3月20日:国際幸福デー
International Day of Happiness

国際幸福デーの制定には、「幸せの国」とも呼ばれているブータン王国が深く関わっています。ジグミ・シンゲ・ワンチュク第4代国王は、1970年代初頭から経済成長以上に一人ひとりの幸福を重視し、1976年(※諸説あり)に「国民総幸福量(GNH:Gross National Happiness)」という概念(考え方、詳細は下記「解説」を参照)を提唱しました。[1][2]
その後、2011年7月19日の国連総会本会議で、ジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク第5代国王が国連でこの日の制定を提唱[3][4]し、2012年7月12日に制定されました[5]。
国連ではこの日を
- 幸福は人間の基本的目標、願望であること
- 幸福は公共政策に反映されるべきものであること
- 全ての人々の幸福・福祉・ウェルビーイング(詳細は下記「解説」を参照)を実現する経済成長には、よりインクルーシヴ(包括的)・公平でバランスの取れたアプローチが必要、重要であること
を世界中全ての人が改めて意識、認識し、関連する取り組みを行うよう推奨しています。[5][6]
自分も含めて、誰もが幸福に生きることができる世界にするために何ができるか一緒に考えませんか?
<もう少し解説>
・国民総幸福量/Gross National Happiness
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ブータンにはチベット系仏教が深く根付いており、国民のライフスタイルのみならず、政治・経済面にも仏教の考え方が強く反映されています。
GNHは
- 持続可能で公平な社会経済開発
- 環境保護
- 文化推進
- 良い統治(ガバナンス)
の4つの柱に基づき、
- 心理的な幸福
- 国民の健康
- 教育
- 文化の多様性
- 地域/コミュニティの活力
- 環境の多様性と活力
- 時間の使い方とバランス
- 生活水準・所得
- 良い統治(ガバナンス)
という9つの分野(領域)・33の尺度(調査項目)で国民の幸福を実現しようという考え方[1][2]で、ブータン国内では概ね5年ほどの間隔で国勢調査が行われてきました。
(これらの柱・分野は文献によって日本語の表現が微妙に異なっていますが、訳し方の違いによるものです)
ブータン政府には首相を責任者とする「GNH委員会(コミッション)」という政策立案組織があり、国の政策がこのGNHの考え方に沿ったものであるかどうか評価・判定しています。[7]
例えば、特定の政策案が国にとって目覚しい経済成長をもたらすものであったとしても、それが環境破壊や人権侵害を伴うのであれば、GNH委員会が改善勧告を政府に出したり、法案にストップをかけたりします。
・FTCJが考える「ウェルビーイング」
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ウェルビーイングは英語でWell(よい)+Be(存在・状態)+ing(進行・継続)と書きます。
当団体では、ウェルビーイングを「一人ひとりが人権を尊重され、心も体も周りとの関係も、ほどほどにいい感じで、自分らしくいられる状態」と考えています。
・国際幸福度報告/World Happiness Report
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公式HP:
https://worldhappiness.report/
国連が設立し、世界各国の学術機関・企業・NPO/NPO、市民団体が参画する「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(Sustainable Development Solutions Network、略称:SDSN)」[8]が毎年この日に合わせて発行する報告書及び国別ランキングです。
国際幸福度報告では、
- 一人あたりのGDP(世界銀行・OECDの統計データ)
- 健康寿命(WHOの統計データ)
- 社会的支援(以下4項目はアメリカの調査会社ギャラップによる調査結果)
- 人生の自由度
- 他者への寛容さ
- 国への信頼度
という6つの項目[9]を数値化し、複雑な数学・統計処理を行ったうえで150以上の国・地域の幸福度をランキング化しています。[10]
(国内事情や国際情勢などにより、特定の国がランキングに含まれていない年があったり、複数年分のデータをまとめた年もあります。)
国際幸福度報告のランキングは、例年上位に北欧・欧州諸国が集中しており、近年ではフィンランドが1位を維持しています。
日本の順位は、初回(2012年)以降、50位前後に留まっており、最新のランキングでは147か国中55位でした。[11]
・幸福度を測る指標は他にも
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GNHの他にも、世界各地で様々な指標が用いられており、調査手法・規模もそれぞれ大きく異なっています。
例えば、「地球(世界)幸福度指数(The Happy Planet Index:HPI)」(リンク先英語)という指標は、幸福・ウェルビーイングの考え方に格差や環境問題なども盛り込み、「限られた環境資源を用いて、どれだけ効率的・長期的に幸せで持続可能な生活を送れるか」という観点・尺度で国別ランキングを定期的に取りまとめて公表しています。
HPIは2006年にイギリスのニューエコノミクス財団が提唱し、現在はニューエコノミクス財団が所属しているネットワーク「ウェルビーイング・エコノミー・アライアンス(The Wellbeing Economy Alliance、略称:WEALL)」が調査を担当しています。
HPIの国別ランキングは、GNHが例年ヨーロッパ各国が上位を占めるのとは異なり、コスタリカを筆頭とした中米・南米諸国が毎回上位に集中しています。ちなみに、日本の順位は、最初にHPI国別ランキングで順位の付いた2007年以降(年によって20位代後半~60位代と乱高下してはいますが)下落傾向になっており、2021年の国別HPIランキングでは147か国中49位でした。[12]
(補足)
英語ですが、HPIの公式HPには個人のHPIを算出できるウェブテストも用意されています。
(HPI公式HP内の「How sustainably happy are you?」という、黄色のセクション内にある「Take the test」をクリック/タップ)
他にも、OECDが2011年に提唱し、住宅、収入、雇用、共同体、教育、環境、ガバナンス、医療、生活満足度、安全、仕事と生活の両立という11の分野を得点化して豊かさを調査・比較する「より良い暮らし指標(Your Better Life Index:BLI)」(リンク先英語)もあります。[13]
日本国内でも、国勢調査や、内閣府が2019年から始めた「満足度・生活の質に関する調査」などの政府主導の調査のほか、熊本県の「県民総幸福量」(熊本県庁HP内企画課ページ下部「県民アンケート」のセクションを参照)や東京都荒川区の「荒川区民総幸福度」など、独自の幸福度指標を設定・調査している自治体[14]も増えています。
・「幸福」は簡単にはかれるものではなく、人それぞれであることに留意
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最後に、「幸福」には多様な考え方や要素があるため、常に特定の指標だけで調査対象の国・地域・人々が幸せか否かを判断したり断言したりすることはできません。(場合によっては「価値観の強制・押し付け」にもなってしまいかねません。)
また、幸福の考え方や要素(何に幸せだと感じるのか)は時代とともに変化していきます。そのため、特定の指標にいつまでも依存し続けていると、時代の変化とともに調べきれない項目や要素が新たに出てくる・増えてくることもありえます。
先述した、GNH、国際幸福度報告、HPI、BLIといった指標は、単に幸福度合いの優劣を比較したり、幸福・不幸を断定したりするためのものではなく、「私たちが”よりよく”生きていくために改善・解決すべき課題を明らかにしてくれるヒント」として活用していきましょう。
できることから始めてみよう!
<関連コンテンツ>
・ウェルビーイング事業説明ページ
https://ftcj.org/wp/we-movement/wellbeing
・10月10日「世界メンタルヘルスデー」
https://ftcj.org/wp/archives/26570
・行動を起こした人が集う「チェンジメーカー・フェスⓇ」

フリー・ザ・チルドレン・ジャパンでは、国連で定められている「国際デー」などを参考に、1枚10分以内で考えられる無料の教材を作成しました。
↓こちらのリンクからご覧いただけます。↓
https://ftcj.org/wp/we-movement/texts/material_internationalday
ディスカッションのテーマとして、子どもが国際に興味を持つきっかけに、
授業の冒頭での活用など、たくさんの場面でご活用ください!
★教職員向けの教材・サービスはこちら
https://ftcj.org/wp/we-movement/teachers
<参考・引用>