【開催報告】「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポジウム2025三芳町
子どもの声を政策に。
ファシリテーションが拓く新しい自治のカタチ
2026年2月7日、8日、埼玉県三芳町にて「「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポジウム2025三芳町実行委員会」と三芳町の主催で「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポジウムが開催されました。
本シンポジウムは、子ども施策のあり方やまち・コミュニティづくりの展望を見出すために、自治体関係者と研究者・専門家・NPO等が連携・協力して、2002年から全国各地で開催されており、埼玉県内での開催は、三芳町が初となりました。
2日目の第4分科会(日本財団助成)では、「自治体における『子どもの意見聴取・反映』に関する取組」をテーマに、林大介氏(東洋大学)及び、当団体(以下FTCJ) 事務局長の出野恵子がコーディネーターを務め、先進的な活動を行う 5つの自治体・団体の皆様と熱い議論を交わしました。
今回登壇された自治体の皆様は、すべて FTCJ と連携して活動を深めてこられたパートナーです。当日のキーワードを凝縮してご報告します。
1. 「意見」を聴くための土台づくり:FTCJ の取り組み
冒頭、FTCJ 出野恵子より、こども家庭庁と連携して開発した「こども意見ファシリテーター養成講座」について紹介しました。

【主な取り組み・ポイント】
▼Views(想い)を聴く: 子どもの意見は単なる「Opinion(意見)」ではなく、言葉にならない「Views(願いや思い)」として捉えること。
▼ おとなのスタンス: 失敗を恐れず、間違えたら謝りながら訂正する姿勢を見せること。
▼ セーフガーディング: 子どもが安心して参加できる環境づくりの重要性。
教材一式はこども家庭庁への問い合わせで入手可能です。
「まずは実践に踏み出してほしい」というメッセージを伝えました。
2. 各自治体・団体からの実践報告
シンポジウムでは、都道府県、政令市、基礎自治体、そして NPO というそれぞれの立場から、
自治体における『子どもの意見聴取・反映』に関する多様なアプローチが共有されました。
埼玉県(福祉部こども政策課政策推進 担当 主幹 関根梨絵氏)
子どもを「支援の対象」から「社会を創るパートナー」へ
埼玉県では、令和 6 年 10 月に施行された「埼玉県こども若者基本条例」に基づき、子どもを単なる支援対象ではなく、共に社会を創る「パートナー」と位置づけています。
【主な取り組み・ポイント】
▼多角的な意見聴取の 3 本柱
1. さいたまけん こどものこえ: 未就学児から高校生世代までを対象としたウェブアンケート
→伝えやすさを重視し、データ化して施策に反映。
2. 埼玉県子ども会議: 公募等で選ばれた 28 名の委員が直接対話
→ファシリテーターを導入し、子ども同士で意見を深め、視野を広げる場を提供
3. 埼玉県子ども意見箱: 大人が設定したテーマに縛られず、子どもがいつでも自由に「言いたいこと」を投稿できるフォームを設置
▼知事との「ガチ」対話
パーカー姿で現れた知事と 15 名の子どもたちが、リラックスした雰囲気で意見交換を行いました。形式的な「提言」に留めず、担当課が子どもの生の声をしっかり受け止める場づくりを優先しました。
外国にルーツを持つ子どもなど、マイノリティへの配慮として、分かりやすい言葉での資料作成を徹底。実際の交換会にも多様な背景を持つ子どもたちが参加しました
和歌山県(共生社会推進部こども家庭局こども未来課 主査吉川洋平氏)
夜の繁華街から宿泊合宿まで、泥臭く「個」に向き合う
「県として何ができるか」を問い続け、職員自らが現場に飛び込む姿勢が際立ちました。
【主な取り組み・ポイント】
▼「大人は一人」の緊張緩和
20 カ所のヒアリング調査では、あえて大人は一人で対応。沈黙を恐れず待ち、砕けた言葉で話しかけることで、子どもの本音を引き出しました。
▼ 1 泊 2 日の高校生未来会議
33 名の高校生と宿泊を伴う合宿を実施。自転車マナーや権利保障など、県のリアルな課題に対して担当課が本気でフィードバック。この「ガチンコ」の向き合いが、子どもの満足度と幸福感に直結することを証明しました。
▼ 広域自治体の役割
市町村だけではアプローチしにくい高校生世代や、県内全域の傾向把握など、県だからこそできる「広域支援」に力を入れています。
仙台こども財団(企画課 課長 大岩美貴子氏)
官民連携で「当たり前」のプロセスを創る
仙台こども財団は仙台市と連携し、子どもが主体的に参画できる機会を「仕組み」として定着させています。意見聴取の際には写真や動画を活用した分かりやすい設問工夫と、2 段階の丁寧なフィードバックを行っています。
【主な取り組み・ポイント】
▼「こどもいけんひろば」の運営
こども家庭庁のガイドラインに即し、ウェブと対面を併用。特にウェブアンケートでは、設問の意図が伝わるよう動画や写真を活用し、回答のイメージを持ちやすくする工夫を凝らしています。
▼ 丁寧な 2 段階フィードバック
意見を聴いて終わりにせず、 集計結果の早期公表、 施策への反映状況の説明、という 2 段階で子どもたちに報告。「自分の声が届いた」という実感(効能感)を大切にしています。
▼ 職員への意識改革
全市職員向けの E ラーニングや、担当課職員へのファシリテーション研修を実施。意見を聴く側の大人のスキルアップを並行して進めています。
埼玉県春日部市(春日部市こども未来部こども育成課 主査星野千絵氏)
子どもは「利用者」という名の「先生」
「クレヨンしんちゃんのまち」春日部市からは、非常に具体的でユニークな実践が報告されました。「子どもは利用者という名の先生」というスタンスで、教育委員会とも密に連携。
【主な取り組み・ポイント】
▼児童センター指定管理者選定への参画
施設の運営者を決める審査に、実際に利用する子どもたちが参加。「自分たちは場を設けてあげているのではない。皆さんがこの施設の『先生』です」というスタンスで依頼。
▼ 教育長・学校との連携
「先生の負担を増やさない」ことを前提に、社会科の「社会参画」の授業とリンクさせるなど、教育現場と win-win の関係を構築。部長・課長級の「大人の本気度」を見せることで、組織を動かしました。
▼ 小さな成功体験の積み重ね
子ども若者計画の表紙投票や、児童センターのエアコン交換の順番など、身近な選択肢を子どもに委ねることで、自治意識を育んでいます。
北摂こども文化協会 理事長川野麻衣子氏
子どもの「ホーム」に出向くアウトリーチ
大阪府池田市の事例を中心に、日常の遊び場から声を拾い上げるNPO ならではの手法が語られました。
【主な取り組み・ポイント】
▼子どもの世界に大人が行く
子どもを呼び出すのではなく、児童文化センターなどの「子どものホーム」へ大人が出向く。日々のコミュニケーションの延長線上で、自然に意見を聴き取ります。
▼遊びを通じた権利教育
「権利かるた」や「すごろく」で遊びながら、自分の権利について知る機会を提供。「どのカードが気になった?」という問いかけから、子どもたちの想いを見える化しました。
▼ 乳幼児の声の可視化
言葉による意思疎通が難しい乳幼児についても、保護者を通じて「どんな時に嬉しい?しょんぼりする?」と問いかけ、掲示。切れ目のない意見聴取を実践しています。
▼ 社会が良くなった事例
「卓球台の破損」という課題に対し、禁止ルールを作るのではなく、子どもたちに「どうすればいい?」と相談。子どもたちが自ら決めたルールによって、破損が激減したという感動的なエピソードが共有されました。
3. パネルディスカッション:見えてきた課題と希望
後半のディスカッションでは、現場ならではの「生の声」が飛び交いました。

▼おとなと子どもの「関心」のズレをどう埋めるか
「自治体の計画(固い話題)」に子どもはすぐには関心を持てないのが現実です。しかし、春日部市でのエアコン交換の順番を子どもたちに決めてもらった事例や、池田市での「卓球台の破損防止ルール」を子どもたちに考えてもらった事例では、自分たちの生活に直結する課題であれば、子どもたちは驚くほどのエネルギーを発揮することが示されました。
▼都道府県と基礎自治体の役割分担
都道府県: 広域的なネットワーク(教頭会など)を活かした周知や、全体の傾向把握、市町村への後方支援。
市町村: 児童館や学校など、より身近で具体的な課題(公園、道路、学校生活)に対する対話。
▼「アドボカシー」と「ファシリテーション」
コーディネーターの喜多 明人氏(早稲田大学)から、子どもの声を「支援(アドボケイト)」する役割と、場を「促進(ファシリテート)」する役割。これらが今後どう連携し、子どもの権利を真ん中に置いた社会を作っていくべきか、継続的な検討の必要性が共有されました。
まとめ:コーディネーター(FTCJ 出野)より
各自治体の報告に共通していたのは、「おとなの意識改革」が最大の鍵であるということです。
「子どもが何を言いたいのか」と「おとなが何を聴きたいのか」のズレを自覚し、その隙間をどう埋めていくか。
子どもたちの意見には、社会を動かすエネルギーがあります。
単なる「見せかけの参加」に終わらせないために、今後も FTCJ は各地のパートナーと共に、子どもと大人が対等に対話できる社会を目指して活動を続けてまいります。
子どもの権利が社会に根付くように
最後に、登壇した自治体職員や NPO の方々からは、「子どもの意見にはエネルギーがある。おとなだけで考えるより、前に進む力をもらえる」という力強い言葉がありました。
FTCJはこれからも、子どもの意見聴取を「特別なイベント」ではなく「当たり前のプロセス」へ日本社会に根付くよう活動していきたいと思っています。
子どもたちが子どもの権利を行使しながら、「自分たちの声や願い」について主体的に語り、おとなと共に社会を創るパートナーとして歩めるよう、
全国の自治体の皆さまと共に歩んでいきたいと改めて感じました。
本分科会は日本財団の助成により実施されました。
当日会場には、職員12名、議員関係者4名、民間団体13名、一般11名、関係者12名が参加され、オンラインで27名が加わり、総勢79名の方が参加されました。事例報告をいただいた皆さま、ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました!
助成:日本財団
