変化を起こす社会起業家たち

カナダのクレイグとマークのコラム紹介です。

http://www.huffingtonpost.ca/craig-and-marc-kielburger/social-innovation-_b_7182438.html

欧米には「必要は発明の母」ということわざがあります。その母親は優しいとは限りません。ゴールドマンにとっての成功の母は、暗いアフリカの夜に壊れたランタンと毒ヘビだったのですから..

ゴールドマンは理想に燃えた若者でした。アメリカの平和部隊(訳者注:アメリカの政府が行っている、若者を開発途上国に派遣する事業。今のアメリカのケネディ駐日大使の父親のケネディ大統領が創設した)のボランティアとして西アフリカのベナンで活動していました。電気が通っていない小さな村でのボランティアでした。ある夜、ゴールドマンは小屋の中で灯油ランタンを使おうとしていたのですが、暗い部屋の中で毒ヘビがいることに気付くことができず、気付いた時には手遅れでした。暗く苦しい中でも現地の診療所を訪ね、抗毒治療を受けたのです。

散々な思いをしたゴールドマンでしたが、このできごとをきっかけにこれまでの村での生活を思い返しました。そして、見えない蛇に襲われるということが村でよく起こっていたことや、灯油ランタンが原因の火事が多いということに気付きました。このような悲劇を無くすために、開発途上国でも手頃で安全に使える電気が必要だという思いが、ゴールドマンの中で強くなっていきました。

かつては、反グロバーリズムの運動にも関わっていたゴールドマンですが、電気の問題を考えていく中で、企業の活動が開発途上国の発展を阻害する敵でいつもいるとは限らないのではないかと思うようになります。
アメリカから来た友人のLEDキャンプヘッドライトに、村の人々が目を輝かせて興奮していた姿を見たのがきっかけでした。省エネで値段も高くないLEDの灯りで村を照らすことができるのではないかと。

(訳者注:反グローバリズム運動:国境を越えた自由貿易をはじめとする経済活動は、格差拡大や、多国籍企業による搾取を拡大させるという主張を持ち、グローバル化を促進する国や多国籍企業の活動に反対しようという考え方。)

ゴールドマンは、電球や照明を製造する企業宛てに「開発途上国で暮らす人々が使えるLEDランプを開発するご予定はありませんか?」と何通も書きました。でも、そんな事業に関心のあるところは一社もありませんでした。

ゴールドマンが村を灯りで照らしたいのであれば、もう自分でやるしかありませんでした。しかし、ゴールドマンは電球を作るノウハウどころか、電球を製造して売るノウハウもありませんでした。それを自分でやるとなると、もう「企業のやるビジネスなんて嫌いだ」とは言っていられない状況になったのです。

アメリカに帰国したゴールドマンは、スタンフォード大学で起業と製品開発について学び始めます。そして、製品開発の課題が出された時、「この課題で自分がやろうとしていることを実現するべきだ」と思ったのです。

クラスメートのネッドと共に、ゴールドマンは低コストのLEDランプの開発に成功しました。その代わり、バッテリーの費用が高く、バッテリーの充電自体が開発途上にある地域では困難な場合もあることから、太陽光で昼に充電して夜に12時間稼働できるLEDランプを最終的に開発しました。

これで「商品」は揃いました。この後に二人がやったことは、世界に10億人から20億人いるといわれている電気の無いなかで生活する人々が、電気を簡単に使えるようにするための事業計画を練ることでした。

二人はこの事業を社会起業(事業としての利益を出しつつ、その利益を社会を良くするために直接的に使うことが許されているさている事業の形態)として始めることにしました。その方が多くの人を助けられると思ったからです。「事業をやっていくための利益をしっかりと出すことができなければ、暗やみにいる人を電気で照らすという目標を達成することはできません。私とネッドの目標は、多くの人を電気で照らすことではなく、全ての人を電気で照らすことです」(社会起業家ゴールドマン)。この学校での課題を軸にして、二人はスタンフォード大学卒業後に、「d.light」を立ち上げました。

開発途上にある人々に少しでも太陽光の電球を提供するため、マイクロファイナンスを通じた住民への小規模融資などを通じて、これまで2500万人に電気を届けました。開発途上の地域に住む消費者は、灯油ランタンからなどからこの新しい電球に切り替えたことで、光熱費を総額で7億ドル以上抑えることができるようになりました。そして、二酸化炭素も180万トン削減することができました。

ベナンのような国では、一日12時間電気を使えるようになれば、子どもたちは家の手伝いを終えた後に学校に行くことができるようになります。電気のおかげで大人の就業時間が延び、所得の増加につながる可能性があります。そして何より、灯油ランタンを使っていた時に起こっていた暗やみの中での事故や火事を無くすことができるのです。もちろん、知らないうちにヘビに噛まれることもありません!

二人の社会起業家は、2020年までに一億人にのぼる人々を電気を通じて力づけることを目指しています。最終的には、灯油ランタンをこの世から無くしたいと考えています。かつて、企業が支配する世の中に憤っていたゴールドマンは、今では「思いやりのある資本家」になりました。ビジネスを通じて世界の課題を解決できるようになる人間になろうという思いを抱きながら・・・

参考リンク

アメリカの平和部隊について(青年海外協力隊のHPから)
http://www.jica.go.jp/volunteer/outline/history/

ベナンとその駐日大使について
http://www.beninembassy.jp/jp/data/info_20141016_mainichi.pdf

反グローバリズムとは
https://kotobank.jp/word/%E5%8F%8D%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0-181175

今回取り上げられた「d.light」の公式サイト
http://www.dlight.com/

(訳者:翻訳チーム 清田健介)