によって食料へのアクセスが難しくなっている人々にとって、まず必要なのは食べることです。
私たちの現地パートナーも、農業や収入向上の活動を一時的に中断し、緊急の食料支援を行っています。
しかし同時に、長期的な支援の重要性も強調しました。
コンゴの人々は、施しだけを必要としているわけではなく、必要なのは、農業や仕事、教育などを通じて、自分たち自身で未来をつくっていける環境です。
コンゴには、働きたい若者がたくさんいる。アイデアも、才能もある。
しかし、必要な資源や機会が不足している。
だからこそ、単に「支援する側」と「支援される側」という関係ではなく、コンゴの人々が持っている力に投資してもらうことが本当の支援であるとミシェル氏は語ります。
当団体とミシェル氏は2024年、南キブ州で農業研修を実施しましたが、2025年に入り紛争が激化。
安定した農業支援を続けることが難しくなり、まずは生きるための食料を届ける緊急支援が必要になりました。
だからこそ、緊急支援と長期的な自立支援の両方が必要なのです。

「対立を減らす方法」
最後に、参加者から「紛争の本質とは何か」という質問が寄せられました。
(他にも多数いただいたご質問に対する回答は後日、アーカイブ動画と一緒にブログでご紹介させていただきます。)
日本の学校でのいじめから、国際紛争まで。
規模は違っても、人と人との対立には共通する部分があるのではないか、という問いです。
ミシェル氏は、対立そのものは人間にとって自然なものだと語りました。
私たちは、それぞれ異なる家庭や環境で育ち、異なる価値観を持っています。
だから、意見や価値観がぶつかること自体は避けられません。
対立そのものは人間にとって自然なものであるが、大切なのは、相手を「自分とは違う誰か」として切り離すのではなく、相手も一人の人間として見ること。そして、相手の物語を知ること。
ミシェル氏自身、自分の辛い経験を語ることで、過去の出来事を「自分だけのもの」にするのではなく、今も同じような状況に置かれている人々のために生かそうとしています。
「自分が何をされたか」だけに目を向けるのではなく、「この経験を使って、他の人のために何ができるのか」に目を向けることが重要である。
こういった姿勢が、ミシェル氏の活動の根底にあるように感じました。
「今すぐできることから始めよう」
コンゴの問題は、決して「遠い国の問題」ではありません。
鉱物資源を通じて、私たちの暮らしともつながっています。
だからこそ、コンゴで起きていることを知り、考え、日本政府や企業の関わり方について声を上げていくことが必要です。
しかし、社会の仕組みが変わるには時間がかかります。
その間にも、今日食べるものを必要としている人、学校に行けなくなった子ども、生活の基盤を失った人々がいます。
だから私たちフリー・ザ・チルドレン・ジャパンは、ミシェル氏とともに「今すぐの支援」と「未来を変えるための取り組み」を同時に進めていきたいと考えています。
10月、「コンゴ緊急支援クラウドファンディング」を始めます
私たちは2026年10月、「コンゴ緊急支援クラウドファンディング」をスタートします。
まずは、現在非常に厳しい状況に置かれている南キブ州の人々へ、食料などの緊急支援を届けること。
そして、状況が落ち着いた先には、農業などを通じた自立支援や、子どもたちの教育につながる取り組みを進めていきます。
一時的に困難を乗り越えるためだけではなく、そこから自分たちの力で未来をつくっていけるように。
そのための支援を、皆さまと一緒につくっていきたいと思っています。
ミシェル氏は、「あなたの一歩は、どんなものであっても、決して小さすぎません。」と皆さんへ呼びかけました。

コンゴについて知ること。誰かに伝えること。声を上げること。つながること。そして、今すぐ支援すること。
その一つひとつが、未来を変える一歩になります。
10月のクラウドファンディングでは、皆さまとともに、コンゴの人々の「今日」を支え、「明日」をつくるための一歩を踏み出したいと思います。
コンゴの未来は、コンゴの人々だけの未来ではありません。
私たち自身がどんな世界を選び、どんな社会をつくっていくのか。
その問いを、今回の対談をきっかけに、皆さんと一緒に考えていければと思います。
今すぐ支援したいという方には、現在も緊急支援へのご寄付を受け付けています。
▼クラウドファンディング開始前のご支援は、以下から受け付けています。

また、前回の活動報告会で報告したアエタの給食支援事業についての進捗も少しですが報告いたしました。

アエタの給食支援報告はこちら
▼報告会へ参加した参加者から寄せられたメッセージ
「本当に生きる、死ぬがいつ起こるか分からない人たちを私たちが救わなければいけないことが、とてもわかりました。」
「紛争に翻弄される生活は、現地の方も支援者も無力感を覚えることがあるのではと心配になりました。そしてその原因が、日本に住む私が使っているスマホやPCに使われているレアメタルであることに愕然としました。それでも。ミシェルさんの声を、言葉を、直接聴くことで勇気を貰いました。私にできることはいくつでもあるはずですし、し続けようと決意しました。」
「ミシェル氏が生きてきた過酷な過去を繰り返さないためにも活動を頑張ってください」
「これまでニュースなどで聞く機会がほとんどなかったコンゴの現状を深く知ることができ、非常に貴重な機会でした。これまで自分がコンゴの置かれている状況を全く知らなかったことに気づかされ、まずはその事実を知ることができて本当によかったと思っています。
現地が激しい紛争中のため、今は緊急性の高い食料支援などが一番重要だけど、日本にいる自分が今すぐ直接現地に行って継続的な支援活動を行うことはできません。自分ひとりにできることの小ささに悔しさを感じます。
でも、今の自分にできることは何だろうかと考えるきっかけになりました。すぐに現地へ行けなくても、紛争下で困難な状況の人々を支えるクラウドファンディングへの寄付や、今回学んだコンゴの現状を周りの人々に伝えていくことなど、自分にできる支援のかたちを考え、行動に移していきたいと思います。」
「ミシェルさんは幼少期、自分では考えられないような過酷で残酷な日々を過ごしてきたということを知りました。立ち直る、立ち直れないの前に、安易にその状況が想像できないほどの衝撃的な事実でした。5歳という幼い少年が過酷な状況下で生きることを余儀なくされたのにもかかわらず、ミシェルさんはそれを、自らの意思で、世界を変える行動を起こしていました。たとえ全ての人を変えられなくても、一人でも多くの人に、世界の現状を知ってもらうために。
彼の言葉は、言葉で言い表せないほど、深く、本当にすごいものでした。
本当に考えられないような経験を乗り越えて、つなげてきた彼にしか使えない言葉の数々で、本当に価値あるものでした。
コンゴには彼がいます。そして彼の言葉で心を大きく動かされた人たちがいます。
今を伝える人がいて、それを受け取る人達がいる。絶対に世界は変えられると信じています。」
ご参加くださった皆さま、応援メッセージを投稿してくださった皆さま、本当にありがとうございました!!
いただいた応援メッセージはクラウドファンディングのページでも紹介させていただきます。
支援のお願い
最後に、代表の中島から子ども自身が「世界は変えられる」と信じ行動できる社会をつくるためにキッズパワーサポーターにぜひ登録していただきたいというお願いの場をいただきました。サポーターとして団体を引き続き応援していただければ幸いです。
「フリー・ザ・チルドレン活動報告会」は今後も不定期に実施していく予定です。
全国からオンラインでご参加いただいた皆様、いつもご支援くださっている皆さま、本当にありがとうございます!